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医療・就労支援・地域・地域の災害対策
多様な“協働”の可能性について考え、議論を深める
第14回ヘルスケア関連団体ワークショップ

第14回ヘルスケア関連団体ワークショップ
医療・就労支援・地域・地域の災害対策
多様な“協働”の可能性について考え、議論を深める

2014年10月25日・26日、東京のファイザー株式会社 アポロ・ラーニングセンターで、第14回ヘルスケア関連団体ワークショップが開催されました。今年は「協働」をテーマに、全国のヘルスケア関連団体のリーダーや医療関係者が集い、今まさに協働しようと考えていること、自身の団体だけでは解決できずに行き詰まっていること、過去の協働による成功体験など、協働に関係するさまざまな可能性について議論が行われました。

事前課題で問題意識を深め、話し合いに臨む

「経験を基に学び合い、主体的に協働の提案をしたい」。中央世話人の阿部一彦さんの挨拶からワークショップがスタートし、まず3人の患者団体リーダーによる基調講演が行われました。今年の特色は、事前課題として「協働」についてのレポートを参加者それぞれが提出し、団体が抱える課題や自らの目標を明確にしてワークショップに臨んだことです。午後からの分科会でも、事前課題のテーマ別にグループ分けが行われ、例年にも増して具体的で実践的な話し合いが展開されました。

2日目は、分科会で出された意見のまとめ作業を経て、グループ発表と全体討論が行われました。ワークショップ開催をサポートしたファイザー株式会社 梅田一郎代表取締役社長は「社会に生きている以上、それぞれの立場で働くということは大切だと思う。私自身もヘルスケア関連団体へのかかわりを深め、協働のあり方を考えたい」と挨拶。最後に中央世話人の増田一世さんが「改めて、活動を進めていく覚悟をもち、ともに話し合うことの大切さを実感した。自ら発信して新しい協働をスタートさせたい」と2日間にわたる討議を締めくくりました。

切実な思いが多様な立場の人々をつなぎ、活動の広がりへと発展
基調講演:地域における協働を考えるこころの健康政策構想実現会議の経験から

増田 一世 さん (公益社団法人 やどかりの里 常務理事)
「さいたま市で精神障がいの人たちを支援する増田さんは、当事者・家族、医療・保健・福祉関係者が一堂に会して取り組んだ「こころの健康政策構想実現会議」について語りました。

日本では、精神疾患についての情報不足や偏見があり、患者や家族を社会で支える仕組みも不足し、精神保健・医療・福祉政策は世界的に見ても大きく立ち後れてきました。自殺や虐待、引きこもりなど、さまざまな心の問題が社会問題となっている現状からも、心の健康問題全般について、予防を含めた包括的な政策がすべての国民を対象として必要であり、幅広い精神保健のシステムを構築したいという思いを多くの関係者が共有していました。増田さんは「このままではいけない。これ以上被害を受ける人を出したくないという切実な思いから、役割や立場を越えて協力し合おうという動きにつながり、2010年4月に当事者や家族と専門家がともに取り組む『こころの健康政策構想実現会議』が誕生した」と述べました。精神保健・医療・福祉の総合的な提言をまとめ、全国で署名活動を展開し、「こころの健康基本法の制定を求める国会請願署名」72万筆を提出。全国の議会で意見書が採択されるなど、組織の壁を越えた運動が全国に広がりました。

増田さんは「提言は、まさに協働のプロセスが生み出した作品。精神医療改革・精神保健改革などを目指す『こころの健康政策構想実現会議』の課題解決はまだ道半ばだが、この活動によってつながった人々との協働が全国で広がっている。今後も当事者・家族・専門職の協働の輪を広げ、一般市民や議員、自治体職員との協働に取り組みたい。何とかしたいという切実なニーズを把握することで、多様な立場の人の協働は可能になると思う」と語りました。

産業医という“社会資源”と協働することから、新たな展開へ
基調講演:就労支援に関する協働について

森 幸子 さん (一般社団法人 全国膠原病友の会 代表理事)
医学の進歩により、多くの難病患者にとっては就労などの社会参加が課題になってきましたが、まだ難病患者が働くことについては企業や社会の理解や支援が十分ではありません。特に膠原病は若い年齢で発症することが多く、病名を告げると就労しにくかったり、仕事を続けにくかったりするのが現状です。 そのような中で、膠原病友の会に産業医(日本産業衛生学会)からの研究協力依頼がありました。「産業医はどちらかというと企業側の視点をもつ印象があった。しかし、研究協力をきっかけに協働することになり、産業医側でも難病患者に関する知識や情報が不足し、対応に苦慮している現状を知った」とのこと。さらに、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施している「難病の症状等による職業上の困難性と就労支援のあり方に関する調査」や厚生労働省の政策科学総合研究事業である「職域における中途障害者の実態調査とそれに基づく関係者間の望ましい連携のあり方に関する研究」にも協力し、当事者インタビューや研究会での発表などの活動に取り組んでいます。

森さんは「患者団体と産業医がともに就労支援に取り組むことにより、産業医の理解を深め、就労支援や就労継続につながることを期待したい。患者団体としても、患者に対して、就労継続を可能にするための体調管理や、地域活動支援センターやトライアル雇用の活用などの面で、患者自身がセルフマネジメントできるよう支援を行いたい」と述べました。そして、「患者側と企業側の双方の立場で就労や就労継続実現のための相談や話し合いができる、難病患者の詳しい実態調査が実現する、産業医と専門医の連携も期待できるなど、産業医との協働にはお互いにメリットがある。難病への理解、職場環境の改善が多くの企業で進むことにより、難病患者の社会参加を促進し、共生社会を実現したい」と期待するところを述べました。

タイミングとつながりから生まれた協働。さらにその先を目指して
基調講演:医療と患者団体の「協働」を考える

山田 隆司 さん (CMT友の会 副代表)
CMT友の会では、山田さんや医師が患者として参加していたことから、厚生労働省の難病研究班とのつながりができ、研究協力者としての会議への参加や診療マニュアルの執筆協力、シンポジスト参加、治験への協力などの活動が行われてきました。山田さんは「研究班にとっても患者団体にとっても、社会的な信頼を高めるためにはお互いの協働が必要なタイミングでした。また、研究班の医師がメンバーの主治医だったというつながりもあったため、協働しやすかった」と語りました。協働することにより、研究班は、病態や患者のニーズが把握しやすくなり、研究内容も病態解明から治療やリハビリ・生活の質の向上を目指すものへと変化してきました。患者団体にとっても医師とのつながりによって安心感が高まり、最新の情報が得られるようになり、また、治療を行う協力施設が増えるというメリットがありました。さらに研究に参加した人からは、「自分自身が他の患者のために役立っている、医療の発展に役立っていると感じ、CMTと主体的に向き合っていこうという自分らしさの獲得につながってきた」との声が聞かれました。

山田さんは「“医療専門職でもある難病患者”という存在は支援する側とされる側のどちらの立場も担えることから、CMT研究班などから声をかけられる機会も増え、活動のフィールドが広がった。しかし、医療に携わることは病気や障がいを目の当たりにすることでもあり、自身の担う2つの立場を上手く使い分けられないことがあり、諸刃の剣だと痛感している」と語り、「医療と患者に限らない自由な発想における協働が、今後は必要だと感じている。協働が解決してきたものは多く、協働が解決していくものも多いはず。もっと何かを生み出していくために新しい協働を模索したい」とのメッセージを伝えました。