第17回ヘルスケア関連団体ワークショップ 分科会&グループ発表
ヘルスケア関連団体の価値について語り合い、今後の道筋を見出す
基調講演を受け、6グループに分かれての分科会が2日間にわたって行われました。患者団体の価値とは何か、価値を高めるためにはどうすれば良いのか。リーダーとして何を心がけるべきか。参加者が自らの日常の活動を多様な視点から見直し、団体の運営に活かせる具体的なアイデアを模索し、活動を一歩先に進めることを目指して熱のこもった話し合いが繰り広げられました。ここでは、2日目に行われたグループ発表の内容を要約してご紹介します
グループ1
「難しく考えず、ひと工夫で協働はできる」
再確認した団体の価値
・団体で要望活動を行い、補助拡大を実現
・行政と協働し、緊急時の手帳やマニュアル作成、避難訓練を実施
・活動を継続する中で信頼を得て、社会とつながる
団体の価値を高めるためにできること
・ひと工夫で社会との協働はできるのではないか。たとえば運動会を「運動を楽しむ会」とすると参加しやすくなる。協力を依頼するとつながりもできる
・研究者と連携して実態調査を行うと、充実した調査ができ、社会に活かせる
グループ2
「社会を変えるムーブメントを起こそう」
再確認した団体の価値
・個人ではなく団体としての力がある
・医療者と患者の両方の立場を理解できる
・体験的知識や情報の豊富さ、視野の広さ
・多様な団体の仲間がいることも価値であり財産である
団体の価値を高めるためにできること
・協働と連携で、良い社会をつくっていく
・他人任せから、自ら行動することに視点を変える
・患者団体も、自分も社会資源という自覚をもつ
・リーダーが楽しみながら活動することで、継続やムーブメントにつながる
・今はチャンスでもあり、大切な時。変わる社会をとらえて発信しよう
グループ3
「つながり」「寄り添い」「伝える」
再確認した団体の価値
・価値の源となる相談内容や活動結果を整理し、発信準備をする
・患者団体の存在そのものに価値がある
・医療機関や支援組織を活用すれば、存在価値が高まる
団体の価値を高めるためにできること
・患者団体の価値を自覚し、広める
・地域で計画的に活動、事業を行っていく
・歴史を学び、後継者を育成し、団体を支える
・要するに「つながり」「寄り添い」「伝える」
グループ4
「自信をもって、私たちがキラキラ輝こう」
再確認した団体の価値
・診断後の受け皿
・情報共有
・安心感・信頼
・啓発
・社会制度
・つながりがすべてのベースになる
団体の価値を高めるためにできること
・団体として発信していくことが大切
・わかりやすく伝える発信力を磨く
・活動を継続するために、後継者を育成
・自信をもち輝く人が増えると、団体への信頼も高まる
・先輩たちの思いを受け継いでいこう
・いろいろな人を巻き込んでつながりをつくっていく
・メディアとの連携。日頃からコミュニケーションをとろう
グループ5
「Look at me! ポジティブな私を見て!」
再確認した団体の価値
・わかりやすく、楽しく発信できる能力
・患者と医療者間の橋渡し、家族を含めて隙間を埋める力
・患者に力を与え、前に進めることができる
・対象拡大でニーズを発掘
団体の価値を高めるためにできること
・電話相談件数と内容をまとめて団体で共有
・相談マニュアルを作成する
・行政とタイアップして交流会を開催
・これまでの会報誌をまとめて冊子にして販売
・不安をもち相談に来る人に、「ポジティブな私を見て」と励ます。その機会や場所の提供
グループ6
「次世代のために、患者団体の価値を受け継ぐ」
再確認した団体の価値
・交流会は安心感が感じられ意味がある
・双方向のコミュニケーションができる
・会員や医療者に対するニーズの把握
・情報提供と蓄積により「つなげていく」
・治験や制度などの成果を、次の世代につなぐ
・継続すると、行政や社会にも信頼される
団体の価値を高めるためにできること
・連合体となり、目的を共有し、課題解決のためにつながる
・障がい・疾病を越えて理解し合う力を醸成する
・『リウマチ白書』のように蓄積していく
・ニーズや情報、先輩からの恩恵を次の世代に伝えていく
・主体的な意識をもつ
全体討論 ワークショップで何を学んだか 明日からどう活動するか
全体討論では、2日間のワークショップを通しての意見や感想が述べられ、白熱した討論が行われました。
基調講演を聞き、COMLの活動に刺激を受けたという参加者はとても多かったようです。「自分の団体でも何かできるのではないかと思った」「素晴らしい活動だが、自分はまず身近なところから始めたい」「今まで見えていなかった団体の価値に気づいた」などの感想が述べられました。医療関係者からは、「COMLのように活動できなくても、それぞれの団体に合わせた取り組みを続ければいいのではないか」「全国レベルの活動も大事だが、身近な地域とかかわることも重要。成功すればモデルとして全国に発信する方法もある」などの発言がありました。加藤眞三さん(慶應義塾大学 教授)は「COMLのようなインフルエンサー(最初に切り拓く人)に、追随する人が増えていくとムーブメントが起きる。患者団体が意識を共有して活動を続けると医療の文化も変わると思う」と述べました。また、アメリカで患者団体活動に携わるタズコ・ファーガソンさんからも「バリアフリーが進んだように、望む人が増えてくれば社会は変わるはず」と力強い励ましの言葉がありました。
今回のワークショップでは、団体運営に活かせる具体的なアイデアを見出すことを重視し、全体討議でも「医療や社会の変化に合わせながら実態調査を続けて次の世代につなげていきたい」「治験を通して次の世代に残せるものを考えたい」「学会への働きかけのノウハウや、マスメディアとの付き合い方を学んだので実行したい」「医療制度もこれまで活動してきた先輩たちの成果。歴史を学び感謝する必要性を発信したい」などの意見が発表されました。「他人事や人任せではなく、自分自身が主体的に、明日から行動しなければと実感した」との声も。多くの参加者が、この思いを共有しました。
全体を通しての感想では、初参加者から「さまざまな活動を知り、刺激を受けた。できることから実行したい」「いろいろな立場の人が集まり、ネットワークを横に広げる方法を学んだ」「医療者と対話する患者力が必要だということを実感した。団体にフィードバックしていきたい」などの感想が述べられました。医学教育や医師の研修に患者講師による講義を取り入れる羽田明さん(千葉大学大学院 教授)から、「VHO-netのメンバーの講演はとても好評。さらに発信力を高めてほしい」との言葉もありました。
先駆的な活動を知り刺激を受けつつ、自分の足元を見直し、活動を進めるために何ができるか・・。活動への意識を高める有意義な2日間となったようです。