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つどい・電話相談・会報誌の3つの柱で、
同じ思いを持つ者同士が支え合う「認知症の人と家族の会」
第4回

第4回
つどい・電話相談・会報誌の3つの柱で、
同じ思いを持つ者同士が支え合う「認知症の人と家族の会」

現在、日本には200万人を超える認知症患者がいるといわれ、その介護をし、ともに生きる家族は数百万人に及びます。45都道府県に支部を持ち各地で年間2,400回のつどいを開催し、患者・家族へのきめ細やかなフォローを展開する「認知症の人と家族の会」。これまでの歴史や全国的な動向、京都府支部での活動を通してのピアサポートの現状と課題についてお聞きしました。

日本アノレキシア(拒食症)・ブリミア(過食症)協会
共同代表 鶴田 桃エ さん
事務局長 高橋 直樹 さん

30年前、認知症の患者を持つ家族が集まって発足した「認知症の人と家族の会」は、その始まりからピアサポート活動が原点であり、今も変わりなく続けられています。患者同士、家族同士が励まし合い、元気になれるように、蓄積してきたピアサポートの運営や相談のノウハウなどをご紹介します。

「認知症の人と家族の会」自体が、そもそもピアサポートの考え方の基に発足していますね

■つどい
全国の支部単位で、介護家族が集まり介護の相談、情報交換、勉強会などを行っている。「一人だけじゃない」「仲間がいる」と多くの介護者が参加している。

■電話相談
全国どこからでも無料(携帯、PHSは不可)での、研修を受けた介護経験者による電話相談。
TEL. 0120-294-456 土・日・祝日を除く毎日、午前10時〜午後3時
全国各支部での電話相談も行っている。

■認知症の人と家族への援助をすすめる全国研究集会
1985年から開催。1988年からは各県持ち回りで実施している。学会や研究会などでの発表や実践報告とは異なり、ささやかであっても先駆的で重要と思われる活動を紹介。専門職でも介護ボランティアでも自由に参加でき、発言できるユニークな研究集会。この発表結果から「徘徊高齢者SOSネットワーク※」のように全国的に波及していった事例もある。

●会報誌『ぽ〜れぽ〜れ』(月1回発行)による患者・家族の声、情報提供。各支部でも支部会報を発行。

ホームページによる情報提供

「認知症の人と家族の会」自体が、そもそもピアサポートの考え方の基に発足していますね

介護保険など、国や自治体の認知症対策が全く整備されていなかった1980年に、同じ境遇の家族が京都で20名ほど集まったのが会の発足のきっかけです。ピアサポートという言葉も世間に流布していませんでしたが、設立以来、会の活動の大部分がピアサポートで成り立っています。当会のつどいでは家族同士が集まり、それぞれが自分の状況の大変さを話します。その時に誰かを励まそうとか、知識を教えてあげようかと思っているわけではなく、とにかく自分のつらさを聞いてほしい一心なのです。それを他の人が聞くことで、自分だけがつらいのではない、仲間がいることを知って元気や勇気が湧いてくるのです。つどいに参加してお互い顔を見て話すことが大事ですが、来られない人のためにも電話相談を行い、広報誌を発行してきました。

つどいの具体的な内容を教えてください

京都府支部の場合、定例のつどいを年9回、若年性認知症のつどいを年4回、男性介護者のつどいを年6回行っています。通常のつどいには平均30名から50名くらいの参加があり、多いときは介護初期の人、看取期(要介護4〜5)の人に分けますが、全体の話を聞くことも大事だと、あえてグループ分けをしない場合もあります。都合で早く帰らなければならない人が必ずいるので、その方々のお話を優先しますが、まずは先輩会員の方を指名し、お手本になるよう手短に話してもらいます。時間に対する意識や譲り合う気持ちがそこで芽生えるのです。以前は延々と話し続ける人に苦労しましたが、今は司会者に力がつき、時間配分や話の内容についてどの先輩が適切にうまくアドバイスできるかを判断できるようにもなりました。司会は交替制です。上手な方でも毎月同じではパターン化してしまいます。京都府支部は世話人会があり、そこで毎回の司会や書記などの役割を決めています。

電話相談について教えてください

全国の支部で行っていますが、京都府支部では介護経験者が研修を受け、当番制で常時2名、本部事務局の中で相談を受けています。毎月1回勉強会を持ち、いろいろなケースを検討しています。また相談を録音し、それを全員で聞いて意見を出し合うこともあります。記録も取りますが、やはり相手の反応や受け答えなどを生で聞くことはとても勉強になり、レベルアップにつながっています。また、全国の支部を対象に年2回、電話相談員研修会も開催しています。

2009年からは国の施策として、全国の都道府県、政令指定都市に認知症の人と家族のためのコールセンター設置事業が始まりました。そのためのマニュアルを2008年に厚生労働省から委託され、当会が作成しました。長年に及ぶ相談事業の蓄積を整理・分析するのは大変な作業でしたが、充実した内容になっていると思います。また認知症だけでなく、さまざまな疾患の電話相談にも応用できるのではないかと思っています。

これからピアサポートに取り組む団体へのメッセージはありますか

ピアサポートでできる範囲をきちんと確認しておく必要があると思います。私たちがつどいや電話相談でできることは、認知症についての初歩的な知識の提供、相談者に勇気や励ましを与えること、福祉制度を利用できることを教えることの3つです。できないことは、たとえば家族や兄弟間のもめごとの解決、また薬などの高度な医療知識や成年後見制度などの法的知識については専門機関に相談してくださいと伝えます。問題をすべて解決するという姿勢ではピアサポーターに多大なストレスがかかってしまいます。解決方法を決めるのはあくまでも相談者というスタンスを守って活動しています。

今後はどのようにピアサポート活動を展開していくのですか

電話相談の研修会だけでなく、つどいの司会進行役のスキルアップ研修にも要望があり、今後取り組んでいきたいと考えています。また、2010年9月には私たち「家族の会」監修でアニメキャラクターちびまるこちゃんを起用した、認知症の啓発チラシを全国紙に折り込みました。反響が非常に大きく、問い合わせの電話が殺到しました。また、この会の存在を初めて知ったという人が多く、これだけ活動してきたのにとスタッフ一同苦笑した次第です。でもこれはピアサポートの存在を人々が重視しているという声でもあると思います。もっともっと社会に向けてアピールしていかなければならないと実感しています。