活動レポート第9回(2006)
ヘルスケア関連団体の地域学習会では、回を重ねるごとに目的が定まり、患者会から外へ向けての積極的な活動につながるようになってきています。また、北海道でも学習会が開催され、患者会の連携が全国的な広がりをみせています。連携を深めることで個々のことから会の方向性や地域性の問題までいろいろな意見が出て、それが行動になり、患者会にとっていい方向に進んでいると見受けられます。
第1回北海道学習会 in 札幌(7月22日)
北海道地区ならではの情報交換や、地域社会への提言を目指して
第1回学習会が実現
北海道は、広大な地に厳しい自然環境や過疎問題など、さまざまな課題をかかえています。そこで北海道学習会は、当事者や支援者などの立場を越えて問題点を共有し、医療や社会制度などについて情報交換を行い、地域社会に提言することを目指して発足しました。
学習会では、「情報を得たい、勉強したい」、「この場から新しいつながりを作っていきたい」、「しっかりした組織での連携を目指したい」、「それぞれの生活もあり、障がいもあるので無理をせずに長く活動を続けていきたい」などの意見があり、また、ハンセン病患者支援のメンバーからは「国が間違った施策をしたことを若い人に伝えていきたい」との発言があり、それぞれの立場によって、目指すものや考え方もさまざまであることもわかりました。今後の課題として、「発達障害や目に見えない障がいへの社会的支援」、「若年の障がい者の学習機会の問題」、「当事者にかかわる法的知識の問題」などが提案されました。今回は疾病当事者の参加が少なかったことから、「もっとさまざまなフィールドの人がいた方がよい」という意見が出され、次回は出席者それぞれが声をかけて参加メンバーを増やし、障がいや内部疾患、難病、慢性疾患の区切りを取り払い、当事者や支援者の立場を越えて相互理解を目指すことを確認しました。
VHO東北ヘルスケアネット
第7回東北学習会 in 仙台(7月15日)
「要支援者の視点から見た災害時の対応」についてグループ討議を実施
東北地方では近い将来、宮城県沖地震が起こる可能性が高いとされているので、災害時の対応は学習会発足当初より大きなテーマでした。今回は、新潟県中越地震の体験者や阪神大震災を経験した関西学習会のメンバーも参加して、具体的で活発な討議が行われ、最後に各グループの発表が行われました。また学習会の模様は、地元テレビ局の地域ニュースで放映されました。
■災害時の医療の確保
「自助努力として、自分の治療や薬は確実に把握し、つねに数日分の予備は用意しておくべき。しかし、用意していても持ち出せないなど自助努力としての限界もあるので、それを補うためのものを行政に対して必要なものは必要と訴えることが大切である」
■福祉避難所のあり方
「やはり福祉避難所は必要。福祉避難所については行政の対応が遅れている地域が多いので国庫補助で整備できるよう実現に向けて働きかけたい」
■避難所における食事への配慮
「要支援者にはさまざまな種類の食事が必要な場合があるので、地域にどのような患者がいて、どのようなニーズがあるかを把握する必要がある。国や行政に積極的に働きかけていく必要がある」
■地域のネットワークとその構築
「プライバシーの問題はあるが、災害支援を求めるためにはある程度の情報開示は必要。地域の状況に応じて団体で情報を共有し、ネットワークを広げるためにもそこから情報を発信するべきではないか」
第2回関東学習会 in 東京(7月9日)
「医療者に問題や現状を伝える方法」をテーマに、事例発表を行う
今回は「医療者に当事者がかかえる問題や現状を伝える方法」をテーマに、2団体が事例発表を行いました。まず、アレルギー児を支える全国ネット「アラジーポット」が発表。アラジーポットは、あらゆる機関や立場の人々と「よりよい医療」を目指し独立した連携作りを目標に、積極的に行政や医療者と関わってきました。その結果、国立生育医療センター研究所への共同研究員としての参加や、学会展示、患者向け診療ガイドラインの作成などにも携わるようになりました。専務理事の栗山真理子さんは、「患者会のイメージを自立、助け合い、社会への発信に変えていくチャンスであり、また変えていく必要がある」と訴えました。
次に、オストメイトの社会復帰と福祉向上のための活動および人工肛門、人工膀胱に関する普及や啓発活動を行う(社)日本オストミー協会が発表しました。障害者自立支援法により、ストーマ用装具が補装具から日常生活用具と定義されるという大きな問題に直面する中で、同会は顧問医などの協力も得ながら、「公共施設へのオストメイト対応トイレの設置要請」、「災害時の地方自治体によるストーマ用装具緊急支給の要請」、「看護と介護の協働体制の要請」などに取り組んでいます。常務理事の竹内恒雄さんは、「最近は医療者側に患者からの相談や要請に前向きに検討する動きがあるので、患者会側からもっと積極的に働きかけていくべきではないか」と述べました。
第8回関西学習会 in 大阪(7月8日)
回を重ね「模擬発表」を充実・発展へ
9団体17名に加え、北信越地方での地域学習会立ち上げの勉強のために、(社)認知症の人と家族の会、本部副代表理事の勝田登志子さんが富山から参加され、また全国膠原病友の会関西支部と交流があり、かつ患者会に理解のある医師として、NTT西日本大阪病院副院長の栗谷太郎先生を迎えて開催されました。
団体間の情報交換では各団体のトピックスなどを紹介。日本神経学会に患者会として初参加した「日本ハンチントン病ネットワーク」の中井伴子さんが、参加までの経緯、実際に参加して難しかった点、その他、さまざまな医師の反応などを発表しました。続いて「医学教育に患者の声を組み込む」をテーマに今回で7回目となる模擬発表へ。全前脳包症の会「天使のつばさ」の岡本裕実さんが1万6千人に1人という希少難病を取り巻く現状や体験談を発表しました。岡本さんの「自分の発表には表現力が足りない」という反省に、「自身の体験を思い出し詰まったり沈黙してしまう。そうなってしまうことでも相手に伝えるものがある。つらさを素直に出してもいいのでは」という意見も。また医者の心ない対応に栗谷先生は、「医者はインタビュアー。コミュニケーションが第一なのに日本ではその教育が遅れている」と指摘しました。毎回さまざまな議論のもとブラッシュアップされていく模擬発表ですが、現在、制作中のホームページでは「出前講座(仮題)」としてコンテンツを設け、関西学習会として依頼を受ける体制が進みつつあります。
医師、看護師からも医療現場での現状が語られ、今までの医療では、病気の情報、患者さんの心のケアに対応できず、患者さんの悩みを聞く姿勢も十分な形ではなかったとの認識が、参加した医療者に届いた会になりました。