ヘルスケア 仕事探訪 第3回
認定遺伝カウンセラー®
遺伝にかかわる病気や体質の相談に専門的に対応し、患者や家族を支援
遺伝カウンセリングを担う専門職
人間の遺伝情報の全体像(ヒトゲノム)が明らかとなり、遺伝性疾患の研究が進み、遺伝子検査やゲノム医療という言葉が身近なものとなってきました。しかし、今も遺伝性疾患の当事者は、仕事や結婚、子どものこと、周囲の理解などさまざまな不安や問題に直面します。血縁者が遺伝性疾患であった場合、遺伝子検査や予防的治療を受けるか受けないかの決断を迫られるなど、遺伝医療が進展したからこその悩みもあります。こうした問題に直面する患者や家族に対する遺伝カウンセリングの担い手として誕生したのが「認定遺伝カウンセラー®(Certified Genetic Counselor:CGC)」です。
従来、遺伝カウンセリングは医師が中心となって行われてきましたが、単に遺伝医学情報の提供だけではなく、クライエント(相談者、患者とその家族)の立場になっての問題解決のサポートや、心理的な対応技術が必要とされ、さらに倫理的・法的な内容も含まれるため、医療者とは独立した専門職が必要となったのです。認定遺伝カウンセラー®は、職業選択や結婚、出産など当事者が直面する医学的、心理的、社会的な課題を整理し、医療情報はもとより福祉や療育に関する情報(社会資源)について伝え、患者や家族が納得のできる方針を立てたり、決断を支援したりする専門職ということができます。
出生前検査や予防的治療の悩みにも対応
現在、28の大学院に遺伝カウンセラー認定養成課程が開設されています。これらは、日本遺伝カウンセリング学会と日本人類遺伝学会が協力して制度化した認定遺伝カウンセラー専門教育機関として認定されており、修了者が、認定遺伝カウンセラー制度委員会による認定試験に合格すると認定遺伝カウンセラー®を呼称することができます。
多くの認定遺伝カウンセラー®は、大学病院や総合病院の遺伝子診療部など遺伝疾患にかかわる部署に在籍し、臨床遺伝専門医や各診療科の医師と連携して患者や家族の支援を行っています。また、大学や研究機関に所属し、教育や研究に従事したり、製薬企業などに在籍して患者支援や臨床試験にかかわったりする場合もあります。
遺伝カウンセリングにおいては、妊娠など周産期の相談、出生前検査、子どもの先天性・遺伝性の病気、遺伝性の腫瘍(がん)、遺伝性の神経・筋疾患など、そのテーマは多岐にわたります。遺伝医療の進展は目覚ましく、また予防的治療が保険適用になるなど環境の変化もある中で、カウンセリング内容も迅速に対応することが求められます。一方で、認定遺伝カウンセラー®の歴史は浅いため、人数もまだとても少なく、遺伝カウンセリングを行う医療機関も少数であり、社会的な認知度も高くはありません。認定遺伝カカウンセラー®の果たす役割への理解が深まり、資格をもつ人が増えることや、当事者団体・難病相談支援センターなどとも連携して、患者や家族のニーズに応える、より多角的な支援が可能になることが期待されます。
参考URL
日本認定遺伝カウンセラー協会 https://jacgc.jp/
認定遺伝カウンセラー制度委員会 https://plaza.umin.ac.jp/~GC/
遺伝性疾患プラス https://genetics.qlife.jp/
仕事DATA
●人数389名(2023年12月現在)
●認定試験
年1回 筆記試験と面接試験
(遺伝カウンセリングのロールプレイを含む)
※認定遺伝カウンセラー制度は2005 年に施行
●受験資格
認定遺伝カウンセラー制度委員会が認定した遺伝カウンセラー認定養成課程を設置した大学院を修了している、また受験時に日本遺伝カウンセリング学会あるいは日本人類遺伝学会に入会して2年以上経過しているなどの条件がある
●勤務先
医療機関、大学、研究機関、製薬会社、臨床検査センターなど