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小児慢性特定疾病の制度改正を受けて
難病や慢性疾病の子どもを取り巻く現状や課題を聞く

小児慢性特定疾病の制度改正を受けて
難病や慢性疾病の子どもを取り巻く現状や課題を聞く

2015年に難病法とともに、小児慢性特定疾病医療費制度も改正され、また2017年には医療費助成の対象となる疾病が追加されるなど、難病や慢性疾病の子どもたちへの支援が改めて注目されています。そこで、病気や障がいのある子どもや家族を支える仕組みの現状や課題について、「認定NPO法人難病のこども支援全国ネットワーク」の福島慎吾さんと本田睦子さんにお話をお聞きしました。

認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワーク
専務理事・社会福祉士 福島 慎吾 さん
主任・おもちゃコンサルタント 本田 睦子 さん

小児慢性特定疾病医療費制度の改善点と課題

「難病のこども支援全国ネットワーク」は、難病や障がいのある子どもや家族を対象とした支援や情報提供を行っており、小児慢性特定疾病医療費制度についても、以前からどのような支援が必要なのかを親の会のみなさんとともに討議し、政府への請願などの活動を行ってきました。

より多くの患者への平等な支援を目指した今回の改正で、医療費助成を受けられる子どもが増え、慢性疾病や難病の子どもを支える制度は充実したと言えると思います。しかし、患者や家族の立場からは不十分な側面が残っています。たとえば今回、公平という観点から、世帯の所得に応じた自己負担も見直されました。これにより従来の難病・小児特定疾病の医療費助成を受けていた人の中には負担が増す場合があります。2017年12月末まで経過措置が設けられていますが期限は近づき、特に所得の低い家庭では大きな負担となることが危惧されます。

〝制度の谷間の患者〞が生じる疾病を指定する仕組み

慢性疾病・難病の子どもたちは、小児慢性特定疾病医療費制度のほか、難病法と、障害者総合支援法に基づいた障がい福祉サービスなどの公的な支援を受けられます。

小児慢性特定疾病医療費制度は児童に対する福祉を目的に制定されたものですから、対象者が20歳(原則18歳、必要と認められた場合は20歳まで)を迎えると受給できなくなります。小児に特有の病気や、成人を中心とする疾病もあるため、小児慢性特定疾病医療支援(722疾病)と指定難病(330疾病)は数も異なり、対象疾病は両制度で必ずしも一致しませんので、患者によっては医療費の助成が20歳で打ち切られることもあります。指定難病も以前に比べれば対象疾病が増え、支援体制も整備されてきていますが、明らかに病気による活動制限や参加制約(個人が活動を行う時の難しさ)が存在しても、確定診断がつかない、あるいは疾病名が制度の対象外の場合は、既存の制度の対象とならないケースがあるのです。

このように対象疾病を指定するという仕組みでは、必ずどこかに境界線が引かれてしまい、制度から漏れてしまう患者が生じます。生活しづらいハンディキャップのある人すべてが社会的支援を受けられるという理想的な制度のあり方には、ほど遠い状況です。障害程度の基準のように、病気特有の活動制限や参加制約、病気による生きにくさや暮らしにくさを何らかのスケールで測って、支援していく仕組みが必要だと考えています。

子どもならではの支援、家族を支える包括的な支援が必要

私たちは、医療費助成だけでなく、心の支えや就労支援、治療法や治療薬の開発などを充実させ、患者家族を社会全体で支える仕組みが必要だと訴えてきました。子どもの慢性疾病・難病が成人と大きく異なる点は、患者数が少ないため、診断や治療方法の確立に時間がかかることや、子どもの成長過程に応じてきめ細かい対応が必要であることです。しかも医療技術が発達する中で、重い病気や障がいがあり、在宅で医療機器を使って暮らしていく子どもが増えています。しかし現行の障害福祉サービスには、人工呼吸器や経管栄養などにかかわる医療的ケアを必要としている子どもが使うことのできるサービスがほとんどありません。そのため、家族がケアをすべて抱え込むことになり、大きな負担となっています。学校への付き添いや送り迎えなど、どこへ行くにも家族と一緒となり、子ども自身の自立や社会参加の制約要因となることもあります。

また、子どもの場合、病気や障がいへの周囲の理解が得づらく偏見を生みやすいため、本人だけでなく、きょうだいに対する配慮も欠かせません。きょうだいを含んだ包括的な家族支援が必要となるのです。

自立支援員の仕組みを全国に広げ支援の充実を目指したい

2015年の児童福祉法の改正で、地域で暮らす小児慢性特定疾病児童等の〝自立を支援する事業〞が義務化されたことは画期的だと考えています。より良い制度の実現のために、各実施主体(都道府県、指定都市、中核市)に「慢性疾病児童等地域支援協議会」が設置され、協議会と連携して自立支援を進めるために「自立支援員」が設けられることになりました。自立支援員が、それぞれの患者や家族の困りごとや悩みをサポートしていく仕組みで、私たちも東京都から委託を受けて、遊びを通じて病気の子どもたちや家族の心のサポートを行う「遊びのボランティア」などの活動を行っています。ただ、新しい取り組みでどのような活動を行えば良いのか模索中で、活動が遅れている地域もあるようです。

そこで当ネットワークでは国立成育医療研究センターと連携して、東京・京都・大阪で、地方自治体の職員などを対象とした自立支援員研修会を始めました。自立支援員の養成を通じて、困っている子どもや家族に必要な支援、子どもの将来に対しての見通しや安心を家族が得ることのできる支援を全国に広げ、社会にもその必要性を訴えていきたいと考えています。これからも行政や患者団体、医療福祉関係者と協働し、慢性疾病や難病の子どもたちと家族への総合的なサポートの実現を目指していきたいと思います。

難病や慢性疾病の子どもへの支援制度のあらまし

難病や慢性疾病の子どもへの社会的支援は、1974年に「小児慢性特定疾病治療研究事業」が開始され、国が指定する病気に対して、国と地方公共団体によって医療費の助成が行われてきました。2005年に児童福祉法が改正され、法律に基づく制度になりましたが、医療費助成の財源については安定的な仕組みではありませんでした。

2015年1月に「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)の施行に合わせて、難病や子どもの慢性疾病に対する医療費助成制度も改正され、安定的な制度とするために医療費助成に要する費用の2分の1を国が負担する(消費税から充当)ことが法律で定められました。また医療費の助成を受けられる「小児慢性特定疾病」の対象が514から704疾病に拡大され、さらに2017 年4月から18 疾病が追加され、722 疾病となりました。また医療費の自己負担割合が従来の3割から2割に引き下げられ、自己負担額の上限額を定めた分類が整理されました。

小児慢性特定疾病とは?

幼少期から発症し、継続的な治療や療育が必要となるもののうち、次の4つの項目を満たしていると厚生労働大臣が認定した18 歳未満の子どもの病気のことを指します。

●慢性に経過する疾病であること
●生命を長期に脅かす疾病であること
●症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる疾病であること
●長期にわたって高額な医療費の負担が続く疾病であること
※医療費助成は、医師が引き続き必要と認めた場合20歳未満まで受けられます。

障害者総合支援法について

2013年に障がいの定義に一部の難病が追加されたので、その難病の患者は障害認定を受け、公的支援を受けることができます。

 

認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワーク https://www.nanbyonet.or.jp