ピア・サポートのためのこころのレッスン
アサーションとは、相手の立場を尊重しながらも自分の意見をしっかりと伝える、コミュニケーションスキルのひとつです。今回は、ストレスをためないコミュニケーションのパターンについて考えてみましょう。
アサーションについて
ピア・サポートに必要な自己理解のための、もうひとつの視点として、自分のコミュニケーションの方法を見直してみましょう。たとえば、自分が急ぎの用事をしていて焦っているとき、上司または家族から別の用事を頼まれたら、自分だったら次のうちどう答えますか。
A:(「困ったな」と思いながらも断れないなと思い、仕方なく)「は、はい。わかりました」と答える。
B:「私だって忙しいのに、見たらわかるでしょ」と怒りながら断る。
C:「申し訳ありません。私は今、急ぎの仕事をしているのですが、その仕事はお急ぎですか。今日の午後か、明日でしたらできると思いますが」と断ったうえで、相手の事情も確認して交渉する。
以上のパターンは、次のように名づけられています。
Aは、非主張的コミュニケーションといい、相手とトラブルになることは少ないが、自分のストレスはたまりやすい言い方で、相手もこの人は何を考えているのかわからず、釈然としません。
Bは、攻撃的なコミュニケーションといい、自分はすっきりするかもしれませんが、相手には嫌な気持ちが残り、反感をもたれることもあるでしょう。
Cは、アサーティブなコミュニケーションといい、相手も断る理由がわかり、お互いに冷静に話し合って調整することもできます。
もちろん、時と場合によりA・B・Cを使い分けることもありますが、いつもAだけ、Bだけ、という人は人間関係がうまくいかず、ストレスをためることも多くなります。
そこで、必要に応じてCも使えるようにしておくことで、気持ちに余裕が出てきます。また、相手の人にもさわやかな印象を与えることでしょう。「あの人は良い人だね」といわれているけれど、実は自分の思いが言えず、ストレスがたまり、病気という形で体に現れてきている人も多いので、自分のコミュニケーションのパターンをときどき見直してみましょう。
臨床心理士・臨床動作士
黒岩 淑子さん プロフィール
佐賀大学保健管理センター非常勤カウンセラー、佐賀県スクールカウンセラーを精励したのち、現在は東京都スクールカウンセラーと佐賀県難病相談支援センターピアサポート研修講師に勤しむ。