財団法人 北海道難病連
専務理事 事務局長 小田 隆
厳しい環境のもとで少しでも医療を進歩・発展させなければならないという思いから、全国に先駆けて難病センターを設立するなど、独自の活動を展開している北海道難病連。今回は専務理事・事務局長の小田隆さんに北海道難病連の活動や北海道の難病患者を取り巻く環境についてお話いただきました。
活動の状況
北海道という地域性に合致した活動を展開
北海道は、ほかの地方に比べて専門医の在任数や高水準の総合医療機関が少なく、偏在しているという問題があります。また広大な土地に対して交通網が不十分であり、気候に関しては半年近くにわたる厳寒・積雪という悪条件も抱えています。 われわれ北海道難病連ではこうした問題を少しでも緩和すべく、遠方から札幌へ泊まりがけで病院に来る難病患者のために、宿泊施設を併設した難病センターを設けたり、難病患者が必要としている医療や福祉が的確に受けられるよう、専門医による難病医療福祉相談会を行うなどの活動を展開しています。
30の患者団体で構成されている北海道難病連ですが、その活動には北海道ならではの特徴があります。すなわち、地域支部単位での活動形態としたことです。北海道は面積が広いため会員が点在しており、全体で集合することが困難です。そこで、各地域に支部を作り、エリア単位で活動を行うようにしたのです。
患者会の3つの役割を意識して活動する
北海道難病連は、患者会の3つの役割である「自分の病気と身体を正しく認識する」「病気を乗り越える勇気を培う」「本当の福祉社会をつくる」を柱に活動しています。
まず「病気と身体を正しく認識する」では医療講演会や相談会を頻繁に開催し難病の理解啓発を行っています。「病気を乗り越える勇気を培う」では、団体交流を目的としたレクリエーションの企画、病気に対する悩みなどを仲間同士で話し合うピアサポートなどを行っています。「本当の福祉社会をつくる」では、講演会や集会だけに限らず様々な機会を利用し、難病問題を社会に向けて発信しています。
代表的な発信活動は毎年開催している全道集会です。この集会は難病問題を行政・社会に向けて発信するだけでなく、自治体職員や一般市民の参加協力を通して難病への正確な理解を深めてもらう機会にもなっています。難病患者自身が大会に参加することで仲間や支援者の存在を目に見える形で把握することができ、「病気に負けずがんばろう」というエネルギーを得ることができるとの感想を持っています。全道大会は2008年で35回目となります。わたしたちは長年の経験から、難病患者が情報発信することで起きる周囲への影響や成果が、とても大きなものであると認識しています。
難病患者と行政サービスの現状
難病患者を取り巻く状況として最近は、診断が確定しないという問題が減少した一方で、医師不足や地方病院の閉鎖などの医療に対する悩みや不満、医療費の自己負担増などの問題が大きくなってきました。北海道では、採算の取れないバス路線や鉄道のローカル線が削減され、医療施設への交通アクセスが悪化することも大きな問題となっています。
また、以前は保健所の保健師が医療も福祉介護なども総合的に担っていましたが、介護保険と障害者自立支援法の施行以来、行政のサービスが縦割りになり、医療サービスと介護福祉サービスの併用ができなくなりました。また、難病患者は現在の認定基準では障害者手帳の対象者として評価されにくく、必要なサービスや福祉が受けられないという困難に直面しています。北海道難病連ではこれらの問題を解決すべく、生活の基盤である医療を採算の面から切り捨てていくのは社会全体の後退であると強く訴えていこうと考えています。
就労支援を軸に広がる将来展望
今後の発展計画としては、まだ資金や人材の不足など多くの課題はありますが、難病センターを難病患者のよりどころとして、経済的に自立した施設にしていきたいと考えています。また、難病患者サポートの視点から重点的に取り組んでいきたいこととして、就労支援があります。現在、社会復帰や社会参加の促進を目的とした共同作業所地域活動支援センターを札幌、帯広、釧路などに設けています。札幌ではセンターだけでなくリサイクルショップや病院内の福祉売店も運営し、就労の場を作り出してきました。しかし、一般の方でも厳しい就労難にある北海道で、難病患者の就労環境はなお一層、厳しいものがあります。それだけに、受け入れ先やハローワークなど各方面の理解と協力を得つつ、少しでも就労難を補っていきたいと考えています。また、知識面では、われわれだけでヘルスケア関連団体の在り方や就労問題についての研究を深めていくことが難しいため、関係機関などとの連携を目指しています。
さらなる未来に目指すこと
最近では、医療領域で「患者の声を活かそう」という動きがあり、北海道難病連では医療者と行政と患者の架け橋となるような話し合いの場を作ってきたいと思います。そして、北海道だけでなく、やがては全国的な医療や福祉の向上につなげていけるようにしたいと考えています。
主な事業
■北海道難病センターの運営
■国・北海道・市町村・および議会への陳情請願活動
■機関紙『なんれん』の発行
■難病患者・家族の生活実態調査、難病白書の刊行
■医療講演会や相談会の開催
■難病相談室の常設
■啓発宣伝活動・ポスターの製作・配布
■レクリエーション・交流活動の支援
■地域組織(支部)の育成、援助
■ボランティア研修
■全国の難病ヘルスケア関連団体との交流・連帯の推進
■福祉機器の普及・販売・レンタル事業
■資金造成活動
北海道難病連の概要
1972年:全国筋無力症友の会北海道支部など4団体の呼びかけによって準備開始
1973年:10団体(1,100家族)によって、北海道難病団体協議会として発足
1982年:(財)北海道難病連と改組
2003年:全国難病センター研究会を設立し事務局を担当北海道難病センターの全面改装と改築を実施
2008年:30疾病団体、20地域支部、13,000家族の団体となる