活動紹介 第37回(2014)
地域でのネットワークを広げ、情報やノウハウを共有し活動を充実させていこうとする、各地での取り組みをレポート
第22回 北陸学習会 in 富山(2014年9月6日)
「伝える力」をテーマに、新しく模擬講演に取り組み、全員で検討する
第22回北陸学習会が富山県の高岡市生涯学習センターにおいて開催されました。前回の学習会を踏襲し、「伝える力をつける ~社会に信頼されるヘルスケア関連団体となるために~」をテーマに設定。今回は医療・福祉関係者、看護学生を対象に想定し、患者の現状や患者団体の活動を伝えるための模擬講演を行いました。
最初に全国パーキンソン病友の会 石川県支部の伊東正夫さんが、発症時の症状の気づき、医師の告知に対して求める配慮などについて発表しました。その後、2グループに分かれて内容を検討する中で、「パーキンソン病の特徴のひとつである、語尾がはっきりしないことを講演前に伝えてはどうか」「対象者へのポイントを絞り切れていない」「人柄を感じさせる訥々とした語りは好感度が増す」などの意見が出されました。
続いて富山IBDの岡島靖幸さんが、潰瘍性大腸炎の症状、治療の選択肢、入退院と手術を繰り返す中での心身の苦しさや、入院中に富山IBDで自分にできることがあることへ気づいたことなどについて、プレゼンテーションソフトを使い発表しました。その後、発表に対してグループ検討に入り、「病気の説明に時間を取りすぎている」「治療だけでなく心のケアの大切さを盛り込むと良い」「暗くなりがちな話を明るい雰囲気で聞かせたのが良かった」など、甘辛取り混ぜた感想が挙がりました。 次回からも模擬講演を継続することを了承し、講演時間や対象者の設定(一般市民、一般の高校・大学生、企業の労働組合等も想定)などを検討。終始、活発な発言と笑い声の絶えない学習会となりました。
第30回 関東学習会 in 東京(2014年10月5日)
相談事例を題材に取り上げ背景を深く掘り下げた討論を実施
第30回関東学習会が、東京のファイザー株式会社本社で開催されました。今回は、「ピアサポートの相談事の背景要因を探る」をテーマにグループ討論を行いました。自分や仲間の体験を題材に、相談を受けた時にどのような行動がとれるのか考えを出し合い、視点の広がりを持てるようになろうというのがその目的です。
グループ討論の題材として取り上げたのは、遺伝性神経難病の患者団体でのピアサポート事例です。「相談者の一番の悩みは何か」「何を希望しているのか」「現実と希望の落差の背景にあるものは何か」「相談者が前に進むにはどう助言すればいいのか」「相談以外の方法で対応すべき課題はあるか」など、相談の解析が行われ、どのような働きかけが有効なのかが話し合われました。ピアサポートとして相談に対応する“聴き方や答え方のスキル”より、相談者の立場になり“相談者が患者団体に何を求めているのか”“何を期待しているのか”“どういう気持ちだったのか”を探り、深めていくディスカッションが行われました。また、それぞれの所属団体でのピアサポートや相談、団体運営などの現状や課題についての意見交換もありました。
全体討論では、メール、電話、直接対面での相談対応が取り上げられました。メールでの相談は、相談を受ける側は対応しやすいが、顔が見えないので理解が深まりにくい。電話や対面での相談では、コミュニケーションは取りやすいが相談を受ける側の負担が重いなど、それぞれメリットやデメリットがあることも話し合われました。今回、事例を提供した団体からは、電話での相談対応は会員に限っていること、メール相談については複数の役員で検討してから回答していることなどの補足説明がありました。
学習会を総括して、参加者からは「問題が掘り下げられて、真の問題点が見えて良かった」「自分に引き寄せて考えることができた」「人の心の裏側を掘り下げる経験が貴重だった」などの感想が述べられました。初参加したメンバーも含めて積極的に発言し、発表する姿勢も印象的でした。
第31回 関西学習会 in 大阪(2014年11月2日)
ワークショップ参加者からの報告を受け分科会発表の内容について話し合う
第31回関西学習会が、大阪市のたかつガーデンで開催されました。今回は、去る10月25日・26日に開催された第14回ヘルスケア関連団体ワークショップの報告会として、関西学習会から参加した4名が、感想と分科会でのグループ発表の内容を報告しました。
「協働」というテーマで、医療、就労支援、地域、地域の災害対策の各分野において、患者団体はどんなかかわり方ができ、より良い環境を築いていけるのかについて、全国の患者団体のリーダーが話し合った今回のワークショップ。参加者からは「最初は漠然としたイメージだったが、話し合う中で具体的にできることが見えてきた」「どうすれば子どもたちが普通に就学できるのか。学校をはじめ地域と協働するには、内部疾患でも精神障がいでも、疾患の違いは関係ないと思った」という感想が発表されました。グループ発表の報告を聞いた後、今回の学習会参加者からは「災害対策での個人情報保護は自治体によって温度差が大きい。“受援力の育成”という言葉から、病気をオープンにする必要性について考えさせられた」「協働できていることや、新たに協働できるケースがあることへの気づきがあり、自分の団体に持ち帰って話し合いたい」などの意見が出ました。
