活動紹介 第47回(2018)
地域でのネットワークを広げ、情報やノウハウを共有し活動を充実させていこうとする、各地での取り組みをレポート
第28回 九州学習会 in 熊本 (2018年4月1日)
改めてVHO-netについて学びこれまでのかかわり、今後どう携わっていきたいか、皆で意見を出し合う
第28回九州学習会が熊本県難病相談・支援センターで開催されました。テーマは「VHO-netの中での自分の携わり方」です。まず九州学習会運営委員から、スライドを使ってVHO-netの概要(理念や活動指針)、ワークショップや地域学習会、これまでの活動成果などの紹介がありました。さらに、運営委員2名がVHO-netとかかわることでの自身の学びや成長、ヘルスケア関連団体にそれらをどう反映しているかについて発表がありました。これらの発表を受けて3班に分かれ、約2時間グループワークを行いました。
まとめの発表では、「いろいろな疾患、障がいがあることを共有できた」「九州他県の情報も得られ、電話相談にも活用できる」「VHO-netへの主体的な参加は団体運営や計画の見直し、次のリーダーの育成にも有効」などの意見がありました。今回のテーマは初参加者にも受け入れられやすく、「初めてで戸惑いはあったが、組織のあり方やこれまでの有意義な活動が理解でき、皆さんの気づきや成長を知ることができた。意見交換ができる場だと思った」「疾患が違っても共通のキーワードがたくさんあることに気づくことができた」「事情がありしばらく参加できなかったが、送付される『まねきねこ』を読み、自分が所属する団体の本部の活動ぶりが紹介されるなど、いつも励まされている」という感想が聞かれました。全体討論では、改めてVHO-netの原点に帰り、話し合う中でいろいろなことが確認でき、今後の九州学習会の方向性を探る機会になったと結ばれました。
第41回 関西学習会 in 大阪 (2018年4月7日)
先天性心疾患の家族の模擬講演を聞き全員で検討。
さらに今後の学習会のテーマについて話し合う
大阪市のたかつガーデンにおいて、第41回関西学習会が開催されました。まず、1 月20日〜21日に行われたVHO-net第3回交流学習会と地域学習会合同会議への参加者から報告があり、続いて、全国心臓病の子どもを守る会 奈良県支部の春本加代子さんが、医療関係者を対象とした、40分間の模擬講演を行いました。先天性心疾患の説明から始まり、次男の新生児期の2度の手術、病院での付き添い生活の苦労、幼稚園から高校まで各成長段階での学校側の配慮の有無や、患児自身の悩みや成長、きょうだい児への対応、親の気持ちなどが語られました。
終了後はまず、講演に対しての質問や感想が出され、その後、関西学習会が作成した『「患者・家族が語る」講演のポイント チェックリスト』に則って意見を出し合いました。「病名が難しいので読み上げるだけでなくスライドに表記しては」「心臓の構造のイラストを入れた方が良い」「起承転結がうまくできていてストーリーに起伏があり聞きやすかった」など、より良い講演に向けてのきめ細かなチェックが行われました。後半は今後、関西学習会で取り組むテーマ「あなたにとってピアサポートとは?」への検討へ。今回は具体的な手法ではなく、まずはピアサポートの意義や価値について意見を出し合い、「対等性」「双方向」「自助・共助・互助」「場があることの大切さ」などのキーワードが導き出されました。これを受けて、次々回の学習会までに各団体でのピアサポート活動の課題や困りごとをまとめておくことを確認しました。
第40回 関東学習会 in 東京 (2018年4月15日)
「傾聴の仕方とストレスマネジメント」のワークショップを通して、より良いコミュニケーションのあり方を学ぶ
東京のファイザー株式会社で第40回関東学習会が開催されました。今回は「医療者と患者とのコミュニケーション」をテーマに千葉大学大学院医学研究院(公衆衛生学)教授の羽田明さんが講演を行い、その後の討論を通じて医療関係者の悩みや、患者側の思いを伝える方法を共有することにより、より良い関係づくりを考えようというものでした。
羽田さんはもともと小児科が専門で、現在は、千葉大学医学部附属病院遺伝子診療部や千葉県こども病院遺伝科で、遺伝性疾患の診療や遺伝カウンセリングに携わっています。講演では「医療者の迷いを患者団体リーダーと共有する」と題して、臨床の現場でどのような疾患に対応しているか、遺伝学的検査の種類、その検査前に必要な準備、検査結果を伝える際に留意していること、遺伝学的検査後の患者家族へのフォローアップの重要性などを語りました。
医療者側の悩みとして、遺伝性疾患の診療には倫理的問題への深い理解が医療者にも求められること、遺伝学的検査や遺伝性疾患への正しい理解がすすんでおらず、患者や家族への告知が非常に難しいこと、チーム医療が必要だが大学病院などでも医師と遺伝カウンセラーやソーシャルワーカーなどが連携する体制が整っていないところが少なくないことなどを挙げました。特に患者や家族への告知については、適切なタイミングが疾病によって異なり、医療者も苦悩しているとのことでした。
また、ヘルスケア関連団体の果たす役割には期待しているが、希少な病気は患者団体が少ないことや、病気が同じでも団体になじめないケースもあることなどを紹介し、「患者家族に患者団体をスムーズに紹介できるように、VHO-netや地域学習会の活動指針のように、パンフレットなどで活動の目的や内容を明らかにしておいてほしい」と語りました。
多様な立場から遺伝性疾患を考える話し合いを実施
講演を受けてグループ討議が行われ、次のような意見が紹介されました。
・信頼関係を築くためにヘルスケア関連団体のあり方が重要。
・告知はタイミングが重要。小児の場合、まず父親に告知し、その後母親に告げてショックをやわらげるような方法もあるのではないか。
・遺伝学的検査を十分理解していても、実際に結果を告知され動揺することがある。そうした心の揺れ動きを、医療者も察してほしい。
・子どもの場合、疾病ごとの告知のタイミングについて情報を得たい。
・がん患者に対するピアサポート研修のようなプログラムを、難病などのヘルスケア関連団体でも受けたい。
・親の会は内向きになりがちだが、他の団体や社会ともつながりたい。
親の会で活動を始めた若い世代の悩みに対して、子育てを終えた世代からのアドバイスもあり、多様なメンバーが集まる中でのグループディスカッションの良さを実感したとの意見もありました。
最後に羽田さんは講評として、「医療者は、患者さんの本音がわからず推測しているのが実状なので、当事者だからこそ伝えられることが多くあると思う。医療をより良くするためにも、積極的に声を上げ、講演などの場で発表してほしい。そして医療者に訴えがよく伝わるように、こうした学習会などで講演や発表のトレーニングもしてほしい」と期待を述べました。
今回は遺伝性疾患の団体や、親の会の参加者が多く、医療者との関係や当事者の悩み、ヘルスケア関連団体の役割などを考える有意義な場となったようです。最後に「今日の学びをぜひ所属団体にフィードバックしたい」「遺伝性疾患や遺伝学的検査についても理解をすすめ、問題に直面している人に手を差し伸べたい」との思いを確認して、学習会を終えました。