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患者が知りたい症状や制度を詳しく解説
信頼できる情報をインターネットで提供する
「難病情報センター」

患者が知りたい症状や制度を詳しく解説
信頼できる情報をインターネットで提供する
「難病情報センター」

「難病情報センター」は、患者や家族、医療関係者に広く閲覧されている難病(難治性疾患)に関する情報サイトです。公益財団法人 難病医学研究財団が難病情報センター事業として運営し、主に国が調査・研究の対象としている難治性疾患について関係情報を提供しています。難病についての信頼性の高い情報を提供する取り組みについて、難病情報センターの開設当初から携わってこられた北村聖さんにお話を伺いました。

公益財団法人 難病医学研究財団 理事
国際医療福祉大学医学部 学部長 教授
北村 聖 さん

まず、「難病情報センター」の成り立ちについて教えてください

スモン病などをきっかけに始まった難病対策では、患者を支援するための政策が中心となっています。そこで、調査研究や関係学術団体などとの連携、関係情報の収集・提供、難病に関する知識の啓発や普及などの公益活動を推進していくために、1973年に当時の厚生省の支援を受けて医学研究振興財団(1984年に難病医学研究財団に名称変更)が設立され、研究助成などの活動を行ってきました。

1990年代になりインターネットが普及する中で、患者数や専門医の少ない難病についての情報提供は、インターネットのメリットが活かせる分野ではないかと考え、私が難病医学研究財団の評議委員であった時に「難病情報センター事業」を提案しました。難病の場合、地域に専門医がいるとは限らず、中核病院や大学病院を受診しても確定診断ができない場合もあり、不安な中で過ごされている患者さんも少なくありません。そうした方たちに、病気についての詳しい解説や病気にかかわる医療福祉制度などを知らせていくためには、インターネットが向いていると考えたのです。

そこで1997年に専門サイトとして難病情報センターを開設し、厚生労働省が難治性疾患克服研究事業の対象としている病気の解説や各種制度の概要および各相談窓口、連絡先などの情報を掲載しました。平成27年度には年間2850万件のアクセスが記録され、年々アクセス数は増加しています。有名人が難病であることが報道されるとアクセスが急激に増えることもあり、一般の方にも信頼のおけるサイトであると認識されていると考えています。

病気の解説は、一般利用者向けと医療従事者向けに分けられ患者さんや家族にもわかりやすいように工夫されていますね

病気の解説はこのサイトの中心となるものです。何よりも正確性、信頼性を重視し、厚生労働省難治性疾患克服研究事業の各研究班の専門家に直接依頼し、また毎年、研究班に見直しをお願いしています。専門用語も多いので、一般利用者向けには、難しい言葉にカーソルを置くとその説明が表示される仕組みも取り入れています。最近、難病法の対象疾患が大幅に増えたため、日本には専門家がいない病気などでは対応が遅れている面もありますが、できるだけ速やかにすべての対象疾患の解説を掲載したいと考えています。

サイトでは相談も受け付けており、相談の約半数は患者さんやご家族から、あとは難病相談支援センターの相談員などの関係者からとなっています。難病相談支援センターとの連携も重視しており、各都道府県の難病相談支援センターで対応が難しかった専門的な相談や質問について、相談者を匿名化し個人情報の管理に配慮したうえで、相談事例として共有しています。

難病という考え方は日本独特のもので、海外には難病というくくりでの情報サイトはありませんが、アメリカの希少疾患を対象としたサイトは参考にしています。

患者団体が紹介されているのも特徴的ですね

私がVHO-netを通じて知った患者団体などを中心に情報を掲載しており、リンクを張っていますが患者団体とは特に交流はなく、紹介のみとしています。難病の患者団体は、患者数が少ないことから小規模な任意団体が多く、厚生労働省とも関係するサイトとして責任をもって紹介できるのか、信頼性が担保できるのかという議論もありました。しかし、リスクを恐れるあまり患者団体の情報を掲載しないことは患者さんにとっての利益にならないと考えて取り上げました。もともと国や行政では行き届かないところをカバーするという難病医学研究財団の目的にもかなっていると考えています。

一方で、国や厚生労働省との連携ができていることから、医療や福祉行政への要望や意見を厚生労働省など各種機関につなぐことができるというメリットもあります。このサイトに寄せられる相談や要望が、患者さんの実態や考えを知る手がかりにもなっているのです。

今後の展望を教えてください

難病情報センターパンフレット患者団体の情報提供のように、国や行政では対応しにくいところを、フットワークの軽さを活かして柔軟に取り組んでいきたいと思っています。細かいところでは、一般向けの解説をもう少しわかりやすく、患者さん目線の親しみやすい内容にしていきたいですね。また当初はファックスによる相談も受けていたのですが、利用者が少なかったので今は行っていません。インターネット環境をもたない人やインターネットを利用しにくい人にも、何らかの形で情報提供する方法も考えていきたいと思っています。また、特に、災害時など緊急時における難病相談支援センターとの連携を検討していきたいと考えています。

患者数が少なく治りにくい病気にも光を当て、助け合っていこうという難病対策は、日本ならではの素晴らしい取り組みです。難病対策がより発展するように、また、より多くの患者さんや関係者のみなさんの役に立てるように、難病情報センターも充実していきたいと考えています。

取材を終えて:まねきねこの視点

インターネットの普及に伴い、病気や治療に関するさまざまな情報が氾濫する今、正しい情報や知識の活用能力(リテラシー)が当事者や一般市民にも必要となってきています。その中で、信頼できる情報を発信する「難病情報センター」の存在はとても有意義です。積極的に活用し、また要望や意見も伝え、双方向でさらに発展させていきたいと感じました。