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glut1(グルットワン)異常症患者会

glut1(グルットワン)異常症患者会

glut1 異常症患者会 会長 古田 智子 さん

glut1 異常症患者会は、グルコーストランスポーター1欠損症(通称GLUT-1[グルットワン]欠損症)の患者・家族の団体です。GLUT-1欠損症とは、脳にブドウ糖(グルコース)を取り込む働きが弱いために、さまざまな神経症状が出る先天代謝異常です。日本では確定診断されている患者が100名弱という希少難病(指定難病)です。有効な薬はなく、治療方法はケトン食療法で、毎食を家族が担っています。長女が診断され、あまりの情報の少なさから患者団体を立ち上げたという、古田智子さんにお話を伺いました。 ケトン食療法とは? 炭水化物(糖質)を厳しく制限し、脂質を増量する低炭水化物高脂質の特殊な食事療法。ケトン体とは体内で生成される、グルコース以外で唯一、脳のエネルギー源となる成分。代謝異常によるグルコースの取り込み不足分を、食事によってケトン体をつくり補う。早期導入により予後が良くなり、発作性の現象や運動障害が軽減することでQOLが改善する。

たまたま病名を知る医師に出会ったことで確定診断された世界的にも新しい希少難病

GLUT - 1欠損症は、脳にブドウ糖(グルコース)を取り込む働きが生まれつき弱いために、さまざまな神経症状が出る病気です。1991年に海外で初めて報告され、国内では2011年の厚生労働省研究班の調査で患者数は57人、現在、確定診断されている患者は100名弱という希少難病です。

世界的に見ても新しい病気で、2011年までは病名の訳し方も医師によって〝異常症〞、〝欠損症〞と違いがあり、統一されていませんでした。私たちの団体名が異常症となっているのもそのためで、現在は患者団体として病名を出す時は、GLUT-1欠損症に統一しています。

主な症状はてんかん発作や、ふらつき、立てない・座れないなどの運動失調、不随意運動、異常眼球運動や、運動・知的発達の遅滞などがあります。

私の場合、第2子の娘が生後3ヶ月くらいから眼球運動の異常や、入浴させると脱力する、眠りが浅く安定しないなどの症状がありました。1歳半で2度の痙攣発作を起こし救急搬送されましたが、精密検査をしても脳に異常がなく、抗てんかん薬を服用すると発作もなくなるため、4歳までは小児てんかんの診断でした。

5歳になった頃、てんかん発作は治まっているのに発達が少し遅れていることが気になり、セカンドオピニオンを受けました。症状を伝えると、担当医がたまたまGLUT-1欠損症を知っていて髄液を採って検査をした後、大阪母子医療センターに検体を出し、確定診断されました。今から10年前のことです。当時はうちの場合のように、疾患を知っている医師との偶然の出会いで診断されたケースが多く、検査機関は国内で2ヶ所だけだったそうです。

手探りの食事療法あまりの情報のなさにとまどい患者団体を発足

現在は遺伝子検査の技術も進み、大学病院の医師の多くは病名を知り、0歳児で確定診断されるケースも増えています。2015年に指定難病に認定されてからは、難病情報センターのホームページにも詳しく掲載されています。

GLUT-1欠損症の唯一の治療法は、ケトン食療法です。薬はありません。私の娘が診断された当時は、かかりつけの大学病院ではケトン食の知識がなく、大阪母子医療センターからの簡単な資料を渡されただけでした。炭水化物を減らし、脂質を増やす。食材や調味料をg単位で計量しながら三食をつくっていました。栄養士さんに相談しても、「調べておきます」という対応です。

でも私は今から帰って食事をつくらなければならない。子どもの食事は待ったなしです。半ば独自の方法で3ヶ月ほど続けましたが子どもは嘔吐するようになり、食事を受け付けなくなりました。私はとにかく情報がほしいとブログを始めていたのですが、そこでやっと大阪大学医学部附属病院にかかっている患者家族とつながり、4名の患児にケトン食療法を行っていることがわかりました。

そこでは本当にいろいろなことを教えてもらい、その後愛知と千葉の患者家族とともに2008年、患者団体を発足しました。とにかく交流の場をつくって情報を交換しようというのが第一の目的で、インターネットでのつながり、主治医からの紹介などもあり、全国からの会員が増えていきました。

