未来をより良くするために役立てたいPPIの学び
医学研究・臨床試験を身近に捉え、医療への関心を高める取り組みとして注目される、患者・市民参画「PPI(Patient and Public Involvement)」。
PPIに関するセミナーなどに参加して、その学びをヘルスケア関連団体の活動に活かすリーダーも増えています。
今回はその一人、岩屋紀子さんに、PPIとの出会いや学び方について伺いました。
地域学習会でPPIを知り、学び始める
私は、子どもの病気をきっかけに患者団体の運営にかかわり、地域の難病患者支援に取り組んできました。日々の活動に追われる中で参加した中・四国学習会(2019年9月開催)で、PPIという言葉を知り、直感的に「私に必要なものはこれだ」と思ったのです。その際、手にした患者・市民参画(PPI)ガイドブック(AMED発行) ※1 には、医療者や研究者側の視点が網羅されていて、とても勉強になりましたが、では患者はどのようにアクションを起こせばよいのか、どうすれば私たちの声が届くのかと考えるようになりました。
そこで、もっと深くPPIを知りたいと思い「東京大学大学院薬学系研究科ITヘルスケア社会連携講座」を受講。さらに(一社)医療開発基盤研究所のオンライン講座「患者・市民のための人材育成コース」「組織リーダー育成コース」※2 を受講してPPIやリーダーシップについて学びました。
また研究者や企業を対象とした「開発基礎知識コース」では、当事者として講師を務めました。コロナ禍により、こうした講座がオンラインで受講できるようになったことも、私にとってはプラスでした。
PPIの学びの場
※1:国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)研究への患者・市民参画(PPI)
※2:(一社)医療開発基盤研究所(Ji4pe.tokyo)体系的な人材育成PEエキスパート学習コース
垣根を越えるための『共通言語』を手に入れる
PPIを学んでわかったのは、患者・市民が医療者・研究者と垣根を越えて対等に話し合うためには、医療的な専門用語などを『共通言語』として理解しておく必要があるということ。医療や薬剤に対して基本的な知識が必要だということです。共通言語があれば、対等に対話ができ、それによって共感が生まれ、情報交換や共有ができ、安心感も生まれます。今までは共通言語を知らなかったので、声も届けられなかったのだと気づきました。
また目的をもった団体運営や、医療消費者としての視点で医療経済を考えることも学びました。その後、学んだことを実践に活かして、オンラインカフェの開催や、治験に関するシンポジウムへの参加、臨床研究者や医学生との交流にも取り組んでいます。
未来をより良くするためにPPIを学んでほしい
難病対策などの医療制度の多くは、患者団体が連携して国に声を伝えてきた成果であり、団体の活動もPPIの一つといえます。私たちが医療に参画することは、将来的に誰かの役に立ち、社会貢献につながります。PPIは自ら未来をより良くする活動だと思います。
そもそも自分や家族の命を守るために、病気の原因や治療について学ぶことは必要です。オンライン講座などで体系的にPPIを学ぶことで、医療者や研究者との垣根が越えやすくなり、確実に声が届けられるようになるはずです。団体の中でも共通言語があれば、活動の目的を共有することができ、活動の広がりも期待できます。
PPIについての学びの場も広がっています。ぜひ多くの団体の皆さんにも学んでほしい。そして団体の中でも学び合い、活動に活かしてほしいと思います。
岩屋 紀子 さん プロフィール
難病サポートfamiliaやまぐち 代表。先天性血栓性血小板減少性紫斑病の会(先天性TTPの会)前事務局長。(一社)医療開発基盤研究所・事務局を担当。山口県在住。