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「難病サバイバー」の就労や社会進出を目指して
若い世代にも届く発信や、組織強化に取り組む
JPA新代表理事に聞く

「難病サバイバー」の就労や社会進出を目指して若い世代にも届く発信や、組織強化に取り組む
JPA新代表理事に聞く

一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会<br>(JPA)代表理事 吉川 祐一さん 一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会
(JPA)代表理事 吉川 祐一さん
(一社)日本難病・疾病団体協議会(以下、JPA)は、「病気や障がいによる社会の障壁をなくし、誰もが安心して暮らせる共生社会の実現」を目指す連合組織です。全国の患者や家族の声を集約して、国の難病対策や社会保障制度のあり方に対してさまざまな提言や提案を行い、医療と福祉の拡充に大きな役割を果たしてきました。
今回のトピックスでは、2021年5月から新たな執行部体制での活動がスタートしたJPAについて、新代表理事の吉川祐一さんにお話を伺いました。

吉川さんは、若い世代も多い疾病団体のリーダーを経験し、就労問題にも積極的に取り組んできたそうですね

facebook・twitterでも積極的に情報を発信している facebook・twitterでも積極的に情報を発信している 医療の進歩やIT技術の革新などにより、当事者の療養環境や生活環境は目まぐるしく変化しています。難病であっても就労が可能な人も増えており、就労問題はJPAにおいても大きなテーマとなってきました。その一方で、多くの加盟団体で、就労問題とかかわりの深い若い世代の参加が少ないという現状があります。
そこで、JPAとして若い世代によりアプローチをするために、まずホームページをリニューアルし、SNSを中心にした活動にも取り組み始めました。
SNSは情報を受け取る側の動向がリアルタイムで把握でき、私たちも発信する先に若い世代もいることを意識するようになってきました。
また、大きな団体や発言力の強い団体だけではなく、小さい団体や声の出しにくい団体の声も汲み取っていくために、ウェブアンケートも行いました。今後はウェブに対応できない団体へも配慮していきたいと考えています。

JPA ホームページ<br>https://nanbyo.jp/ JPA ホームページ
https://nanbyo.jp/
JPAを構成する役職員のマンパワー不足も顕著であるため、組織改革や事務局の強化、活動を支える資金調達も喫緊の課題です。
そこで現在、プロボノ組織に第三者評価を依頼しているところです。その評価を参考に、全体的な事業のあり方やヒト・モノ・カネの配分も見直して、運営基盤を強化したいと考えています。

就労問題については、具体的にどのような活動を行っているのですか

中心となっているのは、障害者雇用制度の対象の中に難病患者を組み入れる取り組みで、現在、厚生労働省と協議を行っています。コロナ禍で在宅でのリモートワークが普及したことも、難病患者にとっては働きやすさにつながり、就労の可能性が広がると思っています。
問題は、雇用側や社会の、難病患者の就労への理解がまだ十分ではないことです。
たとえば分身ロボットの『オリヒメ』を使えば、寝たきりの人も接客ができるわけですから、「難病患者も就労できる」という認識を広めていく必要があります。そのためには、まず、私たちJPAが研究機関や企業と協働して就労のモデル事業に取り組み、「コロンブスの卵」となって水平展開を目指したい。そして、「がんサバイバー」というネーミングによって、がん患者への社会の認識が変わったように、「難病サバイバー」という言葉を広めてイメージを変えていきたいと考えています。

就労や社会進出を実現するための企業や研究機関との協働においては、活動の透明性を担保して信頼される組織となることが求められますね

そのためにも、組織強化に取り組む必要があります。しかし、当事者だけの活動には限界がありますから、もっと多様な専門家や一般市民の活動への参加を促すために、JPAが社会に必要な役割を果たしていることや、その価値への理解を広めていきたいと考えています。
また、地域により活動の格差も顕著になってきています。高齢化により弱体化する加盟団体も多い中で、活動力の弱い地域や団体を置き去りにすることのないように、各地の「難病相談支援センター」とも連携しながら、地域の活動も活性化したいと考えています。
今後の展望としては、JPAが目指してきた「全国難病センター」を実現したいと考えています。現在、ファイザープログラムの支援を受けて「全国難病センター設置に向けた実態調査、基盤整備」に取り組んでいます。具体的な構想はまだ出来上がっていませんが、若者を含めた「全世代総ぐるみ」の患者の声を集約して、従来の組織活動にウェブ上の活動を組み合わせた形になるのではないかと考えています。そのためにも、今後はウェブ上での交流や発信にさらに力を注ぐ予定です。
「いつか」と漠然と目指すのではなく、たとえば「5年後に全国難病センターを実現する」というような現実的なゴールを設定して、それに向かって進んでいきたいと思っています。

前代表理事より
多様な立場の人を巻き込む活動を目指してほしい

JPA 前代表理事(現・監事) 森 幸子さん<br>〔(一社)全国膠原病友の会代表理事〕 JPA 前代表理事(現・監事) 森 幸子さん
〔(一社)全国膠原病友の会代表理事〕
私が代表理事となったのは、「難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)」が施行された時(2015年)でしたので、その後の難病法と改正児童福祉法の「5年の見直し」も含めて「難病法」についての理解を広める活動に力を注いできました。その中で患者と家族だけではなく、もっと多様な立場の人の参加を得て、多様な視点をもって活動に取り組むことが必要ではないかと感じていました。
その点で、吉川さんはSNSなども使いこなす強い発信力をもち、また、従来からの患者団体だけでなく、ネットワーク組織を運営されてきた経験があります。その強みを活かして、JPAの組織力を高め、「地域で尊厳をもって生きることのできる共生社会の実現」を目指してほしいと期待しています。

吉川 祐一さん プロフィール
20代前半でクローン病を発症。就労を継続しながら2011年よりIBDネットワーク(炎症性腸疾患全国組織)世話人として運営に参加。その後、いばらきUCD CLUB(茨城県の炎症性腸疾患患者会)、茨城県難病団体連絡協議会の運営にも参加。2019年よりJPAの理事、副代表理事を経て2021年5月より代表理事に就任。NPO法人IBDネットワーク理事、茨城県難病団体連絡協議会監事、いばらきUCD CLUB会長、難病カフェアミーゴ副代表等を兼務している。

まねきねこの視点

取材を終えて
医療やITなどさまざまな分野で、当事者と、研究機関や企業との協働が必要となっている今、当事者の声を集約する連合組織としてJPAの果たす役割はますます重要になると考えられます。若い世代への発信や、ファンドレイジングも活用した組織力の強化など活動の充実を注視していきたいと思います。