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レア ディジーズ デイ 2016 in 福岡 開催
「世界希少・難治性疾患の日」開催をきっかけに難病NET.RDing福岡を発足

レア ディジーズ デイ 2016 in 福岡 開催
「世界希少・難治性疾患の日」開催をきっかけに難病NET.RDing福岡を発足

2016年2月28日、福岡市役所1階の多目的スペースで、3回目となるRare Disease Day(世界希少・難治性疾患の日:以下、RDD)2016 in 福岡が開催されました。福岡の中心地、天神にある会場には、難病法、障害者差別解消法、ヘルプカードなどについての解説パネルが展示され、今回のテーマ「sign〜病気のわたしの伝え方」について、社会福祉士、社会保険労務士、市議会議員、患者当事者ら計5名によるパネルディスカッションが行われ、生歌ライブなど、一般の人々も参加しやすい雰囲気の中、約130名が集いました。主催は、難病NET.RDing福岡 (以下、リーディング福岡)。若い世代のパワーを感じる、代表の池崎悠さんと事務局長の永松勝利さんにお話をお聞きしました。

Rare Disease Day(世界希少・難治性疾患の日)
希少・難治性疾患の患者さんの生活の質向上を目指して、2008年にスウェーデンで始まった活動です。毎年2月の最終日に世界中、現在では80ヶ国以上でイベントが開催されています。日本では2010年の東京開催から始まり、6回目を迎えた今年は全国32地域で公認開催されました。
主催:Rare Disease Day日本開催事務局(NPO法人ASrid内)

リーディング福岡の発足の経過をまず、聞かせてください

池崎 3年前にRDDを福岡で開催したいと集まった5人の実行委員会が母体です。さらに継続して難病への理解、就労促進を目指して活動していこうと、リーディング福岡を発足しました。私は難病の当事者ですが、この活動を始めた一番のきっかけは就職活動でした。大きな壁でしたね。一般企業にはなかなか就職できない、難病の症状は変動するので障害者手帳が取りづらい。でも、障害者手帳があるからといって簡単に就職できるわけではない。今回のRDDのテーマは「sign〜病気のわたしの伝え方」ですが、見えない障がいは伝わりにくい。制度の狭間にいるのだとひしひしと感じました。

永松 私は難病患者団体の代表をしている支援者です。他団体との交流の中で、NPO法人 佐賀県難病支援ネットワークの三原睦子さんと出会い、三原さんたちが2013年に立ち上げた、行政や市民ボランティアとの協働による「難病サポーターズクラブ Japan」(『まねきねこ』第36号で紹介)に刺激を受け、同じような思いをもつ池崎さんとSNSを通じて知り合いました。佐賀県での難病患者就労支援シンポジウムで顔を合わせ、福岡県の難病支援の現状ってどうなんだろうと話し合いました。池崎さんが入院していた大学病院の同室の人たちなども集まり、何ができるのだろうと。そこでRDDの話をして、福岡でもやるべきと、みなの意見が一致しました。

池崎 2013年の第1回の開催では100人を超える人が参加してくださり、さらにメディアの取材もあって思わぬ反響に驚きました。第1、2回の開催を通じて「聞いたこともない病名がたくさんあった」「疾患別の医療講演会はあるが、違う疾患の人たちも同じような問題で困っているとわかった」などたくさんの意見をいただきました。疾患を問わずに活動する意義を実感することができました。

RDD開催についてやりがいや苦労したことは?

池崎 アクセスしやすい市役所のロビーを使いたいと思っていました。1、2年目はなかなか確保できませんでしたが、今年は福岡市役所保健課の方からこのスペースで開催しませんかと連絡をいただきました。パネルなども28日の当日だけでなく、その後1週間展示できることに。難病相談・支援センターやほかの患者団体も応援してくださり、PRやお手伝いをしていただいています。

永松 リーディング福岡は、会則はありますが会員を募らない任意団体です。広報などは主にSNSを使い、RDD開催についても当日までテーマを設けて、メッセージを発信しました。SNSは情報がすぐに発信でき、活動をアピールできます。体調が悪くてもベッドからでも発信できる。利用次第では大きな価値を生みます。ただ、やはりインターネット環境をもたない人がいますから、そういう人たちへの発信はパンフレットを保健所に置くなど、今はそれぐらいしかできていないのが現状で、今後、幅広く情報を発信できるよう、工夫をしていきます。私たちは会員制ではないので、組織化するよりも、情報の発信や交流によって社会に波を起こしていく団体を目指しています。

RDDの開催以外にどのような活動をされていますか?

池崎 難病のある人の交流会を年2回くらいのペースで行っています。難病当事者の講演やグループトークなどが多いです。昨年からは「福岡県における難病患者実態調査」として、交流会参加者には紙媒体で、さらにインターネットを通じてアンケート調査を実施しています。「難病と就労」「見えない障がい」「小児慢性特定疾患」の3つの調査項目で、データ収集を行っています。

永松 もうひとつの活動の柱は、議員さんとの懇談会です。とにかくストレートに私たちの体験を聞いてほしい。昨年、第1回福岡県議会議員・県職員との難病に関する懇談会を、アンケートと同じ3つのテーマを設けて開催しました。ところが期待した手応えを感じない。その理由は懇談の中で明らかになりました。行政は難病患者と身体・知的・精神の3障がい者を同一に考えていて、障がい者福祉は行っているため難病対策も行っていると思っている。課題も状況も違うことが理解されていなかったのです。また、2015年の難病法施行で、難病がこれまでの3障がいに加わったこともあまり周知されていませんでした。ただ、見えない障がいについてのサポートとして「ヘルプカード(下記)」を提案したところ、これはスピーディーに対応していただき実現しました。

池崎 そこで、市議会議員・町議会議員さんはどうだろうと懇談会を申し入れると、これがとても反応がいい。質問の嵐でした(笑)。何をすればいいのか、町議会でも勉強会を開きました。その中のおひとり、宗像市議会議員さんが今回のRDDのパネリストとして参加してくれました。昨年は2回、懇談会を行いました。県のような大きな単位ではなく、地域により近い、市や町といった小さな単位の懇談会と、RDDのような大きなイベントを組み合わせながら活動していくことが今の方針だと考えています。

就労に関しての支援策や今後の抱負について聞かせてください

池崎 就労に関しては、ハローワークに難病患者就職サポーターがいるので、患者にその情報を発信したい。一方で、市の担当者や区長さんにお話に行ったり、企業訪問などを行ったりしています。今はまだアンケートでの実態調査の実施中なので、それがある程度まとまったら、県や市に対して何らかのアクションを起こしていきたいです。
リーディング福岡はメンバー全員が仕事をもち、また、神経系難病の患者が多く、季節によって体調が左右され活動できないこともあります。それでも地道に福岡県の難病患者への理解を深めるためにRDD開催の継続、普及・啓発活動を行っていきたい。もうひとつ、佐賀県が行っている難病患者の就労シンポジウムをリーディング福岡の主催でも行いたいと考えています。県内のさまざまな患者団体や難病相談・支援センターと連携をとって実現することを目指しています。

ヘルプカード
リーディング福岡の提案によって実現した福岡県の「ヘルプカード」。見えない障がいを見えるようにしたいという思いが形になりました。裏面に、手伝って欲しいこと、たとえば「視覚障害があります。緊急時には周囲の状況を伝えてください」「パニックを起こすことがあります。優しく声をかけてください」「緊急連絡先」といった内容を自分で書き込み、バッグなど目につきやすいところに表示しておくカードです。県保健福祉事務所、県内各市町村の福祉課などで配布され、福岡県ホームページからダウンロード印刷もできます。