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難病・慢性疾患全国フォーラム2019 主 催:難病・慢性疾患全国フォーラム2019実行委員会
(厚生労働省「令和元年度難病患者サポート事業」補助金事業)

2019年11月9日、「難病・慢性疾患全国フォーラム2019」が、東京のJA共済ビルカンファレンスホールにおいて開催されました。このフォーラムは、新しい難病対策と長期慢性疾患対策の確立を目指して、(一社)日本難病・疾病団体協議会(以下、JPA)、(公社)日本リウマチ友の会、認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワークの呼びかけによって2010年から開催されているものです。今回は、昨年に引き続き、難病法・改正児童福祉法(小児慢性特定疾病対策)の5年見直しへの取り組みを主たるテーマとし、多くの患者・家族団体、地域難病団体連合組織、支援団体・企業などが一堂に会してのフォーラムとなりました。

第一部では、患者・家族の声として、患者・家族団体のリーダーが当事者の立場から、難病患者の直面する課題や、難病対策の問題点などについて訴えました。

発表内容・発表者

「膠原病の重症度分類について」
(一社)全国膠原病友の会・大黒宏司さん

「移行医療と小児慢性特定疾病自立支援事業の充実を」
(一社)全国心臓病の子どもを守る会・神永芳子さん

「軟骨無形成症の現実と未来を考える」
つくしの会(全国軟骨無形成症患者・家族の会)・水谷嗣さん

「1型糖尿病の患者・家族が〝希望〞を持って生きられる社会の実現を目指して」
認定NPO法人 日本IDDMネットワーク・大村詠一さん

「難病患者等実態調査からみえてきたもの」
(一財)北海道難病連・増田靖子さん

「新しく指定難病となった疾患の患者、患者会へのヒアリング」
JPA常務理事・辻邦夫さん(全国CIDPサポートグループ)

パネルディスカッション パネルディスカッション 第二部では、「難病法・改正児童福祉法の5年見直しについて」をテーマにパネルディスカッションが行われました。※CfRD=Committee for Rare Diseasesまず、認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワークの福島慎吾さんが「小児慢性特定疾病医療費の残された課題」、 JPA常務理事/全国CIDPサポートグループの辻邦夫さんが「難病法、改正児童福祉法施行5年を目途とした見直しについて」、NPO法人 IBDネットワークの吉川祐一さんが「病気になっても働ける!」と題して、当事者の立場から、難病法・改正児童福祉法にかかわる課題や就労の問題について言及しました。

続いて研究者の立場から、NPO法人ASridの西村由希子さんが「難病フォーラム調査報告/国際協働の現状」として、難病対策についてのアンケート結果や、国連内にNGO団体CfRD※が設立されたことなどを報告。また東京大学先端科学技術研究センターの渡部沙織さんが、「患者さんの視点を政策・研究に生かすために」と題して患者視点での調査や提言の必要性、難病患者の就労にもかかわる超短時間雇用について発表しました。

質疑応答、まとめを経て、最後に「難病患者だけではなく、障害者や高齢者と地域の住民が安心して暮らせる新しい社会の実現を目ざし、このフォーラムがその起点となることを願う」(抜粋)とのフォーラムアピールを採択。難病の治療研究の推進に加え、難病や慢性疾患による生きづらさや暮らしにくさに着目した生活者支援を求めていくことを確認して、フォーラムは終了しました。

難病法・改正児童福祉法の5年見直しを機にすべての患者や国民が安心して暮らせる社会を目指す

伊藤 たてお さん
難病・慢性疾患全国フォーラム 実行委員長
(一社)日本難病・疾病団体協議会(JPA)理事

2009年にJPA が「新しい難病対策・特定疾患対策を提言する」を発表してから10年。そして難病法と改正児童福祉法が施行されてから5年。また障害者総合支援法が施行され、難病もその対象とされてから6年が経過しました。

今、その難病法と改正児童福祉法の〝5年見直し〞を迎え、10回目となる難病フォーラム開催に大きな感慨を感じています。多くの方々の励ましやご意見があってこそ、ここにたどり着きました。私たちは難病法について「法律は作って終わりなのではない、改善を重ねていってこそ血の通った法律となる」と言い続けてきました。この5年見直しはまさにその証となっています。しかし、見直しが必ずしも改善とはならないことも私たちは知っています。

またパネルディスカッションの中でも言及されましたが、附帯決議は、もともと難病法が成立した時点での不十分な点の改善について、附帯決議という形で表現したものです。まず、附帯決議に記された課題の解決をスタートラインとするべきだと私たちは考えています。

指定難病の対象となっていない難病もまだ数多くあること、指定された疾患の重症度基準の問題や軽症患者の登録問題、児童福祉法における小児慢性特定疾病の年齢制限の問題、地域医療と専門医療の問題、介護支援や在宅医療、就労支援と雇用の問題、就学・進学の抱えている問題、障害年金や税金控除等の生活支援、交通・移動の支援等々、難病患者が地域で生活するに当たって直面する、さまざまな課題の解決に向けて、私たちは活動を続けていく必要があります。

研究者の参加や新しいスタイルの患者団体への期待

私たちは、難病法の目的とする「難病の患者が地域で尊厳をもって生きていくことのできる共生社会の実現を目指す」とした理念の行方にもしっかりと目を向けなければなりません。障害者差別を禁止した国際条約に日本も批准していることや障害者差別解消法、障害者基本法、障害者基本計画などとの連携や医療基本法を目指す動きにも目を向けなければなりません。難病患者のおかれている立場は日本の医療と福祉そのものであり、多くの国民の利益と合致していることも忘れない活動が必要なのです。

そして、生活という視点を基盤として考えると、難病法の中だけで施策は完結するものではなく、他の社会福祉制度との関連性も問題となってきます。つまり、難病患者が直面している問題は、難病患者だけにかかわることではなく、長期慢性疾患の患者や障がい者、高齢者、子どもなど社会的な弱者全般にかかわる問題であり、国民一人ひとりにかかわる問題でもあるということが、今日の議論の中でも明らかになってきました。その意味でも、今回はとても貴重なフォーラムになったと考えています。

また、今回のパネルディスカッションには、研究者のパネラーも参加し、多様な視点からの議論が行われ、新鮮な展開となりました。フォーラムも回を重ねるごとに進化しています。同じように、患者団体の活動も、今、一つの転換期を迎えているのではないかと感じています。従来型の全国組織の団体では、医療が進展して軽症者が多くなったことや情報が得られやすくなったことから、患者団体に参加する会員が減少しています。その一方で、個別のさまざまなニーズや関心分野を中心に、小さなグループでの患者団体や、研究者による支援団体などが誕生しています。小規模で個性的な団体が、とても興味深い実践をしていることもあり、大きな団体や、私たちも学ぶべきことが多くあります。こうしたフォーラムで課題や問題意識を共有し、ともに活動を進めることで、新しい団体のパワーを吸収することもでき、新しい患者団体活動のモデルができるのではないかと期待しています。