活動紹介 第43回(2016)
地域でのネットワークを広げ、情報やノウハウを共有し活動を充実させていこうとする、各地での取り組みをレポート
第12回 四国学習会 in 高知(2016年8月27・28日)
望ましい電話相談についての検討と模擬講演を通して2日間にわたる討論・情報交換を行う
第12回四国学習会が高知市文化プラザで、1泊2日の拡大学習会として開催されました。
1日目は第10回学習会から継続しているテーマ、ピアサポートにおける望ましい電話相談について、運営委員が事前に整理した事例に沿って検討。就労面では「病気を抱えながらも仕事を続けられるか」、福祉面では「難病患者の福祉制度が知りたい」「介護保険を利用したい」「障害者手帳を申請したい」などの相談にどう対応しているか。徳島・高知・愛媛・広島からの参加者らはそれぞれの地域の県・市の保健所や病院などからの支援情報、地域包括支援センターの利用方法、社会保険労務士や難病認定医の対応例などについても意見や情報の交換を行いました。相談に対してどこまでかかわるかについては、相談員は関係機関への橋渡し役と考え、患者自身が制度などを学ぶように方向づける、相談員のスキルアップのためにも話をじっくりと聞き、経緯を見守るなどの意見が出ました。
2日目は、模擬講演とその検討にテーマを移し、とくしま難病支援ネットワークの山下洋子さんが「私のリウマチと患者会」、全国パーキンソン病友の会 高知県支部の十万精一さんが「パーキンソン病について〜特有の症状〜」と題して模擬講演を行いました。参加者からは「それぞれの疾患の具体的な困りごとがよく伝わってきた」「疾患説明を簡潔にし、体験談を増やしてみては」などの感想が出ました。また講演者を2名にしたことで時間的にタイトとなり、深い議論に至らなかったとの反省点も挙げられ、2日間の学習会を終えました。
第36回 関東学習会 in 東京(2016年9月18日)
スキルアップを目指して模擬講演とグループワークを実施
東京のファイザー株式会社 オーバルホールにて、第36回関東学習会が開催され、模擬講演や講演のスキルアップを目的とした取り組みが行われました。
まず、澤藤充教さん(全国脊髄損傷者連合会)が、医療関係者を対象に想定し、脊髄損傷の理解を深めることを目的とした模擬講演、山谷佳子さん(国立がん研究センター)が、医学生を対象に想定し、20代のがん体験についての模擬講演を行いました。澤藤さんはパラリンピックの話題を導入部分に取り入れ、また山谷さんは、医学生に病気を自分に引き寄せて考えてもらうためのエクササイズを講演に組み込むなど、それぞれに工夫された発表でした。
次に羽田明さん(千葉大学大学院医学研究院)が、患者講師を依頼する立場から、実際に患者の講演を聴いた医師に対するアンケート結果を紹介。羽田さんは、医療関係者も患者の話を聴きたいと思っているので、伝えたいことを確実に伝えられるように、語りや発表のスキルアップを図ってほしいと述べました。
その後、関西学習会が作成した『「患者・家族が語る」講演のポイント チェックリスト』も参考にしながら、模擬講演や発表についてグループでの話し合いが行われました。グループ発表では、「澤藤さんの発表は導入部で惹き込まれた」「山谷さんの発表で、自分が病気になったらどうするかと考えてもらう試みが良かった」「当事者が説明すると病気の全容がイメージしやすい」「一般的な話より、本人の体験をふまえた話の方が印象に残る」などの意見が紹介されました。羽田さんからは、「最初にアジェンダ(話の流れ)を提示すること、対象者を意識すること、時間配分に気をつけること、具体的なエピソードを盛り込むことなどが発表のポイント」とのアドバイスもありました。
最後に、今後も参加者それぞれが模擬講演や、グループワークで進行役や発表などの経験を積み、伝える力をスキルアップしていくことを確認して学習会終了となりました。
第26回 北陸学習会 in 石川(2016年10月1日)
模擬講演を通して「伝える力」を検討 各団体のピアサポート活動についても発表と話し合いを行う
第26回北陸学習会が、金沢市の近江町交流プラザで開催されました。
2014年から継続して取り組んでいる「『伝える力』をつける 〜社会に信頼されるヘルスケア団体となるために〜」のテーマのもとに、全国パーキンソン病友の会 石川県支部の伊東正夫さんが、以前に石川県立看護大学の学生に対して講演した発表スライドを使って模擬講演を行いました。パーキンソン病を自分の「パートナー」と擬人化し、発症時の症状や進行、服薬やリハビリの過程を、パートナーとの「馴れ初め」「交際」「本性の露呈」「接し方(注意点)」などに分けて紹介。これは実際の講演時に看護学生たちからも反響があり、今回も「ユーモアのある表現で疾患との距離が縮まった」などの感想が出されました。また、服薬の種類の多さは、文字で書くよりも写真にした方がより伝わりやすいのではないかといった検討が行われました。
