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NPO法人 のぞみ会(変形性股関節症の会)

NPO法人 のぞみ会(変形性股関節症の会)

吉田和子

「のぞみ会」は変形性股関節症の患者が、お互いに支え合いながら、病気に対する社会的な認知、理解を進めていこうとして立ち上げた団体です。現在は全国で14支部、約7000名の会員数をかかえ、6月には創立20周年を迎えました。情報の入手が難しい時代にこの会を立ち上げ、20年の間にさまざまな企画を行ってきました。この「のぞみ会」の歩みをご紹介します。

活動の状況
会員数60人から7000人に
多くの支持と協力を得ながら歩んだ20年

「変形性股関節症」は、関節軟骨がすりへり、変性を起こして股関節が壊れる進行性の病気です。原因はいろいろありますが、先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全がほとんどで、圧倒的に女性に多いことが特徴です。症状は年齢、発病時期、片側の関節か両側の関節か等で異なり、個人差も大きいのです。患者の60%以上が手術を受け、最近では人工関節手術が主流になっています。病気が進行すると股関節が痛み、日常生活に支障を来すので、常に生活の工夫やリハビリテーションなどの自己管理が必要となり、一生付き合わなければならない病気です。

今でこそ、病気を知る手段はインターネットを始め豊富にありますが、以前は患者向けに書かれた書籍すら見当たらない状態で、ひとりで思い悩んでいる患者がほとんどでした。そこで、神奈川リハビリテーション病院に入院していた数名の患者が、お互いに病気の知識を深め、快適に生活が送れるように社会に働きかけをしていきたいと1986年に創立したのが「のぞみ会」です。同じ悩み、苦しみをもつ人と理解しあい、知識や情報を共有することで治療や手術に伴う苦労や困難を軽減していきたいというのが、創立メンバーの強い願いでした。

創立以降、毎年の総会、専門医の講演会、医療相談、会員の交流会などを重ね、発足当時は60名程度であった会員は、現在約6500名に増え、全国に14支部を持つに至っています。特に力を入れているのは医療情報の提供で、医師の協力を得て年1回は必ず医療講演を行ってきました。最近はホームページによる情報提供も好評です。

会としての転機は、1993年の事務所開設で、これによって社会的な認識が高まり、さまざまな面で活動しやすくなりました。続いて、2002年には東京都の認証により「特定非営利活動法人(NPO法人)のぞみ会」となりました。多数の会員への責任を果たしていくためにも組織の法人化は欠かせないと考えています。

情報を見極め、自ら治療を選択することをめざして

創立以来の私たちの方針は、特定の医師や病院、研究機関に片寄らず、中立を守り、自分たちで進もうということです。変形性股関節症については医師によって治療方針が違うので、さまざまな意見を聞きながら、必要な情報を会員に提供し、会員自身が選択できるようにすることをめざしてきました。幸い、順調に会員が増えてきたので、他に頼ることなく、会員からの会費だけで会を運営することができています。「のぞみ会」の活動が新聞などに取り上げられたりすると思いがけないほど会員が増え、潜在的な患者さんが多数いることや、患者会が切実に求められていることを実感してきました。また、同じ病気をもつ有名人に積極的に働きかけ、講演会などを行ったことも会員に受け入れられました。医師やマスコミなどの協力も大きく、多くの人によって「のぞみ会」は支えられてきたと感謝しています。

そして今年、創立20周年を迎え、記念シンポジウムの開催、冊子「専門医からのメッセージ」の発行、5年ぶりの実態調査などを企画しましたが、多くの医師が快く協力してくださり、ここにも「のぞみ会」の活動の積み重ねを感じました。

変形性股関節症は、加齢と共に進行し、また老化そのものが原因となることもあるので、高齢化社会ではますます増えていく病気であると考えられます。しかし、正確な患者数が未だに把握されておらず、認定医制度もないなど課題が数多くあります。たとえば「リウマチ科」のように「股関節科」という診療科名ができて、専門医のいる病院を見つけやすくなってほしい。さらに、診断から手術、治療、リハビリテーションまでを包括した股関節センターのような施設を実現したいというのが、私たちの願いです。

最近は、患者会に入らなくても、情報を容易に手に入れることができます。特に初期の「股関節症」は症状が軽く、患者会の必要性も感じないようです。しかし、重症化してくると、治療の選択を迫られます。近年は高度化する医療技術に戸惑うことも少なくありません。セカンドオピニオンを活用するにしても、まず自ら正しい知識や情報を得て、選択できる患者になる必要があります。必要な情報を見極めるには、やはり患者会の存在は大きいのではないかと思います。私たちは、会員ひとり一人が、自分にとって最適な医療を選び、障がいをかかえながらも”のぞみ“をもって生きていくことを、これからも会の目標にしたいと考えています。

主な活動

■定期機関誌「のぞみ」を、年5回発行
■それぞれの支部でも、支部報を発行
■支部のない地域には、支部報抜粋誌「ネットワーク」を年に1回配布
■総会、医療等講演会、交流会の開催
■支部においても、講演会、交流会を開催
■年に10回、股関節専門医による電話医療相談
■事務所の開所日、股関節症に関する相談を受付
■のぞみ亭(年6回)情報交換や意見交換、相談など自由な憩いの場

組織の概要

■1986年6月創立
■会員数:約7000名
■事務局:東京都新宿区高田馬場