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活動レポート第8回(2006)

活動レポート第8回(2006)

ヘルスケア関連団体ネットワーキングの活動の最近の傾向に、「患者から医療者にどんどん声を発する」、「患者と医療者が同じテーブルで話し合う」というものが見られます。これは、患者自身が受けている治療等に積極的にかかわり、より快適な生活を手に入るための活動だといえます。医療者側もその声に耳を傾けるとともに、率直な意見を出しています。お互いが分かり合えることから、さらなる良好な関係が生まれるものと期待します。

第19回日本老年泌尿器科学会シンポジウム in 東京(6月10日)
生活(くらし)から排泄障害を考える「排泄障害を持つ人と考える現状」

生活(くらし)から排泄障害を考える“をテーマに、第19回日本老年泌尿器科学会が6月9、10日に開催され、今回は、ヘルスケア関連団体の日本コンチネンス協会会長の西村さんが医師ではない女性として、初めての学会長を務めました。10日には排泄障害を持つ患者の会が、関連団体から3名を迎え、シンポジウムが行われました。ヘルスケア関連団体ワークショップがきっかけで知り合いになり、シンポジストとして参加したとのこと。シンポジウムの目的は、なぜ長く悩まれてから会の活動に行きついたか、医療者側がなぜ患者のニーズに応えられなかったのかについて、医療者側に知ってもらい、今後改善していくということです。日本コンチネンス協会理事の矢澤さんから「脊髄疾患の手術で左足麻痺と排泄障害が残り、自己導尿に出会うまで約40年間、溢劉性尿失禁を持ちつつ過ごしました。大学を経て、銀行づとめの社会人になったばかりが一番厳しい時期で、おしっこは近いのにトイレは遠い。9年前にコンチネンス協会に行き当たり、自己導尿を取り入れ、快適な状態に辿り着きました」。中枢性尿崩症の会代表の塩津さんから「病気とわかったのは9年前の長男出産時。尋常ではない尿量から判明。入院時、他人とは違った色と量の畜尿器を看護師さんにみられることがいやでした。病気だとわかってからは分かち合える友達もでき、充実した日々が送れるようになりました」。腎性尿崩症友の会事務局の神野さんから「25年前、第一子を設け、その長男が腎性尿崩症でした。次男も同じ病気です。治療は対症療法のみ。発症率は40万人に1人といわれ、日本では122名(平成13年)と稀少疾患です。この病気をみている医療者もすくなく、文献はほとんどありません。おねしょをさせるのがいいか夜中に起こすのがいいかもわからないのが現状です」。

医師、看護師からも医療現場での現状が語られ、今までの医療では、病気の情報、患者さんの心のケアに対応できず、患者さんの悩みを聞く姿勢も十分な形ではなかったとの認識が、参加した医療者に届いた会になりました。

■司 会
北九州古賀病院排泄管理指導室室長 岩坪暎二先生
日本赤十字看護大学教授 川島みどり先生

■シンポジスト
日本コンチネンス協会理事 矢澤康行さん
中枢性尿崩症の会代表 塩津直子さん
腎性尿崩症友の会事務局 神野啓子さん

難病相談・支援センター 九州サミット in 熊本(6月10日)
県境を越え、九州・沖縄がひとつになることを目指して

開設1周年を迎えた熊本県難病相談・支援センターの企画で、九州・沖縄8県の難病相談員が一堂に会し、難病相談・支援センター九州サミットin熊本が開催されました。九州在住の人は就労、結婚、就学など全体を通して九州圏内での移動が多く見られるため、全県での情報の共有化が急務となっています。サミット当日が鹿児島県難病相談・支援センターの開設翌日で、福岡のセンター開設4日目、また今年10月に開設予定の長崎や、まだ開設が具体化していない大分など進捗状況はさまざまながら、各県の地域特性、取り組み、問題点などが事例報告されました。その他、特定疾患患者を受け入れた企業に対し年間40万円の奨励金を出す佐賀、指定管理者制度にセンター自身が応募する就労支援や外部への活動も活発な熊本、昨年の立ち上げ時から関係機関へのあいさつ回りを徹底し連携を強調した宮崎、自主事業を株式会社化し税制の優遇措置のある特定NPOを目指す沖縄などの話、独自の事業や方針を持つセンターの存在は大きな刺激となったのではないでしょうか。

後半のシンポジウムでは、”予算がない“から脱却し既存の施設やネットワークの利用、難病団体や関係機関のなかからの人材発掘、だれでも出入りできる場所や環境とは…など、センターの設置や強化、就労支援に向けての具体的なノウハウやアイデアが出されました。状況に関わらず、すべての難病に関わる人々がセンターの必要性を痛感していること、そして大きな輪をつくるために協力しあえることを確認したサミットとなりました。

ヘルスケア関連団体ネットワーキング第3回九州地域学習会 in 熊本(6月11日)
本音を聞き、患者会・難病相談・支援センターのあり方を探る

「患者・保健師・医師の立場から、本音で語ろう」をテーマに33名の出席のもと開催されました。パネリストの発表から特に印象に残った”本音“をご紹介します。患者の中山さんは「患者は自分の病気についてもっと勉強するべき。そうすることで医者も患者に一目置くようになり意識も変わってくる。就労については、いきなり正職は無理。プライドがあるから働かず引きこもるよりも、ささいな仕事でも外に出て使ってもらおう。生きるのは役割があるから。生きる価値を考えよう」。また、熊本県の難病対策に尽力し患者会活動に協力的な保健師の松原さんは「保健所は患者に医療機関を特定して紹介することはできません。でも私は自己責任として言う。さらにその病院に私が電話で事情を説明してつなぎます。それは信頼関係があるからできること。保健師はデスクワークではなく、家庭訪問をして知り得たことを施策化するべき。ベテランでなくてもいい。若くてもハートのある人、技術の前にハートはあるか!?と保健師に問いたい」。さらに、患者の家族として患者会にも関わる医師の岡田さんは、「”自分たちのためにやっている“患者会は社会から共感を得にくい。一人の人間としてこの活動は世の中に必要だという意識が必要です。また、告知のタイミングを医師はいつも迷うものです。病名がわかると早く診療方針を伝えたいと焦り、告知方法を誤ることもあるのです。最善をつくしますが、医師もすべてが完璧とはいかない場合もあるのです」。

これらの本音を受けグループディスカッションが行われ、行政や医療機関のできないことをフォローしていく患者会や難病相談・支援センターの役割が議論されました。

■パネリスト
〈患 者〉中山康男/クローン病患者 熊本IBD会長 熊本県難病連絡協議会事務局長
〈保健婦〉松原久美子/熊本県水俣保健所 保健予防課主幹
〈医 師〉岡田稔久/くまもと発育クリニック院長 (社)日本自閉症協会理事