その後、前回の「VHO-netが考えるピアサポート5か条」の議論をふまえ、各団体のピアサポート活動を発表。その中で、団体のホームページに音声読み上げ機能を付加したいといった課題や、地域が広く直接会える機会が少ない、閉鎖的な地域特性があり新しい情報が入りにくいなどの問題点が出されました。また、団体の近況報告では、ある大学病院の医師の呼びかけによる、患者と医療スタッフの懇談会に参加したところ、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・作業療法士らとの意見交換が非常に有意義であったという報告があり、多様な情報を得られた学習会となりました。
第29回 沖縄学習会 in 沖縄(2016年10月29日)
ピアサポートの相談事例を検討 これまでの8事例をまとめ、今後の活用について話し合う
第29回沖縄学習会が那覇市保健所で開催されました。今回は自己紹介後、昼食をとりながらの交流からスタート。和やかな雰囲気の中、午後からは、2012年から取り組んできたピアサポートでの相談事例の検討を行いました。
今回の事例のタイトルは「つい言ってしまう正論」で、難病がある上にリストカットをする娘の対応に悩み、母娘で相談に来たというケース。「こんなことをしてはダメだよ」と正論だけを言い、なぜそのような行為に及ぶのかという娘の気持ちに寄り添うことができなかった相談員の葛藤が記されていました。参加者はそれぞれの団体での経験をふまえて、「自分の考えを押しつけない」「相談者は答えを求めているのではなく、一緒に考えてほしいのでは」「母と娘は個別に相談を受けるべき。その方が本音を言える」など、さまざまな意見が出ました。
今回の事例検討をひと区切りとし、沖縄学習会ではこれまで精査してきた8つの事例を事例集としてまとめることになりました。後半はそれをどのように活用していきたいかを検討。「会員には公表せず、相談員のみで共有する」「新しく相談員になる人、なりたい人に引き継いでいきたい」「設立間もない患者団体にとって有効な資料になる」などの意見が挙がり、また、中央世話人で横浜市立大学医学部看護学科 教授の松下年子さんは「相談のエッセンスがコンパクトにまとめられている。教材としても使える可能性がある」と語りました。VHO-netのホームページでの公開も視野に入れつつ、事例集の完成を目指すことになりました。
■検討してきた相談事例のタイトル
●継続して関わることの大切さ
●手術に悩む患者のサポート
●友人? ピアサポーター? 私はどっち?
●メール相談の難しさ
●もし、電話に出ていたら…
●共感って、どこまでやるの?
●教えたがるピアサポーター
●つい言ってしまう正論
第29回 東北学習会 in 仙台(2016年11月3日)
医療関係者や行政との関係づくりから 社会資源としての患者団体の役割を考える
2016年11月3日、仙台市シルバーセンターで第29回東北学習会が開催されました。
今回は社会資源の活用をテーマとし、まず、金子光宏さん(NPO法人 タートル)が、団体の活動と行政、医療とのかかわりについて発表しました。タートルは、視覚障害のある人が安心して働ける環境づくりを目指す団体で、金子さんは、「障害者差別解消法が施行され、行政も変わろうとしている。当事者と行政とのより良い関係をつくるチャンスだと思う」と述べました。次に、池田久美子さん(患者会ピンクのリボン)が、患者団体やVHO-netの活動を通して感じたことや学んだことを発表。
「多くの出会いや活動が、自分自身を成長させ生き甲斐となってきた。東北学習会での話し合いそのものも社会資源になり得ると感じている」と語りました。講演を受けての質疑応答では、就労や職場復帰の際の体験談や苦労を語り合う姿も見られました。
続いてのグループワークでは、当事者にとって身近な社会資源である患者団体のあり方を考え、医療者や行政とどのように関係づくりを進めていけば良いのかが話し合われました。グループ発表では「行政の仕組みを知ることから始めよう」「行政に対して理解を深めてもらえるようなデータや資料を提供して説得しよう」「当事者になっても諦めず、就労を続ける覚悟が必要」「医療関係者も活動に誘い、生活の様子を知ってもらおう」「次世代の患者のことを考えて行動していこう」などの意見が紹介されました。
最後に、東北学習会担当の中央世話人である高本久さん(全国パーキンソン病友の会)が、「和やかな雰囲気の中での有意義な議論や情報交換が印象的だった」と感想を述べ、また東北福祉大学 教授の渡部純夫さんが「みなさんはリーダーとしてほかの人を助けながら一緒に生きている。その役割を果たすことがみなさんの力にもなっていると感じる。自信をもって進んでいただきたい」と総括。学びをそれぞれの団体に持ち帰り、役立てていくという目的を改めて確認して、学習会を終えました。
第37回 関西学習会 in 大阪(2016年11月12日)
「ピアサポート5か条」について意見交換し、エンパワメントの場に
大阪市の福島区民センターにおいて、第37回関西学習会が開催されました。
