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再発性多発軟骨炎(RP)患者会

再発性多発軟骨炎(RP)患者会

全身の軟骨に炎症を起こす希少難病である再発性多発軟骨炎(RP)。耳、鼻などの炎症で激しい痛みを伴い、気道の軟骨に炎症が起こると呼吸困難となり、命にかかわる疾患です。再発性多発軟骨炎(RP)患者会は、永松勝利さんが、ある患児との出会いをきっかけに発足しました。患者団体の代表は患者当事者や家族が多い中、理解ある第三者が務めることによって団体活動がうまくいっているベストプラクティスと言えます。指定難病認定に向けて行った署名活動を原動力に、患者の生活の質の向上、研究者との協働で治療法確立に取り組む活動などについて、代表の永松さん、事務局長の加藤志穂さんにお話を伺いました。

再発性多発軟骨炎(RP)患者会 代表
永松 勝利 さん


再発性多発軟骨炎(RP)患者会 事務局長
加藤 志穂 さん


全身の軟骨に炎症を起こす自己免疫異常による希少難病RP

再発性多発軟骨炎(以下、RP※)は、全身の軟骨に炎症を起こす自己免疫疾患です。初発症状としては耳介・鼻軟骨の炎症が特徴的で、激しい痛みを伴います。咽頭、気管などの軟骨病変では、喘鳴、呼吸困難、心臓血管系の症状では心臓弁膜症、動脈瘤などの大動脈病変を伴うことがあり、命にかかわる救急の対応が必要となります。

子どもから高齢者まで発症し、平均発症年齢は52歳。日本における推定患者数は約600人(平成30年度末時点)という、希少難病です。治療の中心は経口ステロイドと免疫抑制剤の対症療法です。症状が全身に及ぶため、定期的な複数科の受診が必要で、また、生物学的製剤が有効な場合もありますが、保険適用外のため高額の医療費が大きな負担となります。希少かつ深刻な疾患でありながら、医療従事者の間でも認知度が低く、増悪・寛解を繰り返し、社会的理解を得にくいという問題があります。

※RP : Relapsing Polychondritis

署名運動を原動力に患者団体を設立

キャラクター“ ほーぷちゃん”<br>団体の広報部長。うちわや<br>バッジのキャラクターグッズ<br>などで活躍しています。 キャラクター“ ほーぷちゃん”
団体の広報部長。うちわや
バッジのキャラクターグッズ
などで活躍しています。
永松 患者団体発足のきっかけは、私の妻の友人の子どもがRPで、呼吸が苦しい状況を目の当たりにしたことです。たいへんな病気だと思い、その子の母親が主治医から、「国の指定難病になれば治療研究が進む。そのための署名運動をしてはどうか」とすすめられ、それをお手伝いしたのが始まりでした。2008年に今の団体の前身「再発性多発軟骨炎患者支援の会」をつくりました。正直なところ、RPの詳細もよく知らず、戸惑いがありました。地元福岡の患者さんから県議会議員や国会議員を紹介され、福岡市の繁華街での街頭署名や記者会見にまで話が進み、反響も大きく、署名数は開始5ヶ月で4万人を超えました。同年12月に厚生労働省に要望書を提出。その時点で私の役目も終わったと思っていましたが、その後、議員さんからの提案でシンポジウムを開催したりする中で、09年に神奈川県の聖マリアンナ医科大学から電話がありました。

その年は、厚生労働省が難治性疾患克服研究事業の対象を拡大し、「研究奨励分野」を新設。200あまりの疾患研究がスタートした年でした。聖マリアンナ医科大学がRP研究に着手することになり、私たちがシンポジウム開催のために行った患者実態調査アンケートが非常に役に立つということ、私が偶然、上京する予定があり大学を訪ねたことから、ぜひ連携しましょうということになりました。その後も、指定難病認定に向けて署名運動に力を入れ、60万人を超える署名を提出。活動が活発化していく中、会のメンバーから「会費による患者会運営を」という声が増え、12年に「再発性多発軟骨炎(RP)患者会」を設立。15年にはRPが指定難病に認定されました。約7年に及ぶ熱心な署名運動が、団体の地盤を築き行動力の源になっていると思います。

