悩みや体験を共有し、語り合う場を積極的につくる 若年性関節リウマチの子どもを持つ親の会 あすなろ会(若年性特発性関節炎)
「あすなろ会」は、若年性関節リウマチ(若年性特発性関節炎JIA)の子どもを持つ親の会です。若年性関節リウマチは、日本国内で患児数1万5千人程度と推定されますが、未だ原因は解明されず、本格的な治療法も確立されていません。「あすなろ会」では、専門医の協力を得て病気の症状や治療について理解を深め、常に新しい情報を得ながら、同じ病気の子どもを持つ親や保護者が悩みや体験を共有し、病気に立ち向かうための活動に取り組んでいます。
また代表を置かず、理事によるグループ運営を行い、支部ではなく地域リーダーを設けるなど、独自の組織づくりも注目されています。そこで、理事で事務局を担当する石垣成子さんに「あすなろ会」のピアサポート活動についてお聞きしました。
あすなろ会 概要
設立:1985年
会員:約400名(賛助医師会員等を含む)
あすなろ会のピアサポート活動
●サマーキャンプ
●集い
●定例会(理事会と同時開催)
●相談対応(電話・メール)
理事(事務局担当) 石垣 成子 さん
「あすなろ会」では、サマーキャンプや地域の集いなどで、会員同士が相談したり、話し合ったりするピアサポートの場を積極的に設けていますね
もともと、若年性関節リウマチ(若年性特発性関節炎)の子どもを持つ親同士が悩みを打ち明け、体験を語り合って学校生活や教育面、家庭内のさまざまな問題などを解決していこうと結成したのが「あすなろ会」ですから、活動のすべてはピアサポートにかかわっています。
理事会や会報などの発送作業時に相談を受けることもありますし、講演会やセミナーを開催する時には、地域の会員にお手伝いに来てもらい、特に新入会員などの悩みや相談ごとを聞くようにしています。
電話やメールでの相談には、どのように対応していますか
それぞれ担当者を設けています。電話相談は私の担当ですが、留守番電話を確認して、こちらからかけ直す形です。相談件数は週に2〜3件です。あまり長くなると同じ話の繰り返しになりがちなので、1時間ぐらいで切り上げて、考えを整理してもらったり、理事会や集いの時に来てもらうなど、別の機会を設けるようにしています。
また、子どもの就職や結婚のように、私にはまだ経験のない相談内容の場合は経験者に対応してもらい、地域の問題は地域リーダーに任せることもあります。メールでの相談も、内容に応じて、他の理事や地域リーダーが対応するなど、協力し合っています。
会員以外からの相談も多く、詳細な情報を提供すると会員のメリットがなくなるという意見もありますが、インターネットが普及して今や情報を隠す時代でもないと考え、オープンな姿勢で対応しています。
どのような内容の相談が多いのですか
多種多様です。最近は医療の相談というより、同じ病気の子どもを持つ親御さんの声を聞きたい、先輩たちの話を聞きたいという相談が増えていると感じています。治療ガイドラインもでき、医療はある程度充実してきましたが、学校生活や受験、進学など、成長の過程でどういう問題に直面していくのか、不安に思う親御さんが、やはり多いようですね。
また、相談への対応についての反省や検討は理事会の中で行います。人それぞれ受け取り方が違うことはあるので、相談を受ける側の意思疎通も大切だと考えています。
サマーキャンプや集いでのピアサポートは、どのような形で行われるのですか
いすを丸く並べて円陣をつくり、お互いに顔が見えるようにして話し合います。
電話などでじっくり話を聞くことと、どちらがよいかは相談内容にもよりますが、子どもの成長に対する漠然とした不安などは、複数の体験談を聞いた方がよいのではないかと考えています。ただし、全体の場でピアサポートを行った場合は、後日、相談者がどのように受け取め、選択したかを確認することを心がけています。
サマーキャンプは、セカンドオピニオンを受けられる場をつくることと、同じ病気の子どもが少ないので、親同士で話をする場を設けることを目的に始めました。新しい会員には、本当に必要な場だと思います。成長した子どもたちがボランティアとして参加する姿を見ると、小さい子どもたちや親御さんも、将来について希望を持ち、安心できるようです。サマーキャンプで知り合った子ども同士も連絡を取り合ったり、一緒に遊びに行ったりと、子どもたちにとっても貴重な交流と成長の場となっています。
ピアサポートに関して、新しい取り組みはありますか
2011年は、東日本大震災の影響を考え、残念ながらサマーキャンプ開催を中止したので、ピアサポートの機会を別に設けようと、毎月の理事会と同時に定例会を開催することにしました。定例会は、話がしたい・相談したいという人は自由に来てください、というスタイルです。悩みに直面している人は、すぐにでも相談したい、誰かに話を聞いてほしいという思いが強いので、東京だけですが、毎月ピアサポートの場があるのは大切なことだと思います。
また、病気の理解の促進や最新情報の提供もピアサポートの一環と考えているので、印刷物の改訂などにも力を入れたいと思っています。
「あすなろ会」は、グループ運営や、電話相談についても一定のスタイルを決めるなど、活動に対する姿勢が明確ですね
相談を受ける私たちも、病気の子どもを持つ親の立場であり、生活や仕事がありますから、いつでも何時間でも電話で相談を受けることは不可能です。活動を長続きさせていくためには、こうした配慮は必要だと思っています。
理事9名による現在のグループ運営も試行錯誤しながら行ってきましたが、特に問題もなく続いているので、これでよかったかなと思っています。よく話し合うので理事同士のコミュニケーションも深まり、また、理事会が理事にとってのピアサポートの場となっています。毎月、顔を合わせて話すことで、私たち自身も救われている気がします。もっと定例会のような試みを充実させて、多くの人がピアサポートに参加できるようにしていきたいと思います。