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関西地区口唇・口蓋裂児と共に歩む会 大空会

関西地区口唇・口蓋裂児と共に歩む会 大空会

代表 山口 俊子

「関西地区口唇・口蓋裂児と共に歩む会(大空会)」は、ある病院で手術をともにした親たちが、術後も連絡を取り合っていこうと約束したところから始まり、現在は関西を中心に、医療施設や診療科の垣根を越えて精力的に活動している団体です。
口唇口蓋裂は、複雑な医療の問題に加え、社会の偏見にも直面しなければならない先天性の疾患です。こうした困難な状況の中、「大空会」は、さまざまな人々の協力を得ながら、30年近くにわたり口唇口蓋裂の子どもたちとともに歩んできたのです。

活動の状況
特定の医療施設や診療科にこだわらず、幅広い医療情報を提供

1977年「大空会」は、10名ほどの患児の保護者により発足しました。当初、同じ病院の歯科口腔外科を中心とした患者会でしたが、「多様な医師の話を聞きたい。最新の医療情報を知りたい」と考える会員が増えたため、10年前に「医療機関から自立しよう」という方針を決めたのです。

口唇口蓋裂の手術は、高度な技術と経験が必要とされる難しいものです。しかしながら、手術を行う医師すべてが口唇口蓋裂治療の専門家であるとは限りません。最初の手術で完治することは少なく、十数年かけて何度も手術を繰り返す例が多いのです。また、病院によって歯科の口腔外科のこともあれば、形成外科のこともあります。さらに子どもの成長に伴い、耳鼻咽喉科や矯正歯科、言語聴覚士もかかわってきます。したがって特定の医療施設や診療科に偏らず、最新の医療情報を提供しなければ、と考えたのです。

そこで分野の異なる専門家による講演会を行い、報告集をまとめました。講演や掲載をためらう医師もいましたが、「治療を選択する機会を与えてほしい、幅広い情報提供の場を作ってほしい」と訴えて実現しました。こうした新しい会のあり方は、会員に歓迎されただけでなく、多くの医療関係者にも受け入れられるようになりました。

口唇口蓋裂に対する偏見や無理解に対しても、積極的に活動

現在、大空会の会員は約350名です。主な活動は、年に約4回の会報発行と年2回の大きな集まり、地区会、電話相談などです。会報の発行部数は750部で医師や保健所などにも無料配布しています。春には総会と医療講演会、秋は医療講演会または会員の交流会などを開催し、医療講演会の内容は冊子としてまとめています。世話人が多忙でなかなか交流ができない、子どもが成人すると親も離れていくなどの課題があるため、兵庫地区では毎月1回の交流の場を設けています。

また、口唇口蓋裂に対する偏見をなくし、疾患への理解を求める活動にも力を入れてきました。1979年には、「口裂け女」にまつわる奇怪な話が流行しました。疾患とは無関係ですが、その漢字とニュアンスから、会員の子どもがいじめられたことがありました。2000年に、テレビで口裂け女を題材にしたアニメが放映されることを知り、東京の患者会「口友会」とともに抗議し、放映を中止してもらいました。「ハリーポッターと秘密の部屋」、「レッドドラゴン」の内容にも抗議し、「口裂け女のゲーム」の発売中止が実現できました。

テレビや映画を通して間違った認識が広まると、子どもたちは平穏な生活を送ることができません。会として、社会的に行動することには一部反対の声もありますが、現実に傷ついている人がいるなら、偏見を助長するような動きに対しては患者会としては行動する必要があると考えています。こうした状況の中で社会の理解の一助になればと、絵本『ちかちゃんのえがお』を会員による作・絵により出版しました。マスコミ各紙でも取り上げられ、広く共感を得ることができました。

私たちは、産婦人科における口唇口蓋裂への理解と対応が重要だと考えています。出産時に、必要な医療情報や大空会のような患者団体の存在を知るかどうかが、その後の治療や子育てに大きくかかわってくるからです。今後、さらに診療領域や学閥の垣根を越え、患者一人ひとりが適切な治療が受けられるようになってほしいと願っています。

組織の概要

■創立:1977年3月設立
■役員:約350名
■会員数:約100名/賛助会員が約50名(2004年現在)
■年間活動費:2,232,799円(平成15年度)