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全国脊柱靱帯骨化症患者家族連絡協議会

全国脊柱靱帯骨化症患者家族連絡協議会

会長 増田 靖子 氏

全国脊柱靱帯骨化症患者家族連絡協議会(以下、全脊柱連)は、1997年に脊柱靱帯骨化症の患者団体の全国組織として発足した団体です。脊柱靱帯骨化症は、脊髄神経を保護する靱帯が骨化し脊髄や神経を圧迫するために、知覚障害や運動障害を引き起こす病気の総称で、骨化する靱帯によって後縦靱帯骨化症(OPLL)、黄色靱帯骨化症(OYL)、前縦靱帯骨化症の3種類に分かれます。社会的にもあまり知られていない難病の全国組織を取りまとめ、さまざまな課題に直面しながらも、厚生労働省の調査研究班との連携など積極的な活動を行っている「全脊柱連」について、会長の増田靖子さんにお聞きしました。

活動の状況
原因も根本的な治療法も未解明の難病脊柱靱帯骨化症と友の会での活動

脊柱靱帯骨化症は、脊髄を保護する後縦靱帯、前縦靱帯、黄色靱帯が骨化し、肥厚することで脊柱管の内腔が狭くなり、脊髄を圧迫することによって、手足のしびれや痛み、体のまひ、歩行困難、排尿障害などの症状が起こる病気です。頸部、胸、腰のいずれでも起こり、原因ははっきりしておらず、根本的な治療法はありません。軽い症状の場合は、手足のしびれやつっぱりをやわらげる薬を使い、進行した場合は、手術によって脊髄の圧迫を取り除く方法がとられます。

私は約10年前に発病しました。よく転ぶようになりだして異変に気づき、整形外科のクリニックで坐骨神経痛と診断されました。リハビリに励みましたが改善せず、その後、総合病院で「頸椎、胸椎、腰椎の3ヶ所の後縦靱帯骨化症」と診断されました。病気などと無縁だった私は病気を受け止められないまま、胸椎の一部を切除する手術を受け、その後、腰椎の一部を切除する手術、さらに胸椎と腰椎の一部を切除し、痛みをやわらげる手術も受けました。排尿障害によるストレスで体重が40キロほどに減ったこともあります。今でも常に手足にしびれがあり、歩行には杖が手放せません。ステロイド薬の後遺症とストレスもあって体重はまた増えてしまいました。

2度目の手術を受けた頃、北海道脊柱靱帯骨化症友の会と出会い、当初は一会員としての参加でしたが、次第に会報を作ったり、電話で相談を受けるようになりました。不自由な体で活動することには困難が伴いましたが、同じ病気の仲間と知り合い交流することは、私にとって闘病の支えとなったのです。そして、高齢の患者が多い中で比較的若いということもあり、北海道脊柱靱帯骨化症友の会の会長を引き受け、2012年からは全脊柱連の会長になりました。

北海道から全国へ活動の輪が広がる

そもそも、北海道脊柱靱帯骨化症友の会は、1983年に結成され、この病気の患者団体の中で最も古くから積極的に活動してきた団体です。1995年、当時の執行部が、活動を充実させていくためには都道府県ごとの患者団体に加え、全国組織が必要ではないかと考え、現在の日本難病・疾病団体協議会(JPA)の前身、日本患者・家族団体協議会(JPC)の全国患者・家族交流会で全国組織結成を呼びかけました。その時に集まったメンバーを中心に、1997年に全脊柱連が設立されたのです。日常の活動は各地域の患者団体が担当し、全脊柱連では、各団体との連絡調整や相互の交流、難病連との連携、国や地方自治体への制度の拡充や、社会啓発活動の推進、医療者や研究機関との連携を担っています。
特に活動の力点を置いているのは、厚生労働省の調査研究班の研究に寄与することです。遺伝子解析には患者の立場で協力し、診療ガイドラインの作成にあたっては私たちの意見や提案が採用されました。また、厚生労働省には毎年要望書を提出して働きかけを行っています。その活動が実り、2009年には黄色靱帯骨化症が特定疾患に追加指定されました。現在は、前縦靱帯骨化症の特定疾患指定を目指して働きかけを行っています。