まず、2016年10月15・16日に開催された「第16回ヘルスケア関連団体ワークショップ」に参加したメンバー6名から、討論の内容や感想が報告されました。
続いて関東学習会のメンバーである、日本オストミー協会 横浜市支部の山根則子さんが講演。山根さんは「信頼されるピアサポート・プロジェクトメンバー」のひとりとして、「VHO-netが考えるピアサポート5か条」の制作に携わりました。5か条は具体的にどのようなことを示唆しているのか、ストーマ(人工膀胱・人工肛門)を装着しているオストメイトならではのピアサポートを、団体の活動を通して紹介しました。たとえば、5か条①「語り合い・支え合う関係を築き、互いのエンパワメントを実現する」では、体験懇談会などで気兼ねなく語り合う場をつくり、共感できる関係を築くこと、5か条②「自分たちの活動の内容や体験的知識を社会に向けて発信する」では、団体の働きかけによるストーマ専門ナースやオストメイト対応トイレの実現、病院内での患者サロンの開設などについて語られました。
意見交換では、「5か条に沿って具体的な活動例が挙げられ、実践につなげていくイメージがつかめた」「“しんどさ”の分かち合いはピアサポートならでは。ただ行政や専門職との領域の違いを認識し、患者団体としてのピアサポートを意識していくことが大切」など多様な意見が交わされました。四国学習会からも徳島多発性硬化症友の会の高津正一郎さんがオブザーバーとして参加しており、「関西のような多様な患者団体の参加を、ぜひ四国でも目指したい」と述べました。地域学習会の交流によって、それぞれがエンパワメントした学習会となりました。
第15回 東海学習会 in 静岡(2016年11月26日)
当事者と作業療法士による2つの講演を通して、さまざまな議論や交流を行う
第15回東海学習会が浜松市のアクトシティ浜松で開催されました。
今年度のテーマである「『お互いを知り、つながりを深めよう』〜それぞれの疾患や患者会活動を理解しあう『交流と学び』〜」に沿って、まず午前には、全国心臓病の子どもを守る会 長野県支部の小岩井順子さんによる30分の模擬発表が行われました。先天性の心臓疾患の子ども・家族を支援する立場であると同時に、自身も大人になった先天性心疾患患者として就学、結婚、出産などのライフステージ移行による課題に直面し、どのように病気と向き合う力や生きていく力を培ってきたかが語られました。質疑応答では、小児期に発症し成人へと移行するトランジション(キャリーオーバー)について、成人ならではの症状に対する医療、薬の進歩、行政の制度の見直しなど、疾患の違いを越えて活発な意見や情報交換が行われました。
午後は、聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部 教授の田島明子さんが「『障害の社会モデル』の時代へ〜障害を持つ人の人権とリハビリテーション(作業療法)』と題して講演を行いました。作業療法士として、職場で普通に使われる「障害受容」という言葉に疑問を感じ、研究テーマとして取り組んできたことや、作業療法士は優位的立場で障がいを受容できている人・受容できていない人を区別しているのではないか、社会の仕組みもそのようにつくられているのではないかなどの見解を発表しました。その後、4グループに分かれ、2つの講演を通しての印象的なキーワードを出し合い、議論が行われました。
第25回 九州学習会 in 佐賀(2016年12月17日)
ワークショップのテーマを共有し「私の目指すリーダーとは」について議論する
第25回九州学習会が佐賀県難病相談支援センターで開催されました。今回は、2016年10月15・16日に行われた第16回ヘルスケア関連団体ワークショップのテーマ「私の目指すリーダーとは」を、地域学習会で共有し議論するという企画でした。
まず、くまもとぱれっと(長期療養中の子どもと暮らす家族の会)世話人の谷口あけみさんが講演。熊本難病・疾病団体協議会の副代表など複数団体のリーダー的な役割を兼務する中で「できること」「したいこと」「すべきこと」を意識し、さまざまな経験が行動の糧となり、リーダーシップが磨かれていくと語りました。続いて、活水女子大学看護学部 准教授の岩本利恵さんが、ワークショップでの講演(P1・TOPICSに詳細)を再演し、その後、グループワークを行いました。
まとめ発表では、「リーダーは鳥の目線(俯瞰的な視野)、魚の目線(魚の眼のような広い視野)、アリの目線(現状の把握・会員の声を聴く)が必要」「会員やほかの団体からの意見を聴く力が大切」「リーダーが問題をひとりで抱え込まず、ともに解決していく環境づくりが大切」「リーダーをやめたいのにやめられない。けれども事業や課題解決を成し遂げたことへの達成感にやりがいを感じる」など、理想像や本音を交えた意見が発表されました。質疑応答では、「若い世代のリーダーを育成するには?」という質問に対し、「会員の中で、同世代、患者の家族、共通の趣味をもつ人などの多様な設定で集まりをもち、人材を発掘し、団体を活性化していく手法もある」という意見が出ました。