竹の子の会
(プラダー・ウィリー症候群児・者 親の会)
会長 川口あや子
「竹の子の会」は、15番目の染色体に異常があるプラダー・ウィリー症候群の子どもを持つ親の会です。プラダー・ウィリー症候群は、新生児期の筋緊張低下および哺乳障がい、幼児期からの過食と肥満、発達遅延、低身長、性腺機能不全などを特徴とし、問題行動など複雑な病状がみられる症候群です。さまざまな問題に直面しながら、子どもたちの健やかな成長発達と、子ども達を取り巻く医療や教育、福祉の充実をめざして活動する竹の子の会についてご紹介します。
活動の状況
プラダー・ウィリー症候群児の母親たちが設立
竹の子の会は、1991年、国立小児病院に通院していたプラダー・ウィリー症候群(以下PWS)児の母親たちが中心となって、子どもたちの健やかな成長発達を願い、情報交換・交流を図るとともに、子ども達を取り巻く医療や教育、福祉、社会環境の充実をめざして設立した親の会です。。
プラダー・ウィリー症候群の発生頻度は、1万人〜1万5千人に1人で男女差や人種差はないと言われています。過食は満腹中枢の障がいに起因すると推測されていますが、基礎代謝率が低く運動能力も低いことから肥満になりやすく、肥満により20歳頃から糖尿病や睡眠時無呼吸などを引き起こします。また、年齢とともに次第にこだわりや思いこみが強くなり、かんしゃく等の感情の爆発や放浪癖がみられることもあり、周囲とのトラブルが増加します。病状や経過が個人によって違い、生活や行動の問題が年齢とともに強まるので、職場や作業所、施設、病院等でも対応に苦慮されることが多くなります。専門医のほとんどは小児科医で、成人以降、適切な医療を受けられる医療機関が数少ないのも問題となっている点です。ただし、最近は早期診断および低身長では成長ホルモン投与の保険適応が可能となり、適切な医療・教育・福祉などの支援により、極端な過食症や肥満に至らないケースも増えています。特有の問題行動も周囲が環境を整え、子どもに合った対応を行うことで多少軽減でき、一般企業へ就職したり、授産施設で働く成人のPWSの方も見受けられるようになりました。。
竹の子の会が設立された当時は、PWSに関する情報も非常に少なく、多くの家族が必要なサポートを受けていませんでした。さらにこの病気に対する周囲の無理解や誤解、偏見、差別が二次的な障がいを引き起こしているような中で、母親たちが集まり励まし合ったのが、会のスタートです。その後、年を経るごとに会員も増え、全国各地に支部もでき、徐々に地域での活動が始まりました。
難病の子どもをかかえながらの運営の工夫
子どもがPWSと診断されたとき、親が病気を受け入れるためには、PWSの正確な情報を得て、それを十分に理解することが必要です。竹の子の会では、相談窓口として門戸を開き、悩みを聞き、時間をかけて相談にのるようにしています。最近の若いお母さんたちは、インターネットなどで多くの情報を得ることができますが、PWSは症状や経過がさまざまなので、情報に振り回されて悩む人も多いようです。同じPWSの子どもを持つ親と交流し、先輩のお母さんたちの工夫や失敗など「本当に役立つ情報」を得ることは重要だと思います。また、子どもの成長に伴い、親が学校や周囲に説明し、理解を得ることが必要になってきます。会の活動に参加することで親自身が人とのコミュニケーションを学ぶこともできるので、竹の子の会の意義は大きいと感じています。
しかし、学齢期の親は子育てに追われて活動の時間がとれず、役員は年長者の親が引き受けることが多いのが現状です。会として各世代の親の意見が反映されることや世代交代も必要なため、誰もが活動しやすいように役割を分担し、ホームページや会報作成は一般会員も含むチームで担当するなど、個人の負担軽減を心がけています。さらにインターネットや携帯電話の普及からメーリングリストなどを有効に活用して、できるだけ多くの会員が連携して参加できるように工夫しています。実際に顔を合わせることも重要なため、支部・グループ活動の中で会員同士の交流も行っています。しかしながら、地域性や交通事情、会員数の違いなどによって活動の状況には多少の差が出てきており、そのため来年度は、組織体制や活動区分を整えて、地域支部の充実をめざしていこうと考えています。
会員へのサポートと、社会へのアピールを活動の両輪に
患者会を立ち上げた頃から、NHKや民放、スカイパーフェクトTVなどの取材が増えました。北岡さんは積極的に講演を行い、私は新聞に闘病記の連載を始めるなど、患者自身が訴えていこうという思いが強くなりました。そのことで署名も広がります。マスコミに出ると子どもが学校でいじめられると一切、拒否しているヘルスケア関連団体もあります。でも私は患者が自分の障がいを見せないと訴えが届かない、認知も広がらないと思ったのです。まずできることをやろうと。自分にはなにもできないとあきらめていたときもありましたが、今回の難病認定で、やればできるんだ、今までやってきたことは無駄ではなかったと、本当に嬉しく思っています。一歩前進です。
患者会は現在、会員10名。患者・家族の交流、署名活動が中心です。事務局や会報誌の発行、他のヘルスケア関連団体とどう連携するか、まだまだこれからです。任意で治療に関する研究協力もしています。数年前、私の主治医を通して埼玉医科大学ゲノム医学研究センターの片桐岳信助教授からFOP遺伝子の解読をしたいとの依頼があり、血液を提供しました。2006年4月にアメリカのペンシルバニア大学カプラン博士研究チームがFOP遺伝子を発見、さらにその12月、片桐先生のグループが遺伝子の異常によるタンパク質の変異であることを突き止めています。そのカプラン博士が、来る7月19日(木)〜21日(土)、大阪国際会議場にて開催される第25回骨代謝学会に参加されます。19日にはFOP患者および親御さんが集合し、カプラン博士と会うことを予定しています。
難病指定が決まり、国のバックアップも加わり、研究がさらに進むことを期待しているところです。
主な活動
■例会の開催
■会報の発行
■講演会および勉強会の開催
■関係機関・団体への連絡要請等
■その他、目的を達成するための活動
□支部の活動
全国で11支部36グループが結成され、各地域で勉強会や交流会、また、「支部だより」「グループだより」の発行などをしています。
組織の概要
■設立/1991年8月
■会員家族数:約520世帯(2006年末現在)