後半は、関西学習会が取り組む模擬講演を基に作成を進めている「講演のポイント」の見直しと活用法について話し合われました。「命の授業」「遺伝」「小児慢性疾患」など、各々がどんな内容を話せるか、講演のカテゴリーなどを把握するために、メーリングリストを使ってアンケートを実施し、次回学習会では講演者リスト一覧をまとめていくという方向性が決まりました。
第8回 四国学習会 in 高知(2014年11月23日)
多発性硬化症、膠原病の2つのテーマによる模擬講演を通して全員で討論を行う
第8回四国学習会が、高知市の高知市文化プラザで開催されました。今回は模擬講演をテーマに設定し、まず徳島多発性硬化症友の会の高津正一郎さんが「私の病気」について、続いて全国膠原病友の会 高知支部の竹島和賀子さんが「子どもが難病と言われて」と題して講演を行いました。
聞く側は講演中にそれぞれの感想を付箋にメモ書きし、終了後にボードに貼り、その後、進行役を設定して全体討論を実施。まず、講演者自身が感想を述べました。高津さんは「話したいことを箇条書きにして、発表用スライド1ページにどれだけの時間を要するかペース配分を考えながら作成していたが、やはり人前で話すと、伝えたいと思っていたことをすべては話せないものだと実感した」と感想を述べ、また、竹島さんは「疾患説明や患者団体活動についてよりも、親子の思いに重点を置いた構成にした。予定していた時間よりも早く終わり、言葉が足りなかった」と講演の難しさを語りました。
参加者からの感想では「多発性硬化症の症状のひとつである視覚障害について今まで見えていたものがどんな見え方に変わるかを写真で紹介したのはとても効果的だった」「スライドには、子ども自身の言葉をストレートに表記した方が効果的ではないか」「親と子どもの心の葛藤が伝わってきた」「2つの疾患ともに複雑で説明に工夫が必要」などが挙げられました。その後のまとめでは、時間を守る、伝えたい力点を整理するなどの講演時の基本的なポイントを確認。次回も引き続き模擬講演を行い、講演の対象者を看護・福祉系の学生に絞ることを決定し、閉会しました。
第11回 東海学習会 in 愛知(2014年11月30日)
中央世話人の講演などを通じてVHO-netの活動の原点を確認し 学習会の今後の方向性を話し合う
第11回東海学習会が、名古屋市のウィルあいちで開催されました。東海学習会は2007年の発足当初から会員の多くが難病連に所属し、各県の難病連と協力しながら運営をしてきたという特徴があります。会を重ねるうちに難病連とVHO-netの目的に対する認識が曖昧になっているのではという観点から、今回、全会員にVHO-netの活動を改めて理解してもらうことをテーマに設定。
まず、VHO-netの中央世話人であり、公益社団法人やどかりの里の増田一世さんが「VHO-netの歩み」と題した講演を行いました。VHO-netの誕生から、その歩みの中で大切にしてきた思い、VHO-netも編集にかかわった書籍『患者と作る医学の教科書』や、毎年開催されているヘルスケア関連団体ワークショップなどの成果、会則の改定などによるさらなる継続・発展への姿勢を語りました。続いて、ファイザー株式会社の喜島智香子さんが、企業の社会貢献活動として、企業と患者・障がい者団体のパートナーシップの確立を目指すVHO-netへの取り組みについて解説。その後、2グループに分かれてワークショップが行われました。
話し合いの中では「これまでの学習会を通じて他の患者団体と交流でき、ネットワークが広がった」「難病連には加入していないので学習会への参加には違和感があったが、今日の話し合いで理解が深まった」「難病連ではできないこともVHO-netなら可能で、その逆もあることに気づいた」などの前向きな意見が多く出されました。 原点に立ち返り、VHO-netの活動目的を再認識する機会を得て、有意義な学習会となりました。
第24回 沖縄学習会 in 沖縄(2014年12月13・14日)
ピアサポートの成功・失敗事例の内容を時間をかけてじっくりと精査 2015年度での成果物完成を目指す
第24回沖縄学習会が、那覇市のかんぽの宿で、1泊2日の拡大学習会として開催されました。今回は第18回学習会から計5回の学習会で取り上げてきた「ピアサポートの成功・失敗事例」を、事例集としてまとめるための作業が行われました。
事前に、運営委員と沖縄国際大学教授で臨床心理士の上田幸彦さんが9つの事例に絞り込み、個人が特定できないように相談内容をフィクション化した文章と、ピアサポートのポイントをまとめたものを用意。2グループに分かれて各事例の内容を検討しました。疾患名・職業・年齢を入れるべきか、内容や表現の修正点、ポイントの追加や削除などについて話し合い、より汎用性の高い事例集に仕上げるための精査を行いました。思いのほか、時間を要し、2日間で検討できたのは各グループ2事例ずつの計4事例でしたが、それだけ難しく時間がかかる作業であることを実感しました。
翌日は修正した原稿をプロジェクターで映し、どの部分を、なぜ修正・追加・削除したのかを発表し合い、さらに取捨選択し、文言を選ぶなど全員で検討を行いました。ここでも時間を要し、結果的に、ほぼ完成形に近づけることができたのは2事例でした。しかし、議論をするというプロセスを経て、それぞれの患者団体で相談業務に即活かせるような事柄も含めた多くの気づきがあり、それを全員で共有できたことなど、たくさんの成果を得ることができました。
今後も残りの事例検討を続け、成果物として仕上げ、しかるべき人や機関に配布することを2015年度の目標に決定し、充実した2日間を終えました。