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SHG進展の背景 第二期

第6回 SHG進展の背景 第二期

特定非営利活動法人ひょうごセルフヘルプ支援センター
代表  中田智恵海(佛教大学 教員)
前回はSHGが進展してきた第一期の背景について述べました。生活困難を抱えていても援助の制度や社会サービスがない時、共通の困難を抱える人たち同士で自然発生的にグループを形成して相互扶助によって課題に向き合い、解決しようとしたのでした。しかし、第二期は少し事情が異なります。

あるSHGの活動から

7月20日の朝日新聞の阪神版に、2005年のJR宝塚線脱線事故で5ヶ月近く意識不明になりながら、奇跡的な回復を見せる鈴木さん母子の体験を語る会を、あるSHGが開くという記事が掲載されていました。そこまでは第一期のSHGと変わりはありません。私がおやっ?と思ったのは、次の一文です。「問い合せは同市社協ボランティア活動センターへ」と電話番号が記してありました。

たいていの患者会は世話人の自宅が連絡先になっていますね。それは国の内外を問いません。私が15年前、オーストラリアの患者会の代表のご自宅を訪れた時「私の会のオフィスはキッチンテーブルよ」と言われ、「私もそうよ」と言って笑い合ったのでした。当時、公的・準公的な福祉機関がSHGを支援することなど思いもよらないことでした。

たとえば兵庫県では健康福祉事務所の保健師が、平成の始まりの頃からこれまでに32のSHGの立ち上げと運営の支援を行い、そのうち患者会は6団体あり、全てに予算措置がついています。このように、予算をつけて保健師が支援する、あるいは連絡先を社協が担うといった支援は、いつの頃から、どのような経緯で始まったのでしょうか。

制度上の転換

公的機関によるSHG支援の始まりは、福祉政策の歴史から見れば社会福祉の基礎構造改革にあります。1990年には厚生省社会局保護課(当時)が「生活支援地域福祉事業(仮称)の基本的考え方について」と題して、社会的孤立の問題、慢性疾患や医学的管理を必要としつつ在宅生活を送る人が抱える問題等をあげ、その支援の必要性を説いています。この支援の一つにSHGがあげられます。

次に、2000年の厚生省(当時)の「社会的援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」と題する報告書では、助け合いが一般的であった時代とは異なり、現行の社会福祉制度によっては支援できない問題が多発している。それらを放置すれば、重層化させ、孤立が進み、社会的排除がどんどん進展する。この社会的排除を防ぐための新たな方策の一つがSHGの支援で、それによって「つながり」を再構築しようという政策が打ち出され、さらに法的には社会福祉法が整備されたことがSHGの支援に大きく影響している、と申せましょう。

公的機関によるSHG支援に求められるもの

かつては仲間同士だけで力を出しあったSHGですが、今は公的・準公的機関が支援するようになりました。ならば、SHGのあり方も当然、第一期のものとは異なります。しかし、この一方で福祉予算の削減が始ります。SHG支援と公的責任の回避、この2つは関係がないとは申せません。今こそ、この政策の流れに対抗できる第二期のSHGを考えるべきでしょう。

筆者紹介

口唇口蓋形成不全の子どもの親の会の元代表、世話人を経て2000年より、佛教大学 教員、特定非営利活動法人 ひょうごセルフヘルプ支援センター代表
情報誌を発行したり、毎年セルフヘルプセミナーを開催して、さまざまなセルフヘルプグループを市民、行政職者、専門職者などに広報し、生活課題を抱えて孤立する人をセルフヘルプグループにつないだり、リーダー支援のための研修会を開催している。