熱意や行動力のある良き理解者の第三者が代表になることのメリット

永松 前身の患者会をつくった当初から、患者や家族の方が代表となり運営するのが良いという思いがありました。再発性多発軟骨炎(RP)患者会となり、会費運営になってからはさらに葛藤がありました。病気の痛みもわからない、果たして会員のためになっているのだろうかと。けれども次第に、「わからないものはわからない」「少しでも役に立つならば」と思えるようになりました。患者やその家族ではないからこその視点、できることがあると気づき、代表として全力を尽くそうと思うに至りました。

加藤 代表が患者ではないということを意識したことはありません。永松さんのもつ熱意や行動力に皆が牽引され、こちらも力が湧いてきます。患者は体調面でも、したいこととできることがイコールでないことも多く、それを実践し活動領域を広げてくれる永松代表の存在は、うちの大きな強みであると思っています。

患者の実態調査や手記をまとめた『RP白書』を発行

RP白書と吸器学会での広報活動 RP白書と吸器学会での広報活動 会員数は設立当初の40名から現在90名に増え、ホームページでの情報発信、医療講演会や交流会、各学会へのブース出展による啓発活動などを行っています。15年、17年には『RP白書』を発行しました。RPは希少難病なので、病院で同病の人に会う機会はまずありません。同じ病気の人の症状や、どういう日常をおくり、どんな不安や希望をもっているのか。それらを患者同士で共有し、医師や研究者にも知ってもらいたいという思いから、アンケートによる実態調査と、患者の生の声を手記として掲載しています。

会報『HORP & HOPE』と啓発冊子 会報『HORP & HOPE』と啓発冊子 15年版は役員側としても、とにかく患者の実態が知りたいという気持ちが強く、アンケートの質問項目が非常に多くなり、また回答方法も用紙の郵送とウェブの2種類にしたことで集計が煩雑になりました。それらを反省し、17年版は項目を整理し、会員の年齢層が高いことから回答も郵送だけに絞ったことで、より多くの回答が集まり、集計処理もスムーズになりました。医療制度や治療方法の変化で患者の実態は変わっていくので、今後も新版を製作していく予定です。

視野を広げ、病気と共存できる生き方を目標に

2019セルフマネジメントワークショップ 2019セルフマネジメントワークショップ 現在の症状を見極めたうえで、視野を広くもち、希望をもって人生を生きていく。そんな目標を掲げ、団体運営に取り組んでいます。疾患について学ぶほど、自分に現れていない症状に不安を感じたり、まわりの理解が得られず一人で悩み、孤独感を強めてしまう人も多いからです。そのためにセルフマネジメント(自己管理術)を学んでもらい、心身ともに、生活の中で病気とうまくつきあい共存できることを示せる団体でありたい。セルフマネジメントに関する講演を行ったり、日本慢性疾患セルフマネジメント協会の講座をRP用にアレンジしたものを受講する機会も設けています。また、地域の他の難病患者と交流できる機会も増やしていきたい。現在、都市で開催している医療講演会は今後、規模が小さくても地方で開催できるようにと考えています。

さらに、RP研究者とのこれまでの良好な関係を保ちつつ、治療法確立に向けて協力していきたい。日本の研究者と海外の研究者とのつながりも強くなっているので、日本の患者団体として、海外への協力も視野に入れ、ともに前進していきたいと思っています。

再発性多発軟骨炎(RP)患者会

組織の概要
■ 設立年 2012年
■ 会員数 90名
活動内容 
■ ホームページでの情報発信
■ 『RP白書』の発行
■ 会報、RPガイドブックなどの啓発冊子の発行
■ 医療講演・相談会
■ 患者交流会
■ 医療研究機関との連携