岡山大学医学部・歯学部附属病院 総合患者支援センター
患者にやさしい病院を追求する
私たちは患者様に最良の医療とケアを提供するために活動します」を合い言葉に、岡山大学医学部・歯学部附属病院総合患者支援センター(ISCPS)は平成15年に誕生しました。大学病院が併設する施設としては全国でも珍しく、患者への包括的・継続的なサービスの提供に取り組んでいます。発足の経緯から組織や活動内容を取材しました。
患者目線に立った大学病院を目指して発足
「総合患者支援センター(以後センターと略)」の構想が芽吹いたのは平成11年。現在、センター長である公文裕巳先生の提唱でした。
「これからの病院はどうあるべきか。それを考えたとき私は、『患者目線で物事を考えられる病院だ』と思いました。大学病院は医師中心の専門家集団であり、部門間の連携が弱い。医療相談システムがきちんと機能していなかったり、医療ソーシャルワーカー(MSW)がいない病院も多い。縦割りの組織に患者さんの目線で多職種の医療チームとしての横断的な機能を加えるために、患者支援センターの必要性を感じました」。
以来、準備を進め4年後に開設。現在のコアスタッフは医師2名(センター長、副センター長)、看護師2名、MSW2名、事務職員1名。そして院内・学内の各部門の有志、職員、多くの病院ボランティアが関わっています。週1回開かれるスタッフミーティングにはこれらの人々に加え、学部、学科、職種の違いを越えて実に多彩なメンバーが集います。まさに患者目線に立った連携が具現化されています。
患者や外部機関と病院をつなぐ場として活動
センターの活動の大きな柱である各種相談には1か月に平均280件の相談が寄せられています。医療・看護・福祉相談には病気に対する不安や入退院時の相談、制度の利用、経済的な問題も含まれます。また、女性健康相談、口腔衛生ケア、痛みの相談など10を超える相談窓口が開設されています。多目的室は患者や患者団体の活動の場として提供されています。毎月1回、オストメイト(人工肛門・人工膀胱=ストーマを装着している方)の患者会が、「オストメイトサロン」を開催。共通の悩みを相談したり、情報交換の場でもあり、だれでも参加できるので、外来、入院患者だけでなく口コミで他県から訪れる方もいるとのこと。がん患者の患者会による出張相談会も実施されました。
「今年は転院をお願いする地域の病院の方といっしょに勉強会も開きました。また退院支援では訪問看護ステーションなど地域の関連機関と連携する流れをつくっていきたい。大学病院は地域から見ると敷居が高いと思われがち。そうではなくセンターを通じて、さまざまな外部機関との連携をこれからもっと強化していきたいですね」とMSWの石橋京子さんは語ります。
ピアカウンセリングや患者学習支援を進める機能も
ピアカウンセリングを重視し、”患者の力“を生かす「ピアサポーター」の養成も行っています。現在5人のオストメイトが術前術後の患者にストーマをつけた生活体験などを話し、不安などをやわらげるというもの。病院のチーム医療の一員として位置づけ、講座を受講してもらい認定しています。これををモデル事業とし、今後は病域を広げていく予定です。
患者が自身の病気について学ぶ学習支援として「患者図書室」も設置されています。運営はボランティアスタッフ。医療関係の図書や資料が閲覧でき、パソコン・ビデオコーナーもあります。
「医療関係の蔵書がまだ少ないのが現状です。患者団体が作成した冊子や会報は、病気について非常にわかりやすく解説されているので患者さんも学習しやすい。ぜひ提供してほしいですね。開設からもうすぐ3年。やるべきことはまだまだたくさんあります。テレビ電話機能付携帯電話を使っての遠隔医療支援のシステムづくりも進んでいます。”患者にやさしい病院“としてセンターをますます充実させていきたい」と副センター長の岡田広基先生。大学病院ならではの幅広い守備範囲、内部間や外部との有機的なつながり、スタッフの情熱。総合患者支援センターを核に、患者さんへの”やさしさ“を追求する取り組みが続いています。
岡山大学医学部・歯学部附属病院 総合患者支援センター
岡山市鹿田町2丁目5-1
TEL.086-223-7151(代表) 086-235-7744(直通)
e-mail sienc@hp.okayama-u.ac.jp
http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~iscps/