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「わたしたちの団体の価値に気づき、価値を高める」 第17回ヘルスケア関連団体ワークショップ

第17回ヘルスケア関連団体ワークショップ
「わたしたちの団体の価値に気づき、価値を高める」

2017年10月14・15日に、東京のファイザー株式会社アポロ・ラーニングセンターで、第回ヘルスケア関連団体ワークショップが開催されました。今回のテーマは「わたしたちの団体の価値に気づき、価値を高める」。認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)(以下、COML)理事長、山口育子さんの基調講演を皮切りに、自分たちの活動を見つめ直し、社会が団体に何を求めているかを知り、団体の価値を高めるためにできることについて、議論を深め交流できた2日間となりました。

医薬の進歩、制度改革の中で、患者団体の価値が高まる時代へ

開会挨拶で、中央世話人であり(一社)全国膠原病友の会の森幸子さんは、「来年、2018年度には都道府県での医療計画が新たにスタートし、難病では医療費助成の経過措置期間が終了、小児から成人への移行期医療支援も始まります。医療・福祉を取り巻く環境がめまぐるしく変化する中で、患者団体の意見が求められ、大きく期待もされています。団体の価値に気づき、価値を高め、活動がより発展していくようなワークショップになればと願っています」と述べました。

続いて、ファイザー株式会社 前代表取締役社長梅田一郎氏(当時代表取締役社長)による歓迎の挨拶がありました。

「ファイザーの患者団体支援は三十数年前に始まりました。私が入社した31年前、すでに先輩たちが患者団体を訪問し、全国大会などのお手伝いもしていました。私もそういうボランティアを10年間続け、団体の人たちと交流しました。やがて治療薬の有無にかかわらず、困難な病気で困っている患者・家族、その周囲の人々の支援ができないかということでVHO-netが発足しました。今では異なる歴史をもち、異なる段階にいる多数の団体が登録されています。その活動の価値について大いに議論していただきたい。私たちは今後も、薬だけでは解決できないさまざまなヘルスケアにかかわる問題に対して支援していきたいと思っています」と述べました。

その後、基調講演を経て、6グループに分かれての分科会、翌日のまとめ発表、全体討論へと進行。空手の演武や懇親会なども含め、楽しいワークショップを通して、議論や交流を深めました。

基調講演:「患者力を高める活動とは 27年間の患者支援団体の経験を通して」
医療者と協働できる、賢い患者になることを目的に活動

山口 育子 さん
認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長

COMLは、特定の疾患を対象とするのではなく、患者全般を支援する団体として1990年に発足しました。同年に、私は卵巣がんを発症しました。当時、患者本人にがんを告知することは少なく、私が治療や薬に対して医療者に質問をすると「神経質な患者」「やりにくい患者」と思われ、「何か無理難題を言っていますか」と尋ねると、「自分のことを知りたいと望むからだ」と言われる、そんな時代でした。

COMLの名称には「人権」という言葉が入っています。それには2011年に亡くなった創始者の辻本好子理事長の、「病気になっても、その人らしさが失われないよう。医療現場でもそうあってほしい」という思いが込められています。

そして、「病気は命や人生を左右することもある。そんな大切なことを、たとえ専門家にであってもお任せでいいのだろうか。もっと患者が自立、成熟し、賢い患者になりましょう」という考えが活動の原点です。私はCOMLの存在を知り、その考えに共感し、事務局スタッフとなりました。

賢い患者への第一歩は「私たち一人ひとりがいのちの主人公であり、からだの責任者であることを自覚しましょう」です。そして、本来、患者と医療者は対立する立場ではなく、治りたい、症状を軽くしたいという同じ目標に向かって協働して歩むものです。そのために必要なのは、患者と医療者のより良いコミュニケーションを医療の中に根づかせること。そういう信念のもとに活動してきました。

COMLの主な活動について

■電話相談
活動の柱であり、今まで6万件近い相談を受けてきました。全国から、時には海外からも相談があります。

■模擬患者活動
1992年から模擬患者の養成に取り組み、今では医学部、歯学部、薬学部で義務づけられている、医療面接試験の相手役も担っています。

■病院探検隊
病院からの依頼で、患者の視点から改善提言をする事業です。見学だけでなく、他の患者に混じり受診もします。病院側も受診患者のフィードバックにとても関心があり、大きな病院が「患者目線が必要だ」という時代になっています。

■患者と医療者のコミュニケーション講座・患者塾
コミュニケーションを学ぶ講座や、患者・家族・医療者の対話や気づき、歩み寄る関係づくりを目指すセミナーを行っています。

COMLの考える賢い患者とは、医師からの説明を理解する努力をしたうえで、どんな医療を受けたいかを考え、伝える。医療者と協働できる患者になろうというものです。それを実践するために『医者にかかる10箇条』の小冊子を作成、さらに、小学生になったら自覚症状は自分で伝えることが大事ではないかと、子どもを対象にした『いのちとからだの10か条』をつくりました。

制度を理解し、コミュニケーション力を磨くことが団体の価値を高める

患者が勉強する場が必要だということから「医療をささえる市民養成講座」を始めました。医療の歴史や医療機関・専門職の種類・役割、医療費の動向などを幅広く学ぶ場です。反響は大きく、これまでに修了者が400人を超えました。次のステップとして、厚生労働省の各種委員会や地方行政の審議会に委員として参画できる人材を育成する「医療関係会議の一般委員養成講座」も立ち上げました。たとえば、住んでいる地域医療の現状や課題は何かといったことを、患者が理解したうえで医療のあり方を考えることが今、求められています。そのためには医療全体の制度や仕組みを理解することが不可欠です。そして医療の不確実性と限界を知ること。それが医療と冷静に向き合うことにつながります。

また、患者団体は自分たちの疾患にプラスになることを取り入れたいと考えます。でも、テーマによっては意見を述べて連携し、利害を越えて協働することも必要で、そのために欠かせないのが高いコミュニケーション力です。これは団体にとって大きな価値になると思います。COMLも発展途上であり、常にこれらを追い求めています。みなさんと共有しながら患者力を高めていきたいと思っています。

認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML(コムル)
設 立 1990年
2002年 NPO法人化
2016年 認定NPO法人認証
活動目標 患者と医療者の協働の実現と、より良いコミュニケーションの構築
活動内容 電話相談、会報誌の発行、ミニセミナー「患者塾」、模擬患者、病院探検隊、患者と医療者のコミュニケーション講座、医療をささえる市民養成講座、患者対応セミナー(医療者向け)、書籍等の発行、講演・原稿執筆、検討会や各種会議への出席