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活動紹介 第38回(2014-2015)

活動紹介 第38回(2014-2015)

地域でのネットワークを広げ、情報やノウハウを共有し活動を充実させていこうとする、各地での取り組みをレポート

第25回 東北学習会 in 仙台(2014年12月20日)
経験発表とグループ討議で社会資源の活用についての知識と思いを共有する

2014年12月20日、仙台シルバーセンターで第25回東北学習会が開催されました。2015年1月1日施行の難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)による新たな難病対策が始まる機会であることから、「私が病気になったときにどんな資源を活用したか」をテーマに、改めて難病にかかわる社会資源について学ぼうという試みでした。

学習会ではまず、福島県難病団体連絡協議会 副会長の渡邊善広さんが発表。渡邊さんは発病してひとりで途方に暮れていた“点”の状態から、仲間と膠原病友の会 福島支部を結成して“線”でつながったといいます。さらに難病団体連絡協議会に参加することで疾病の垣根を越えて“面”になり、JPA(日本難病・疾病団体協議会)や VHO-netに参加することによって、さらに活動に厚みが増して立体的になっていきました。こうしてつながった各団体の存在や活動が自分にとっての社会資源であったと述べました。次に、仙台ポリオの会の小関理さんが社会資源を活用してきた経緯を話しました。小関さんは違う病気の難病患者ですが、知人が仙台ポリオの会の会長だったことから同会に入会し、ともに活動しながら障害者手帳や障害年金などについて学び、活用してきたとのことでした。

その後、2人の発表を受けてグループディスカッションが行われ、グループ発表では、「医療・介護・福祉の制度について確認しておきたい」「自治体によって制度等が異なることにどう対応するか」「社会資源の活用をアピールする働きかけが必要ではないか」「2016年施行の改正障害者雇用促進法、障害者差別解消法を活用しよう」などの意見が挙がりました。

最後に中央世話人の阿部一彦さんが「社会資源について学ぶとともに、地域格差を解決するために、ネットワークをつなぎながら社会や行政に発信していこう」と総括しました。社会資源の知識に加えて、ともに活動してきた仲間の経験発表を聞くことで、改めて病気や障がいの垣根を越えてつながることの大切さが実感でき、有意義な学習会となったようです。

第32回 関西学習会 in 大阪(2015年3月28日)
講演のポイント集をさらに検討・精査し成果物に近づける作業を行う

第32回関西学習会が、大阪市のたかつガーデンで開催されました。作成を進めている「患者・家族が語る講演のポイント集」で、これまで議論してきた内容を整理した書類をホワイトボードに映しながら、全員で検討を行いました。その結果、ポイントを「依頼を受けた時」「原稿や発表スライド作る準備段階」「講演当日」の3つのカテゴリーに分ける、講演をする側が気をつけるポイントだけでなく、聴く人(講演対象者ではなく学習会のメンバー・関係者)のチェックリストとしても機能するようにしたいなどの意見が出ました。

さらに、項目や文言のブラッシュアップ作業を続け、まとまってきたものを運営委員が持ち帰ってフォーマット化し、次回学習会の模擬講演で試用することになりました。講演ポイントのランダムな項目出しから始まり、取捨選択、検討を十分に重ね、成果物として徐々にでき上がりつつある感触を得ました。

その後、関西学習会の患者講演者リストを作成するために、講演可能な分野、これまでの実績、講演対象者などの記載項目について話し合いました。

また、1月24日・25日に開催された「2015年度VHO-net地域学習会合同報告会」に参加した運営委員から、各地域の活動が紹介され、関西学習会が取り組んできた模擬講演に他の地域学習会が注目し、プログラムに取り入れるケースが増えていることが報告されました。

第31回 関東学習会 in 東京(2015年3月29日)
患者団体のリーダーとして相談者の背景を考え、歩みを促す相談のあり方を考える

3月29日、東京のアポロ・ラーニングセンターで関東学習会が開催されました。前回に引き続き、ピアサポートの相談事の背景要因を探り、相談事を多面的にとらえる視点や、相談してきた人を受け止める視点について深く考え合う取り組みが行われました。

今回取り上げたのは、希少難病の患者団体「CAPS患者・家族の会」での相談事例です。CAPS(クリオピリン関連周期性発熱症候群)は、おもに乳幼児期に発症し、発熱や激しい炎症を繰り返す自己炎症性疾患で、国内患者数が50数名ほどの非常に希少な難治性の病気です。相談事例は「病児の学校生活での不安について、学校側にはどのように働きかければ良いか」というもので、実際に相談を受けたCAPS患者・家族の会の戸根川理登さんが相談内容を説明。「制度などで事務的に解決法を伝えるのではなく、相談者が自ら少しずつでも進むためにはどうすれば良いのかを考えてほしい」と主題を述べました。これを受けてグループディスカッションでは、相談事例の背景要因を探り、相談者が最も困っていることはなにか、また自分が相談を受ける立場なら、次の一歩を進めるためにどのような働きかけをすれば良いのかが話し合われました。

ディスカッション後、「母親からの相談だが、父親はどう考えているのか」「学校側に働きかける場合、地域の保健師に協力してもらうのはどうか」「相談者が孤立感を感じないように交流の場に誘ってはどうか」「自分も同じような状況であったが、患者団体の活動に参加して、社会とつながることができた」などの意見が挙がりました。参加者の多くは、日頃、相談事を受ける立場で活動しているため、単に解決法を探るだけでなく、相談者の思いを受け止め、相談者が自ら次の一歩を歩み出せるように導くために自分ならどう対応するかを、自らの活動に引き寄せて話し合うことができたようです。

