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CILたすけっと

CILたすけっと

CILたすけっと 副代表 杉山裕信
(NPO法人 地域生活オウエン団せんだい理事長 NPO法人あくせす・ふらり理事)

杜の都、仙台。広瀬川にほど近い長町商店街にある「CILたすけっと」は、障がい者自身が運営を担い、障がい者の地域生活をサポートする団体です。街づくりへの参画や、ヘルパー派遣・移送サービスの事業展開など、その多彩な取り組みについて、副代表・杉山裕信さんにお話をうかがいました。

活動の状況
障がい者自身が運営する自立生活センター

「自立生活センター」はCIL(Center for Independent Living)の日本語訳で、障がい者自身が運営し、障がい者の視点で、障がいをもつ人たちの日常生活や社会活動などに必要なサービスを提供する新しい組織です。CILたすけっとのスタッフは7人、そのうち5人が障がいをもつ当事者スタッフです。

私たちの考える「自立」とは、自分の収入で暮らす「自活」や自分のことは自分でする「リハビリ自立」とは違い、「自分で選び・自分で決める」ことです。つまり、望む場所で、望むサービスを受け、主体的に普通の人生を暮らしていくことと考えています。「自立生活センター」では、その自立をきめ細かくサポートし、地域での自立生活を実現する手助けをしています。

また事業体としての活動を担うために、2つのNPO法人を立ち上げています。

まず「地域生活オウエン団せんだい」は、障害者自立支援法に合わせて設立したもので、障害者自立支援法に基づいたホームヘルパー派遣を行っています。また、もう一つの「あくせす・ふらり」は、リフト付き自動車による障がい者・高齢者への移送サービスで、主に地域の高齢者に利用されています。これらの中で、たとえば支援費制度の対象とならない部分は、利用者負担でCILたすけっとからヘルパーを派遣するなど、利用者の目線でのサービスを提供しています。

「ピア・カウンセリング」「自立生活プログラム」の実施

CILたすけっととしての主な活動としては、まずピア・カウンセリングと自立生活プログラムがあげられます。

ピア・カウンセリングは、障がいをもつ仲間同士が心をわかち合い、生活上の悩みや自分の障がいを認識したときの気持ち、将来への不安などについて語り合う場です。全国自立生活センター協議会の研修を受けたスタッフを中心に毎週実施するほか、毎年2泊3日の集中講座を行います。さまざまな障がいを持っている方が参加しますが、障がいの種類は違っても共感し合える部分は多く、話し合うこと、仲間になれることが大きな成果だと考えています。

二つ目の自立生活プログラム(ILP: Independent Living Program)は、自立生活に必要な心構えや技術を学ぶプログラムです。対人関係の築き方や介助者との接し方、トラブルの処理方法、金銭管理など個人に合わせた体験型プログラムを作成し、どんな生活をしたいのか、どんな生活ができるのかを一緒に考えていきます。特に重度の障がい者が自立するには、家族の理解と、所得の問題をどう解決するかが自立生活実現への大きな決め手となります。また施設や親元で暮らしてきた障がい者は、人と接する機会が少なく、対人関係が苦手な場合が多いので、特にコミュニケーションの問題に力を入れています。

商店街との街づくりやユニークな活動

2002年から仙台市の長町商店街と共同で、長町タウンモビリティとして電動スクーターの貸し出しを行っています。これは商店街のバリアフリー化を機会に、高齢者や障がいのある人にも気軽に買物や散策を楽しんでもらい、街の活性化を図りたいという商店街からの働きかけで実現したものです。スクーターと言っても実は電動車椅子で、免許も要らず誰でも乗れるのですが、「操作が難しそう」「足腰がいっそう弱る」というイメージがあるようで、なかなか広まらないのが悩みです。もっと気軽に利用してもらい、高齢者や障がい者が行動範囲を広げる手助けとなればと考えています。

タウンモビリティ事業をきっかけに、私たちも商店街に事務所を構え、街づくりの策定にも参加しています。近所の子どもが遊びに来たり、前を通る人も関心をもってくれるので、この機会にもっと障がい者や私たちの活動への理解を深めてもらおうと、近隣の小中学校、高校を対象に出前講座も行っています。

また、ユニークな活動としてCILたすけっとの会員を中心に「ODAZUNA」という障がい者プロレスを結成しています。《おだずなー》とは仙台弁で《ふざけるな》という意味です。「障がい者だって好きなことをやりたい、世間の障がい者に対するイメージを打破したい」と障がい者と健常者が協力して活動しています。これも仲間を増やすきっかけになりますし、障がいや困難に負けず、前向きに楽しく活動していこうというのは、私たちの基本的な姿勢です。

今、私たちが直面しているのは障害者自立支援法の問題です。抜本的見直しで、応益負担から応能負担へという方向になりましたが、見かけだけで中身がさほど変わっていなかったり、改善ではなく改悪ではないかと思われる部分もあります。事業の運営にも深く関わる問題なので、これからも私たちの考えを訴えていく運動を続けていきたいと考えています。しかし、これらの反対運動を通じて、身体、知的、精神の各障がい者の交流が始まったことは大きな収穫でした。2007年からの「みやぎアピール大行動」も、精神障がいの人からの働きかけで始めたもので、年々参加者も増えてきましたし、今後も、もっと仲間を増やしていきたいと思っています。

来年は設立15周年を迎えるので、記念誌作成やイベント開催の準備にとりかかりたいと考えています。当初はどこからも支援がなく、毎月のように街頭募金をして何年もかかって100万円を貯めて、やっと事務所を借りて…という苦労の歴史もあります。そういう苦労があったからこそ、今のCILたすけっとがあることを伝えていきたいのです。そして、障がい者が暮らしやすい街は、お年寄りやすべての人も暮らしやすい街だという考えのもと、これからも障がい者の地域生活を応援する活動を続けていきたいと思います。

主な活動

■ILP(自立生活プログラム)
■ピア・カウンセリング
■情報提供・相談受付(制度・生活全般)
■行政交渉
■介助者派遣サービス(NPO法人 地域生活オウエン団せんだい)
■移動サービス(NPO法人 あくせす・ふらり)
■タウンモビリティ事業
■バリアフリー調査
■機関誌STEP発行(年4回)
■ゆめ風基金宮城県支部

組織の概要

自立生活センター CILたすけっと
■JIL(全国自立生活センター協議会)加盟団体
■設 立/1995年1月
■会員数/約30人