ミオパチー(筋疾患)の会 オリーブ
代表 後藤 淳子 氏
ミオパチー(Myopathy)とは、Myo(筋肉)、pathy(病・苦痛)からなる語で、骨格筋に関する多岐にわたった疾患の総称です。その大半が筋肉が萎縮することによって筋力が低下していく進行性の難病です。ミオパチー(筋疾患)の会オリーブは、一人の神経内科医師の呼びかけによって広島県で発足したという特殊な設立経緯を持っています。有効な治療法がないまま自宅に引きこもりがちな患者とその家族が、支え合い、学び合う自助の会として活動を行っています。代表の後藤淳子さんにお話を伺いました。
活動の状況
同じ患者同士の支え合いが必要という医師の呼びかけで発足
ミオパチーは数多くの病名を含む筋疾患の総称で、日本国内の患者推定数は6〜7000人(1万人に3人程度の発症率)といわれています。先天性、幼少期、成人してからと発症時期もさまざまで、筋肉が萎縮していく症状や、進行の速度にも個人差がありますが、全身へと進行していくことが多いです。 ミオパチーの会 オリーブは2004年、当時広島大学病院の神経内科医だった片山禎夫先生(現在は岡山県の川崎医科大学附属病院神経内科学特任准教授)のお声掛けで発足しました。片山先生は、治療薬もなく症状が進行していく患者を診ながら、医師がどんな言葉を掛けたところで限界があり、同じ疾患のある者同士の支え合いが必要だと、常々思っておられたそうです。そんな折、私は他の病院からの紹介で片山先生に受診することになりました。何度目かの診察時に、片山先生が私に「積極的に協力するので、ミオパチー患者の会を作りませんか」と声をかけてくださいました。 私は24歳で筋ジストロフィーを発症しましたが、進行する病気と折り合いをつけながら、OL生活をなんとか続けていました。その間に、中途で発症した難病患者として、将来同じような境遇に悩む人の役に立ちたいとの思いから、社会福祉士の資格を取得しました。片山先生からお声かけをいただいたのは、会社も退職して、これから何か具体的な活動をと、まさにそう思っていたタイミングでした。そこで、片山先生を主治医とする患者12名で、多岐にわたる筋疾患の患者会としてミオパチーの会を立ち上げました。現在は広島県、山口県を中心に他県も含めて53名の会員がいます。
医療相談会や交流会など自助の精神をもって活動
私たちが特にこだわったのは自助の会、セルフヘルプグループであるというところです。同じ障がいのある者同士や家族の交流、情報交換を通じて自らが自らを援助できる力を身につけていき、たとえ寝たきりになっても地域で自分らしく生きていきたいという強い思いがあります。 主な活動としては、医療講演会、ピアサポート研修会や交流会、また毎年の総会では午前中に無料で医療相談会を開催しています。当会の名誉顧問でもある、国立精神・神経医療研究センター病院・名誉院長の埜中征哉先生、広島西医療センター・神経内科診療部長の渡辺千種先生などの専門医が相談に応じてくださり、大変貴重な機会になっています。 また、会報誌を年4回発行し、会員への配布はもちろん、関係機関などへの周知活動に活用しています。昨年は広島市の保健センターから「筋疾患の講演会を開催するので、何か要望がありますか」と連絡が入りました。そこから市との共催で「ADL(日常生活動作)に応じた生活の仕方〜福祉用具と制度の効果的な活用について〜」という医療講演会を実施することができました。8年間、地道に活動を継続してきたからこその成果だと思っています。
広難連のメンバーとして広がる活動の内容と新たな視点
当会も加盟する広島難病団体連絡協議会(広難連)で、私は3年前から会長を務めています。会員数、活動規模も小さな当会の私が会長を引き受けるには、葛藤もありました。しかし、広難連という組織を通じて市民や関係機関、そして行政に理解や協力を求める働きかけを行なうこと、停滞気味の広難連自体の活動を活性化することを目指して、微力ながら積極的に活動させていただいています。この活動のおかげで、当会だけでは集めにくい他県情報の入手や行政への施策提言の機会を得るなど、活動の輪の広がりを感じています。 しかしながら、当会のような患者数の少ない難病患者の置かれる状況は依然として厳しく、孤独に病と闘っている方がいらっしゃることを痛感しています。そうした方々が、病名は違っても、不安や悩みを打ち明け、患者同士で支え合う活動が行える場として広難連の果たすべき役割は大きいと思っています。
新規入会者の減少と、マンパワー不足が課題
広報活動もしていますが、新規入会者が少なく、会の運営や行事の企画も役員任せで会員は参加するだけという形に陥りがちで、自助の会の目的を必ずしも果たせていないことが課題です。病状が進行し、どうしても会合やイベントに参加できない会員も出てきます。家族や賛助会員の協力もありますが、マンパワーの不足は慢性的です。行事の運営では広島市ボランティア情報センターに協力をお願いしたり、広島大学の看護学専攻の学生が受付の手伝いなどボランティアとして参加してくれています。 『まねきねこ』の広難連への取材を通じてVHO-net と知り合い、四国学習会へ参加、そして昨年は初めて東京でのワークショップにも参加しました。いろいろな出会い、刺激があり、さまざまな情報を得ることができました。VHO-net からノウハウなどを吸収し、課題解決につなげていきたいと思っています。
「自覚者は責任者」という思いを持って活動を続けていきたい
根治治療に至る病気の解明や新薬開発が一日も早く実現すること。それを待つ身ながらも、自分たち一人ひとりが主役だということを会ではいつも話し合っています。近江学園の元園長であった糸賀一雄さんがおっしゃった、「自覚者は責任者」という言葉があります。この病気になったという自覚者(当事者)が、さまざまな問題の解決の責任者として社会に訴え、また同じ病気の人たちを救っていかなければならないということです。そういう思いを持って、これからも活動を続けていきたいと思っています。
組織の概要
ミオパチー(筋疾患)の会 オリーブ
■設 立:2004年
■会員数:53名
主な活動
総会(毎年7月)
■医療講演会
■レクリエーション行事(年1回)
■おしゃべり茶話会(毎年3月)
■専門医や福祉専門職による学習会
■医療・福祉、社会保障にかかわる相談受付
■会報誌『オリーブ便り』の発行(年4回)
〈ミオパチーに分類される主な疾患〉
筋ジストロフィー/先天性ミオパチー/炎症性筋疾患(多発性筋炎・封入体筋炎) /内分泌障害を伴うミオパチー/甲状腺中毒性ミオパチー/甲状腺中毒性周期性四肢麻痺/甲状腺機能低下性ミオパチー/ステロイドミオパチー /周期性四肢麻痺 /糖原病・ダノン病 /ミトコンドリア病/ミオグロビン尿症 /遠位型ミオパチー/筋強直性ジストロフィー 他