日本アラジール症候群の会
アラジール症候群は、10万人に1人が発症するといわれる先天性の希少難病で、小児慢性特定疾患に指定されています。肝機能障害、心血管異常、腎機能障害など症状は多岐にわたり、重度も人によってさまざまです。日本アラジール症候群の会は、患児の親が集い、病気の早期発見、治療法、福祉制度、ネットワークの確立などを目指して活動しています。クラウドファンディングなどにも果敢に挑戦する団体の活動について、代表を務める吉田麻里さんにお話を伺いました。
10万人に1人が発症するといわれる希少難病
アラジール症候群は、染色体異常によって起こる先天性の難病で、10万人に1人が発症するといわれ、小児慢性特定疾患に指定されています。国内の全国調査では200〜300人の患者が確定されていますが、病名さえ知らない医師が多くいるのが現状です。
一般的には、肝内胆汁うっ滞や黄疸などの肝機能障害、肺動脈の管が細くなっているなどの心血管系異常、腎臓の形成異常などの腎機能障害、発育障害や知能障害が出る場合もあります。症状の出方や度合いは人それぞれで違うため、診断に時間を要することも少なくありません。肝臓や腎臓の障害が重度になると、生体肝・腎移植が行われ、ドナーは父母や祖父母というケースが多いです。
ブログを始めたことで全国の家族から素早い反応が
私は2004年に出産した、第3子の息子がアラジール症候群と診断されました。主治医に病気についての参考書はありますかと聞くと、医学書に2行程度しかなく、パソコンで検索しても英語の文献が2件程度ヒットするという状況でした。
とりあえず、患者、家族がどういうふうに生きているのか、同病患者の意見が聞きたいという思いから、2005年にブログを始めたところ、反応が早く、全国から掲示板やメールに声が寄せられました。意見交換や交流会をしていく中で、2007年に日本アラジール症候群の会を設立しました。
希少難病なので、まずは疾患の存在と団体のことを知ってもらおうと、チラシを作成し、全国の保健所に郵送配布しました。ところが、郵送代などはわが家の負担だったので資金調達で行き詰まり、これでは続かないなと思いました。
そこで、「Alagille」のロゴをあしらったTシャツなどのグッズをつくり販売を始めました。売り上げでの資金調達はまだまだですが、イベントなどで皆さんが着用することで、疾患の周知を図っていくという思いを込めました。
クラウドファンディングに挑戦し、全国の医師に患者実態調査を届ける
資金調達の要となったのは、クラウドファンディングとの出合いです。
2019年、全国1000施設の病院に疾患啓発のためにパンフレットを届けようと、目標金額80万円で行ったところ、109万円の寄付を達成することができました。
実はその前年の2018年から、患者実態調査をスタートさせていました。出生体重や身長、どのような経緯で病気がわかったか、通院先の病院名など、交流会を通してお互いに聞きたい項目を抽出し、質問形式にまとめて調査を行いました。その集計結果を関係する医師に配布する
と、とても好評でした。また、翌2019年には、患者がどのように成長しているかの過程も追加調査をしました。
さらにブラッシュアップした質問項目を設け、アラジール症候群を研究している先生方に協力していただき、筑波大学の倫理審査を通して第2回目の患者実態調査を現在行っている最中です(調査期間2023年4〜9月、7月現在)。その結果を集計し、「患者実態調査書」として、全国の医師に郵送する資金を調達するため、2度目のクラウドファンディング(2023年4〜6月)にチャレンジしました。今後の研究に貢献していくたいへん重要な調査であることを強く広くPRしたことで、目標金額180万円に対して達成金額が208万円となりました。
これらの活動を通して、現在、患者団体として最も力を入れていることは、成人診療を行う医師への啓発活動です。小児科医はまだしも、15歳以上になると、小児科から内科、循環器科、整形外科などの成人診療の領域になります。トランジションの問題では、受け入れ先がみつからないこともあり、そこをなんとかつなげていきたい。今回の患者実態調査でもそのような意味から重要視して取り組んでいます。
学会ブースへの出展でVHO-netとつながる
2019年に、(一社)日本小児栄養消化器肝臓学会の学術集会で、一般市民でも参加できる発表の機会を得ました。その後も、(公社)日本小児科学会やNPO法人日本小児循環器学会へとつながり、ブースを出展するようになりました。そんな中で、(一社)全国心臓病の子どもを守る会と出会い、VHO-netを知ることになりました。
その後、地域学習会の関西学習会にすぐに参加しましたが、それまで他の患者団体の人と話す機会がまったくなかったので、とても刺激を受けました。疾患は違っても横のつながりの大切さや資金調達のことも含め、どうすれば患者団体が存続していけるのかという知識を特に学びました。
類似疾患との交流や子どもだけのコミュニティづくりを目指して
現在、全国に22人の会員がいます。月に1回、オンラインでの交流会、コロナ禍以前には対面での交流会も開催しました。その会員さんたちの生の声を、会員や先生方に届けるべく、2021年に「体験談集」を作成しました。メールでの投稿を募り、10人の方たちがエピソードを執筆してくれた力作です。
今後の抱負としては、対面も含めて、もっと会員間の交流を深めていきたい。まだ、22人の会員が一堂に集ったことがないので、ぜひ実現させたいと思っています。
同時に、アラジール症候群だけでは人数が少ないので、肝臓病などの類似疾患の団体と、手を結んでいく方向性を考えています。また、親が介入しない、子どもたちだけのコミュニティや、きょうだい児の会もつくっていきたいと考えています。
日本アラジール症候群の会
組織の概要
■ 設立年 2007年
■ 会員数 22名(2023年7月現在)
活動内容
■ アラジール症候群の周知活動(パンフレットの作成や患者実態調査など)
■ 交流会の開催
■ 会員専用SNSサイトの運営
■ 会報誌の発行
■ 国や行政、医療機関への働きかけ