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越すに越されぬIBD "IBD(炎症性腸疾患)九州大会 in 熊本

越すに越されぬIBD
"IBD(炎症性腸疾患)九州大会 in 熊本

8月19日、熊本市国際交流会館において、「IBD九州大会in熊本―越すに越されぬIBD―」が開催されました。それぞれの県で活動を行ってきた当事者団体が一堂に会し、国の難病対策と福祉との関わり、最新の医療技術、患者会の役割の3つの視点で理解を深め、九州内のネットワークを構築していこうというものです。

シンポジウム開催の8日前に厚生労働省は、希少性難病の要件である5万人を大幅に上回ったとして、潰瘍性大腸炎(8万311件)、パーキンソン病(7万2千772件)に対し重症患者を中心とするという、難病医療費の公費助成適用範囲の見直しを提案しました。これは全国のIBD患者にとって大きな衝撃でした。患者会が声を一つにしてこの問題に対応していくためにも今回のシンポジウムはタイムリーな開催となりました。 また、九州・沖縄のネットワークをどう強化していくか。それを探るモデルとして、札幌を拠点に全道に5つの支部を持ち、ともに活動している『北海道IBD』を招き、意見が交換されました

相談、就労、運営手法など、各県が独自の事業例を発表

第一部のシンポジウムでは、IBD疾患に限定せず、難病対策と福祉施策が報告されました。失業率が日本一高いなかで難病患者の就労支援に取り組む沖縄では、企業に頼らない雇用の創作実験として、オリジナルの〈沖縄指笛〉を制作販売。大手企業2社からプレミアムとしての提携依頼があり、難病患者による手作りという文言も入り、大きな自信になったと報告。当事者が難病相談・支援センターを運営する佐賀県では相談業務に注力。患者の辛さに共感できニーズを速く捉えられるなどメリットが多いし、また自己完結型に陥らず、関係機関とのネットワークを構築していると発表。熊本県では患者の医療費の負担軽減を図ることなどを目的に〈特定疾患治療研究事業〉を推進。北海道IBDでは、「北海道民はこんなにお得!?」と称し、先進的な難病対策を紹介。難病患者は道内のどの病院にも入通院できることや、79年に全国初で設置された北海道難病センターの活動の充実ぶり、また患者団体の持つノウハウに注目し『IBDがラクになる本』を発行。患者会の利益になっていると発表しました。

それぞれが患者会、難病連、難病相談・支援センターなど2足、3足のわらじをはきながら、多元的に戦略を展開しています。各組織の役割を果たしつつ連携する大切さ、また、独自の事業での就労支援や運営費を作るなど、ある種のビジネス感覚も必要という意見が出されました。

それぞれの良さを残し、密度の濃いネットワークに

第二部の医療講演は、IBDの診断の手順、治療指針、最新の医療技術や治療薬の動向などが詳しく述べられました。参加者からの具体的な質問も多く、また、講演後は個別面談も行われました。

第三部ではIBD患者会の代表者が壇上に上りました。設立2か月という会から長い歴史を持つ会、個人で活動するなどプロフィールはさまざま。活発な情報交換がなされました。月2回の定例会を行う沖縄IBDでは、定例会情報を新聞のフリーペーパーに告知。長崎のチョウチョウ会は、IBD患者にとって切実な食事問題を改善するべく調理実習や食事会をホテルでも実施し定着しているが、食関連以外のイベントが弱い。大分IBDでは医師を招いての交流会を実施。主治医とは違う医師の意見も聞く機会を作っている。IBD宮崎友の会では役員不足から単独での活動ができなくなり、熊本IBDとともに九州IBDフォーラムを立ち上げることに。

鹿児島県在住の岡部亜矢子さんは、クローン病患者として生きる姿勢をホームページに綴り、99年から運営。これまで30万件を超えるアクセスがあり、熊本IBDのホームページの制作更新もしている。北海道IBDへの「参加率のいいイベントは?」という質問に対しては、「昔は参加者の数で評価していたが、最近は満足してもらえば数は問題ではないと思っている」と回答。福岡IBD友の会は「北海道や沖縄の活動を聞いて驚いた。まだまだやれる事がたくさんある」と語りました。

最後に主催者である熊本IBDの中山会長が「各県の強み、弱みが見えた会でした。それぞれの良さを残しつつ、情報の共有化、全九州・沖縄での会報誌など、密度の濃いネットワークを模索していきたい」と結びました。

IBDとは?
IBD(炎症性腸疾患)とは、潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)の2つの疾患の総称。大腸・小腸を中心とする消化管粘膜に炎症や潰瘍などができる病気で、原因も根本治療も発見されていない特定疾患。先進国の若年成人層に多く、発症は10〜20代に集中している。