個人・患者団体の活動から社会との協働へピアサポートでの気づきと可能性を探る 第12回ヘルスケア関連団体ワークショップ
分科会&グループ発表/全体討論
分科会&グループ発表
個人・患者団体の活動から社会との協働へピアサポートでの気づきと可能性を探る
冒頭の4人の講演を受けて、9グループでの2日間にわたるワークショップがスタートしました。今回は基本的な進め方として、まず自分たちが行っているピアサポート活動を抽出。それらをどういうスタンスで行っているか、「個人」「会の内部」「社会」の3つに分類し、そこからピアサポートの意義、課題、未来に向けての可能性などが議論されました。翌日の各グループの発表から、紹介したいピアサポート活動、気づき、今後取り組みたいことについて要約してご紹介します。
紹介したいピアサポート活動と発展した事例など
参加した約50団体では多彩なピアサポート活動が展開されていました。電話相談や交流会といった根幹となる活動にも工夫が加えられ、その疾患や地域ならではの手法、社会に波及するまでに発展した事例などが紹介されました。
・検査方法に関するメール相談から始まり、アンケート調査、患者講師として講義などを通して、専門職とも協働し、医学書の改訂という社会を動かす活動へと発展。
・電話相談でのデータ集積から新たな課題を発見。子どもの親向けのサポートに加え、成人発症者へのサポートを団体として強化することになった。
・だれが読んでもわかる、生活情報が盛り込まれた、わかりやすい会報を発行する事ができた。
・会報を会員だけでなく保健所など外部機関にも配布。会報が社会への発信ツールにもなる。
・集まって話をしながらの会報発送作業はグループカウンセリングの場。みんなでやることが大切。
・さまざまな立場での交流会の開催。家族、子育て世代、就労世代といった社会的な区分のものから、ヨガ、ダンスなどの趣味の会まで。
・行政や企業、市民社会組織との協働での、緊急医療・支援手帳を作成。
・医療・福祉系の学生や従事者に直接、体験を語る「かたりべ」。
・同じ疾患を持つ親子間のピアサポート、次の社会をつくる世代へのサポート。
・当事者が街頭に立つキャンペーン活動や街頭募金・署名活動。
・会員専用掲示板の内容をカテゴリー別に分けている。サプリメント、リハビリ、Q&Aなど。
話し合いの中からの気づき
個人・会・社会での活動に分類してみることで、ピアサポートはそれらの垣根を越えてつながり、効果を発揮していくのではないかという気づきが数グループから出されました。
・ピアサポートは個人・会・社会を循環している。
・ピアサポートの目標は個人・会・社会を隔てる垣根がなくなること。
・会での活動を記録、蓄積、分析、共有してこそピアサポート力が高まる。
・face to faceの大切さ。対面で信頼関係を築いての情報交換が患者団体ならではの強み。
・ピアサポートは影響力・有効性が高い。だからこそ質の高さが問われる。
・患者力を高めるために、正確な情報を提供する。
・疾患・立場の垣根を越えたピアサポートができないか。
・食べること・飲むことが大切。懇親会後の二次会で本音が語られることも多い。
・楽しく、自分に合った活動、“その人らしく輝く”ピアサポートが大切。
・自己満足で終わっていないか。
・VHO-net の存在そのものがピアサポート。
これからやっていきたいこと
熱い議論を踏まえて「その手もある!?」のアイデアから、社会を変える大きな未来(ゆめ)へ。 活動を積み重ねてきたVHO-net ならではの抱負が語られました。
・シャッフル患者会他の会の交流会に行ってみる、他の会の役員になってみる。
・ピアサポート・サポーターの育成場の提供やマッチングのコーディネイター。
・VHO-net ピアサポートセンターの開設リーダー同士のピアサポートの場。
・『患者と作る医学の教科書』の「仕事と暮らし」バージョンの制作。
・漫画や絵本で子どもにもわかりやすくピアサポートを伝えたい。
・患者力を高めるため、日々の体調などを記録していく『自分手帳』の作成。
・小・中学生に向けての、命の大切さを伝える授業。
・行政、企業、市民社会組織との協働で、付加価値のある魅力的な患者団体をアピール。
・第3の公共を担う県の指定管理・委託・企業とのコラボレーション事業。
・ピアサポート事例などの収集をしながら、その効果を可視化していく。
・ピアサポートの意義・必要性を社会へアピールしていく。宝の持ちぐされにしない!
・疾患や会を越えてのつながり、さらに同じ人間同士が社会で支え合う、「おだがいさま(おたがいさまの福島方言)」のピアサポートへ。
全体討論
グループ発表への質疑応答も含めて、ピアサポートの現状や未来への課題について、全体討論が繰り広げられました。
ピアサポート情報の記録・分析・公表について
相談事例の記録や公表の是非について、さまざまな意見が出されました。「相談内容は外部に出さないことを前提に受けているのでメモも取らない。気軽に電話できるスタンスを守りたい。情報を役員で共有したいという気持ちはあるが、分析や公表することについては不安や迷いがある」「団体の名前を使って相談を受けている以上、その内容は何らかの形で活用していかなければと思っている。そういう声の集まりが社会を変えていくことにもつながる」「相談内容のメモはしているが、個人情報なので理事同士でも具体的に話すのは控えてきた。けれども今回のワークショップに参加して、大まかな項目でもいいからデータを残していくのが良いという気持ちになった」「記録をとることは、自分たちがしていることを客観視することにもつながる。それを団体としてどう整理していくかを考えてみてはどうか」などの意見が述べられました。
ピアサポート活動を学校教育の現場へ
日本の少子高齢化を見据えると、疾患だけではなくさまざまな障がいを持って生活していく社会がやってくる。そこに“共に生きる”というピアサポートの意義を、教育の一環として取り入れていく必要があるのではないかという気づきがありました。啓発活動のひとつとして、教員免許更新を担う地域の大学に、難病患者のピアサポート活動の講習を働きかけることで突破口が見出せるのではという意見が出ました。好事例として、小学5年生を対象に難病患者が自分の病気を語る特別授業を続けるうちに、「病気であっても普通に生きていく」という姿勢への理解が広がり、授業を受けた児童全員が卒業文集でその授業体験を書き綴ったというケースが紹介されました。
ピアサポートのスキルアップについて
技術向上のために認定心理士などの資格取得を目指したいという発表について、「専門家になってしまうとピアサポート本来の意義が薄れていくのではないか」「自分たちでできる範囲でやるべきでは。その中で行き詰まったときに相談できる専門家がいればいい」「精神疾患では国が助成金を出してピアサポート養成講座を実施し、資格認定をして就労支援につなげている」「患者団体の中でさまざまな事例について検討し合うことが大切。自分たちで能力を高め合うことが技術を身につける一番の方法であり、効果的だと思う」などの意見が述べられました。