日々の調理の工夫やきょうだい児への対応ハンドブックの作成に着手

勉強会や交流会、会報の発行やホームページの開設などで、さまざまな情報交換が始まりました。診断はされても、専門医や食事療法を指導できる栄養士が少ない。私のように十分に指導されないまま、在宅での食事療法でつまずいている人もいました。

団体としては、まずは食事療法を実践している病院に入院し、検査と並行しながらケトン食に慣れていくことをすすめています。低血糖になる子どももいるので副作用の管理も病院でしてもらう。その間に親が教育を受ける。

ケアをしながらの食事療法には、栄養学の知識が必要です。たとえば人工甘味料にはどんな種類があるのか、どんな食材に糖質が多いのか、食品の成分表示のどこを見て注意すればいいのかなど。市販のお菓子やジュースで患児が食べられるものはほぼありません。小学校時代は給食もだめでお弁当でした。家族やきょうだい児のストレスへの対応もあります。毎食、患児と家族用の食事をつくる負担も大きく、また患児の体調が悪くなると食事のせいではと、自分を責めてしまう親もいます。きょうだい児はおやつを隠れて食べるということもあります。

患者団体発足10周年の今年、助成金を獲得し、GLUT-1欠損症のハンドブックを作成することになりました。病気の説明から、ケトン食療法導入の仕方や会員から集まった日々の調理の工夫の数々、きょうだい児への対応の仕方など、できるだけ多くの情報を入れ、団体に入会していなくても診断されたら手に入るシステムにしたいと考えています。

厚生労働省に要請し特殊ミルクの安定供給を実現

ケトン食療法は、治療用ミルクが必須です。先天代謝異常やてんかん、アレルギーなどが原因で、母乳や市販のミルクでは健やかに育つことができない、通常の食事では症状が悪化してしまう患者のための特別なミルクです。

現在疾患別で30品目あり、登録特殊ミルク(製造費用の半分を国が負担)と登録外特殊ミルク(製造費用の全額を乳業メーカーが負担)に分かれています。

GLUT-1欠損症患者が医療機関から無償でもらうのは2011年までは登録外特殊ミルクであり、この製造は企業の社会貢献活動で支えられていることを活動の中で知りました。つまり企業の都合で製造中止になることも考えられます。

そこで、厚生労働省に要請を続けた結果、先天代謝異常症患者のケトン食療法で使う治療用ミルクが2012年、登録特殊ミルクとなりました。登録特殊ミルクなら災害などで工場が被害を受けた場合でも、優先的に製造され、安定供給されるのです。

ケトン食を指導できる栄養士の普及など社会制度の整備を目指す

団体としての目標は、まずハンドブックの作成、そして今、地域包括ケアシステムが動いている中で、在宅訪問管理栄養士の活動を高齢者だけではなく、GLUT-1欠損症のような食事療法が必要な患者にも適用されるようにすることです。

ただ、ケトン食を指導できる栄養士自体が非常に少ない。栄養士の教育過程にケトン食を入れるための活動から始めなければなりません。そのために日本先天代謝異常学会や日本小児神経学会、日本てんかん学会、日本在宅栄養管理学会の学術集会などに積極的にブースを出展し、アピールしています。

以前は患者は子どもだけでしたが、今では成人がGLUT- 1欠損症患者と診断されるようになりました。その人たちにケトン食療法を取り入れると、発達遅延は治癒されませんが、語彙が増えたり歩行距離が伸びたり、脳にエネルギーが運ばれることで、もともともっている機能が発揮されるようになっています。

親が元気でいる間はケトン食をつくれますが、そうでなくなった場合、だれがその子どもの食事をつくるのでしょう。せっかく保ってきたQOLが維持できなくなります。

そのために、ピアサポートでの情報交換に加え、社会制度の整備に向けて、患者団体として動いていきたいと考えています。

組織の概要

■設立 2008年6月

■加盟団体 56家族(58名)

活動内容

■総会、勉強会・交流会の実施

■会報(年3回)発行

■厚生労働省 難病対策に関する意見交換会参加

■GLUT-1欠損症ハンドブックの製作