今後も、原因の究明や治療法の確立に向けて、研究班と患者団体が“車の両輪”となった体制をつくり上げていくことが必要だと考えています。手術により四肢の運動機能がある程度回復しても、依然として残る痛みやしびれを緩和する新薬の研究促進を国や研究班に訴えています。2013年3月には靱帯特有のタンパク質を作る遺伝子を特定し、人の幹細胞を使った靱帯の再生に成功したとの朗報も届きました。今後、発症のメカニズムの解明や、新薬の研究開発への応用も期待され明るい光が少しずつ見えてきたと感じています。

“和”と“輪”を重視したネットワーク型の活動

脊柱靱帯骨化症は患者数が少なく、それほど広く知られている疾患でないため、この病気に対する社会的関心は極めて低いのが現状です。もともと地域で活動している患者団体が少なく、後縦靱帯骨化症の名前で活動している団体も多いという背景から、全脊柱連も本部と支部という形の全国組織ではなく、ネットワーク型の組織となっています。全国的なまとまりや組織力が弱いという課題はありますが、重症の難病患者である当事者が担う団体として、それぞれが地域に根ざした活動を行いながら緩やかに連帯する、より良いあり方を模索しているところです。当面は、全国の患者団体の参加を促し、全脊柱連として、どのような活動ができるのかを追求していくことが重要だと考えています。

全脊柱連は、結成以来、患者団体の活動には和と輪が必要だと考えてきました。同じ病気の患者同士が集まり、励まし合い、和み合う“和”と、患者同士が同じ目的に向かってつながり、元気の源になるための“輪”。和と輪があってこそ、私たちの活動は成り立ちます。患者同士、地域の患者団体同士、お互いに足りないところを補いながら、和と輪を波紋のように広げることが活動の活性化や、患者全体の課題に取り組むエネルギーの源泉になると思います。

私自身、会長として難しい課題に直面して悩むこともありますが、同じ病気の仲間と交流し、協力し合い、仲間の笑顔を見ることが闘病を続けるエネルギーにもなっています。きっとまだ、孤独な生活を送っている患者が日本全国にいるはずです。全脊柱連は、あらゆる機会を活用し、病気の啓発に力を注ぎながら社会的関心を高めるとともに、活動を全国に広げ、多くの患者とつながり、“和”と“輪”を広げていきたいと考えています。

主な活動

■脊柱靱帯骨化症についての正しい知識と理解を深めるための啓発活動
■患者・家族がこの病気の苦しみを克服し、明るい生活を送るための支援
■脊柱靱帯骨化症の原因究明と治療法の確立ならびに医療体制の充実と向上を関係機関に働きかけること
■患者家族の経験交流と親睦を図ること

加盟団体(19団体 2013年8月現在)

■北海道脊柱靱帯骨化症友の会
■青森OPLL友の会
■後縦靱帯骨化症患者の会「まるめろの会」
■群馬県脊柱靱帯骨化症友の会
■神奈川県後縦靱帯骨化症友の会
■新潟県後縦靱帯骨化症患者家族会「サザンカの会」
■石川県OPLL友の会
■富山県脊柱靱帯骨化症患者家族会
■長野県脊柱靱帯骨化症友の会
■静岡県脊柱靱帯骨化症友の会
■愛知県脊柱靱帯骨化症患者・家族友の会「あおぞら会」
■三重後縦靱帯骨化症患者友の会
■大阪脊柱靱帯骨化症友の会
■兵庫県OPLL患者友の会
■岡山県OPLL友の会
■徳島県脊柱靱帯骨化症友の会
■佐賀県脊柱靱帯骨化症友の会
■長崎県脊柱靱帯骨化症友の会
■鹿児島後縦靱帯骨化症友の会

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