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同じ患者の立場からのサポートとして
相談室「あけぼのハウス」を定期的に開催
第2回

第2回
同じ患者の立場からのサポートとして
相談室「あけぼのハウス」を定期的に開催

Breast Cancer Network Japan あけぼの会 副会長 富樫 美佐子さん
実際にピアサポートに携わる団体のリーダーやピアサポーターの立場から、その現状や課題を探る「ピアサポートNOW」。第2回目は、早くから患者が患者をサポートする活動に取り組んできた「あけぼの会」の新しい試みをご紹介します。

「あけぼの会」では、今年3月から、乳がんの患者さんや家族の相談室「あけぼのハウス」を週に1度定期的に開催しています。会員だけでなく一般にも開放し、誰でも集うことのできる広場のような存在を目指すという「あけぼのハウス」について、副会長の富樫美佐子さんにお話を伺いました。

「あけぼの会」の患者サポート活動について
・1994年から、入院患者を手術体験者が訪問し、不安や疑問に答え、退院後の生活に必要な情報をアドバイスするABCSS(Akebono Breast Cancer Support Service)という病院訪問ボランティア活動に取り組む。
・術後1年以上で、所定の研修を受けた会員がボランティアスタッフとなり、現在、全国16カ所の病院で、約100名が活動中。あけぼのハウスでの相談員も、このボランティアスタッフと事務局スタッフが担当している。
・ボランティアスタッフの研修では、独自のABCSSテキストブックに基づき、活動の目的や意義、「医学的な質問には答えない」「自分の病歴と比較しない」「患者さんのプライバシーを守る」などボランティアの心得を学ぶ。また専門医による講演会等にも参加し、最新の治療情報なども随時学んでいる。

「あけぼのハウス」とは、どのような活動ですか

「あけぼのハウス」は、私たちが以前から実現させたかった乳がん患者のための相談室で、3月から、原則として毎週日曜日に同じ会場で開いています。ハウスという言葉には、温かい家庭的なイメージと、会員以外の方にも広く参加してもらえるオープンハウスという思いを込めています。

具体的には、同じ患者の立場からのサポートである個別相談を基本に、体験発表や専門医による講演なども組み合わせて、術前術後の相談や社会復帰の手助け、治療法についての疑問や精神的な不安の解消、同じ体験者との会話など、多くの患者さんや家族の要望に応えていきたいと考えています。

この活動をスタートさせた背景には、 何か理由やきっかけがありましたか

「あけぼの会」では、病院訪問ボランティアを行ってきましたが、病院訪問ではサポートの対象が入院患者に限られます。しかし、最近は治療法が多様化して、手術前に化学療法やホルモン療法で経過観察をする術前薬物療法を受けたり、手術の場合も入院期間が短くなるなど、乳がん患者を取り巻く状況がめまぐるしく変わってきているので、誰でも利用できるオープンな相談の場が必要だと強く感じるようになったのです。もちろん電話相談も行っていますが、電話だけではやはり不十分な面があるので、直接、顔を合わせて話ができる相談室を設けたいと考えていました。

毎週、相談室を開くというスタイルにしたのはどうしてですか

当初は、本部事務所の近くに相談室を常設するつもりでしたが、費用がかかることや、常駐スタッフの確保などが問題になりました。そこで、定期的に会場を借りて相談室を開いたらどうかと検討していたところ、事務所の近くに、大小の貸しスペースを備えた手頃な施設(大橋会館)が見つかったので、スタートすることができました。

ただ、当初は、週に1度程度ならばスタッフも対応できると考えていたのですが、企画、告知、準備、開催、報告…と毎週実行するのは、実際にはかなり大変でした。「あけぼの会」として他の業務もありますので、無理はせず、毎月1回は休むことにしました。

個別相談では、どんな内容の相談が多いのでしょうか

半分以上は治療に関する相談で、他は生活上のことや精神的な悩みですね。

乳がん治療の場合、乳房温存術か乳房切除術か、化学療法かホルモン療法か、乳房再建をどうするかなど、多くの選択肢があります。医師から納得できる説明が受けられればよいのですが、現実には、理解が不十分なままに選択を求められて困っている患者さんや、セカンドオピニオンを受けたいという患者さんがとても多いのです。また、術前薬物療法を受けている患者さんからの相談や、家族からの相談も多く、こうした機会が必要だったのだと改めて感じています。

参加した人の反応はいかがですか

好評ですね。何度も来てくれるリピーターや、遠方からの参加者も多く、「あけぼの会」への入会者も毎回あります。初めて参加した人も、相談したり話し合ったりしているうちに、笑ってくれるようになります。つらい思いをしているのに笑えるのは、やはり同じ患者、仲間だからだと思います。

そして、うつむきながら「あけぼのハウス」を訪れた人が、元気ににこやかに帰っていくのを見ると、始めてよかったと思いました。「Helping you helps me.」という言葉がありますが「あけぼのハウス」の活動は、私たち自身のためでもあるのだと思います。

軌道に乗ってきたようですが、今後は、どのように発展させていくつもりですか

まず広報活動に力を入れたいと考えています。今、チラシを作成中で、近いうちに主な医療施設に置く予定です。すでに新聞でも紹介されましたが、今後ももっと広く「あけぼのハウス」を知ってもらえるように各方面に働きかけていきたいと考えています。

また、病気や治療のことをわかりやすく学べるように、専門医による「乳がん教室」を、個別相談と組み合わせることも考えています。

「あけぼのハウス」のような当事者の立場からのサポートには、どのような意義があると思いますか

医師や看護師の言葉では、どうしても心に届かない、納得できないことがあります。やはり同じ体験をした患者からの言葉でこそ、救われたり納得できることがあるのです。

ですから「あけぼのハウス」でいちばん大切なことは、仲間の存在だと思っています。私自身、「あけぼの会」の集まりに最初に参加したときに、同じ病気の仲間がこれだけいると思うだけで勇気が出ました。乳がんになっても適切な治療を受けて、病気と向き合いながら元気に生活している私たちの存在を見てもらうことが、いちばん大切なのだと思います。

●「あけぼのハウス」の詳細はこちらから