ヘルスケア関連団体ワークショップ
分科会 & グループ発表
自分ならばどう取り組むか。何ができるか。実践につなぐために、模擬事例の具体的な資金調達計画に取り組む
資金調達についての講演・事例発表を受けた分科会では、3つの模擬事例に対して、参加者が団体の理事の立場になり、組織・事業・財政の課題を話し合い、実現可能な資金調達計画の作成に取り組みました。
ディスカッションの中で、資金調達をより身近にとらえられるようになった、自らの団体や活動の振り返りができた、さまざまな学びや気づきが得られたとの声が多く聞かれました。
ここでは、分科会のグループ発表を要約してご紹介します。
模擬事例1:全国組織の県支部として立ち上げた団体
グループ2:ビジョンやミッションを明確にして思いを訴求するイベントを企画
▼資金調達計画
・プロ野球の試合中にジェット風船を飛ばすプロジェクト
・球団の協力と繰越し金の活用で、風船の包装紙に共感メッセージを印刷し販売
・募金も受け付ける
▼実現するための取り組み
・役員や理事会を見直し、役割分担を行う
・実行委員会を立ち上げ、新しい役員や役割を担える会員を登用
・「◯◯デー」というような形で、イベントを継続させる
グループ4:「患者や家族を孤立させない」ためのイベントを開催
▼資金調達計画
・15周年記念イベント開催
・クラウドファンディング、グッズを作成し販売
・団体のイメージキャラクターの募集
・ロゴを作成し、Tシャツを作成・販売
▼実現するための取り組み
・ホームページに活動報告、定款、役員名簿、収支報告書を掲載
・ブログやフェイスブックを活用して、活動や患者の現状を訴求
・外出をサポートする旅行会社に協賛を依頼
・外出支援のための事業や、事業所の立ち上げを目指す
・ボランティアの活用
模擬事例2:法人格を有する全国規模の患者団体
グループ5:インターネットを活用して寄付収入・事業収入を得る
▼資金調達計画
・寄付収入と事業収入に分ける
・寄付収入で、研究助成やピアサポーター養成、外国人への相談を行う
・患者講師派遣や、グッズ販売で事業収入を増やす
▼実現するための取り組み
・ホームページで広告を募り、寄付しやすいシステムを構築
・情報公開を行う
・外部の人に理事になってもらう
・調査研究助成、患者講師派遣、
・ピアサポーター養成など事業を増やす
グループ6:余剰金を活用して支部のプロジェクトを行う
▼資金調達計画
・「孤立する人をなくす」をミッションとする
・療養生活の向上(検診の実施)、
・BBQ、芋煮会、クリスマス会の開催
・余剰金を活用して、プロジェクトを立ち上げる
▼実現するための取り組み
・事業を可視化し、顔が見える団体になる
・プロジェクトを通して外部の人にも参加してもらう
・支援者を増やし、さまざまな人を巻き込んでいく
・支部に権限を与え、自立させる
模擬事例3:地域を核とした難病の患者団体
グループ1:楽しさをキーワードにイベントを開催
▼資金調達計画
・大演芸会やライブ・オークションなど楽しい集まりを開催し、資金調達も兼ねる
・魅力的な活動・コンテンツにより会員を集める
▼実現するための取り組み
・ビジョンやミッションを明確にし、役員・会員の間で共有する
・会議には食事や合宿を取り入れ、リラックスして参加できるようにする
・共有できない人が自然に去り、賛同者が集まるようにする
グループ3:難病の人が街とつながるまちカフェを開催
▼資金調達計画
・地域の人が参加したくなるような魅力的な企画、イベントを行う
・多くの人が参加できるように、まちカフェを各地域で開催
・飲食店とコラボしてミニコンサートを開く
・イベントごとにチラシを作成し、広告を集める
・さまざまな店に広告依頼する
▼実現するための取り組み
・定款・会則・細則、理事の決め方や任期などを明確にする
・ボランティアや保健師の協力で、役員の負担を減らす
・団体の目的を、外向きにする
・集めた資金は地域に還元する
・マンスリーサポーターを集める
全体討論:
ワークショップでの学びや気づきを明日からの実践に活かす
全体討論では、自らの反省や気づきとして「手持ち資金でできることを考えていたが、まず何がしたいのか、それには資金はいくら必要か、発想を逆にするというのは大きな学び」「会員を増やすことを優先するのではなく、ポリシーを明確にして賛同者を増やすという考え方が印象的」「財政を考えると、組織や事業の課題も明らかになる」などの意見がありました。資金調達に臨む姿勢として「賛同できる人たちが一緒に活動すると力は大きくなり、動いてくれる人も増える」「参加した人も楽しいウィンウィンの関係が重要。共感してもらえると継続につながる」などの意見、今回のテーマについて「みんなが自分の問題としてとらえ直す機会になった。それぞれが持ち帰るものが多かったのではないか」「あきらめるのか、頑張って資金調達するのか、団体の発展の大きな分岐点になるのではないか」「昨年の夢から、今年は実践へ。2年かけての意義のあるワークショップとなった」との感想もありました。昨年、基調講演を行ったタズコ・ファーガソンさんは「皆さんがやってみようという気持ちになってくれてうれしい。次は実践の報告を聞きたい」と励ましの言葉を述べました。
ワークショップ全体の感想として、初参加者からは「学びを持ち帰り、ここから始めたい」「とても刺激を受けた」「元気をもらった」「さまざまなリーダー像に出会い、心が軽くなった。楽しく活動するヒントが学べた」などの発言がありました。最後に中央世話人の伊藤智樹さん(富山大学人文学部准教授)が「資金調達を具体化して考えるほど、団体の根本的な問題にたどり着く。活動に閉塞感を感じたり、流れを変えたいと思ったりしたときに、資金調達に注目するのは非常に有効な方法ではないかと感じた。明日から進んでいきましょう」と締めくくりました。
昨年の学びを基礎として、資金調達について仲間の挑戦を知り、自分のこととして身近に考えた今年のワークショップは、多くの参加者にとって心に響くものとなったようです。