CLOSE

このサイトは、ファイザー株式会社が社会貢献活動として発行しております『まねきねこ』の情報誌のウェブ版です。
まねきねこの郵送、もしくは郵送停止はこちらからご連絡ください。
なお、個別の疾患の相談は受け付けておりません。

お問い合わせはこちら

※メーラーが起動します。

セルフヘルプグループ ドリームファクトリー

セルフヘルプグループ ドリームファクトリー

代表 渡口(とぐち)泰子

ドリームファクトリーは、同じ精神障がいのある人たちが対等な立場で話し合い、励まし支え合うセルフヘルプグループとして1991年に兵庫県明石市で発足しました。精神疾患と診断されると、悩み苦しみ、周囲の理解が得られず引きこもってしまう患者が多いのが現状です。そんな中、病気を受容し、ありのままの自分で今を生きていこうという想いのもとに活動を続けています。代表の渡口泰子さんにお話をうかがいました。

活動の状況
生活環境によって症状が左右される精神疾患

精神疾患はうつ病、躁うつ病、統合失調症などが代表的ですが、客観的な診断基準が確立されておらず、グレーゾーンが大きいため病名がつきにくい人も多くいます。治療方法は服薬や心理療法などがありますが、生活環境によって症状に波が出やすく、寛解し職場復帰してもうまく適応できず、再発入院を繰り返すケースが多いのが特徴です。社会的な偏見や周囲の無理解にさらされ、また本人や家族も病気を隠す傾向が強く、引きこもったり、絶望し自殺したりしてしまう人も少なくありません。日本の精神医療は欧米に比べ非常に遅れており、近年ようやくデイケアの利用や居場所としての作業所の設立、企業の障がい者雇用など社会の制度や認識が変わってきました。それでも何十年も病院で暮らす社会的入院など、取り組まなければならない問題が数多くあります。

SHGとの出会いから会の設立へ

私は28歳で発病し、当初は非定型精神病と診断され5回の入退院を繰り返しました。現在の病名は統合失調感情障害です。1998年に明石市の作業所「夢工房大久保」に通所するようになり、翌年に全国精神障害者家族会連合会主催の「全国セルフヘルプグループ(SHG)研修会」に参加したことが大きな転機となりました。全国から集まったSHGの方々の活動発表を見て非常に驚きました。精神障がいの当事者でありながら、みんなとても明るく元気なのです。当時の私は仕事もできず一生だれかに支えられて生きていくのかと絶望的な心境でした。でも障がいがあっても、同じ仲間の支えになることができる、だれかの役に立つことで自分の自信や自尊心を回復することができることを知りました。そこで1991年に夢工房大久保内で仲間9名とドリームファクトリーを立ち上げました。

病気の先輩を見る中で病気を受容していく定例会

活動の柱は毎月2回行っている定例会です。会員が集まり近況報告をしたり悩みなどを話し合ったりしています。毎回10〜20人の参加がありますが、話したくなければ名前を言うだけでもいいし、聞いているだけの人もいます。日時と場所だけを決め出欠は自由。ただこちらの都合で中止ということは絶対にせず、役員や会員が協力して必ず開催するようにしています。ひとり一人の過程はさまざまですが、病気の先輩を見て、自分も元気になりたいと思い、障がいがあってもいいんだと受容していく。そういう会員の変化を見ていると、この会が支えになっているのだと実感します。

勉強会も定期的に開いています。医師や精神保健福祉士を招き、精神障がい者が使いやすい福祉サービスや法律についての知識など、身近なテーマをわかりやすく解説してもらいます。会員から次はカラーセラピーについて学びたいなどの希望も寄せられ好評です。

活動を続ける中で、会員が自主的にSHGを発足

活動を続けていく中で、新聞に取材されたり、私が大学や医療機関などの講演に呼ばれることが増えてきました。それが広報活動にもなり会員が増え、現在は正会員(当事者)54名、趣旨に賛同してくれる賛助会員も84名に増えました。西日本を中心に高知県からの入会者もいます。年2〜3回、発行している会報誌『ゆめ通信』には、定例会に参加した感想や服薬の効果、園芸療法の紹介やテーマを決めての一言コメント「VOICE」など、さまざまな情報や生の声が寄せられ、会員をつなぐツールとなっています。

2009年には神戸市内に新たなSHGとして「クロス・ロード」を立ち上げ、さらに2010年には神戸市北区と三木市に会員さんたちが自主的にSHGを発足しました。これはとてもうれしいことです。一団体が大きくなる必要はなく、身近な場所に小規模なSHGがたくさんできていく方がより有効だと考えています。

SHGの持つ意義と力を広く伝える活動を展開していきたい

4年前からヘルスケア関連団体ネットワーキングの会に参加していますが、初参加の時から偏見や疎外感を全く感じることなく、関心を持って理解したいという姿勢の方がたくさんいらっしゃることがとても新鮮でした。疾患や障がいが違っても困難を抱える者同士、その困難を一山も二山も乗り越え、人の痛みを我がことのように感じ、受け入れてくれているのだなぁと思い、精神的にも楽になりました。会の運営や会議の進め方なども勉強になり、ドリームファクトリーの活動に反映しています。

最近、行政もピアサポーター養成講座を始めるなど、ピアサポートという言葉や活動にスポットが当たっており、仕事として仲間を支え、障がい者の就労支援につなげていく方向性が感じられます。それも大事ですが、SHGの意義はあくまでも主体的であること。それでこそ対等な立場での話し合い、支え合いができるのだと思います。

発足から11年。長く続けてこられたのは、側面的なサポートをしてくれる人に恵まれこと、そして会員さんが定例会に来てくれることです。必要とされていることが喜びであり継続の力になります。今後は、SHGの持つ意義や力をもっとアピールし、多くのSHGが誕生するよう、ドリームファクトリーから発信していきたいと考えています。

主な活動

■定例会(毎月第2・第4土曜日)
■会報誌『ゆめ通信』(年3回)の発行
■勉強会・交流会の開催
■医療機関、教育機関などでの講演活動

組織の概要

セルフヘルプグループドリームファクトリー
■設立:1991年11月
■会員数:正会員54名 賛助会員84名