団体でのピアサポートの質を高めるためにも、こうした取り組みは有意義であることを確認し、今後も相談事例の検討を通して視点の広がりを学び合うこととなりました。

第25回 沖縄学習会 in 沖縄(2015年3月30日)
ピアサポートの成功・失敗事例からの学びをまとめた事例集完成に向けてさらに検討を行う

第25回沖縄学習会が、那覇市ぶんかテンブス館にて開催されました。前回に引き続き、沖縄学習会がこれまで続けてきた「ピアサポートの成功・失敗事例」での学びを事例集としてまとめるための作業を行いました。

最初に事例集作成の目的とこれまでの流れを説明し、全員で確認。続いて、運営委員と、アドバイザーとして参加している沖縄国際大学教授で臨床心理士の上田幸彦さんが事前に相談内容とポイントをまとめた3事例について、プロジェクターを使って全員で画面を見ながら順次検討し、文言や表現の言い換え、追加・削除などの修正をその場で加えていきました。この事例集で大切しているのは、個人が特定されないように年齢や疾病などを含めてフィクション化すること、そして失敗例の原因や成功に導くコツ、成功例ではなにが功を奏したのかをポイントにまとめることで、だれでも使いこなせるようにすることです。「友だちになりすぎてしまった時の対処の仕方」「メールでの相談の難しさ」「傾聴と情報提供のバランスの取り方」「ピアサポーターの主観的な意見や感想、想像は入れるべきか」などの、事例に出てくる問題点や疑問点について、参加者たちはピアサポート経験に基づいた意見やそれぞれの団体としての方針、対策などを発表し、とても活発な討論がなされました。

今回も予想以上に時間がかかりましたが、時間をかけてでも、さまざまな団体のピアサポーターの声や体験が織り込まれている事例集にしていくことを目指し、次回の学習会でさらに完成に近づけようと結びました。

第9回 四国学習会 in 徳島(2015年4月12日)

第9回四国学習会が、徳島県立障がい者交流プラザで開催されました。前回に引き続きテーマを模擬講演に設定し、対象者を看護・福祉を学ぶ学生と想定して行いました。

まず徳島県脊柱靱帯骨化症友の会の近藤力さん(患者当事者)、続いて中枢性尿崩症の会の代表責任者(患者家族)の2人が講演を行いました。聞く側は付箋に感想を随時メモ書きし、その後のワークショップで「講演の準備」「講演の内容」にそれぞれの感想を分類して、検討が行われました。準備についてはおもに発表スライドの作り方に焦点が当てられ、近藤さん自身が「伝えたいことをすべて入れると発表スライドが37枚にもなった。削ることができず時間を超過し、構成の難しさを実感した」と述べました。近藤さんの発表に対し「手術後の状態を伝えるために、空き缶の小道具を使ったのがとても良かった」「学生対象なので疾患説明を短くしてはどうか」「告知から手術、リハビリ、社会復帰までの心のあり方が学生にとって参考になる」といった感想が挙げられました。また、中枢性尿崩症の患者家族の講演では、「イラストを多用した発表スライドがわかりやすい」「日本では未承認の薬の申請・承認や特定疾患の認定へのかかわりについてなど、患者団体の役割・成果の紹介が良かった。また、それに対する関係者への感謝も述べられ、学生にとっても励みになる」などの意見が交わされました。その後のまとめでは「患者の立場に立った看護や福祉を学生に伝える大切さ」を確認しました。

今回の講演では、当事者と患者家族、成人後の発症と小児期の発症など、2つの立場での体験や悩みの相違についても多くの気づきがあり、有意義な学習会となりました。

第22回 九州学習会 in 佐賀(2015年4月19日)
「自分たちの共通の課題を見出す」をテーマに、学習会の原点に立ち返り討論を行う

佐賀県の鳥栖市民文化会館で、第22回九州学習会が開催されました。約1年半ぶりの開催となった今回のテーマは「自分たちの共通の課題を見出す」。さまざまな団体が多彩な視点で情報や意見を交換し、ネットワークでつながるという、学習会の原点に立ち返った企画となりました。

まず、参加団体がそれぞれの課題を抽出し、その中の5団体が活動内容や課題について15分間ずつの発表を行い、その後、4グループに分かれ討論が行われました。財源やマンパワーの不足、新会員や若い会員の減少、活動内容のマンネリ化、就労問題、社会への啓発、制度の改革、行政や医療など他の機関との連携…。それぞれの課題が生まれる要因や背景は何か、どんな解決策があるのか。これまでに何度も議論されてきた課題もありますが、それぞれが経験を積み、実際に上手くいった事例やアイデアを出し合い、今だからこそ解決できること、あるいは、より解決が難しくなっていることなど、団体のリーダーとしての見地から多様な意見が検討される場となりました。

まとめ発表では「会員数の増減より活動の継続が大切」「疾患、地域の枠にとらわれない緩やかな連携があってもいい」「活動に積極的ではない会員と役員との意識の差を埋める必要はあるのか。努力はするが、そこに全力を注ぐのはどうか」「団体活動は、日々の喜びや安らぎを共有できる仲間がいてこそ。そこから活力が生まれる」などの感想や意見が挙げられ、この学習会で得たことをそれぞれの団体に持ち帰り活用していこうと結びました。