健康情報を意思決定に利用する方法を学ぶ
ヘルスリテラシー体験学習型セミナー開催
一般社団法人VHO-net・ファイザー株式会社 初の共催
2022年5月28日、(一社)VHO-netとファイザー株式会社の初の共催となる「ヘルスリテラシー体験学習型セミナー」がオンラインで開催されました。
当日は、聖路加国際大学大学院看護学研究科看護情報学分野教授の中山和弘さんが「ヘルスリテラシー〜健康を決める力〜」をテーマに、健康情報を意思決定に利用する方法を講演。参加者は、自ら情報を入手することについての事前学習、講演を受けて演習し、グループ討論を行い、健康情報の入手・理解・評価、意思決定について学びました。
団体リーダーが身につけたいヘルスリテラシーとは?
テーマとなった「ヘルスリテラシー」とは、健康情報を入手して、理解・評価し、活用するための知識、意欲、能力のことです。ヘルスリテラシーを高めることにより、日常生活における健康関連の意思決定を通じて、生活の質を維持・向上させることが期待できます。情報過多社会の現代においては、簡単に情報が手に入る一方で、誤った情報やフェイクニュースが急速に広まる現象が起きやすくなっています。
正確で質の高い情報を得るためには、情報を受け取る側のヘルスリテラシーを向上させることが必要です。特に会員への情報提供や、社会への情報発信に携わるヘルスケア関連団体のリーダーにとっては、ヘルスリテラシーは欠かすことのできなものとなることから、今回のセミナーが開催されました。
講演:ヘルスリテラシー〜健康を決める力〜
中山さんは、保健医療社会学、看護情報学を専門とされており、ヘルスリテラシー(健康を決める力)、意思決定支援、ヘルスコミュニケーション、これらを支え合うサポートネットワークなどをテーマに研究、教育活動を行っています。講演の中で中山さんは、ヘルスリテラシーについて「情報に基づいた意思決定により健康を決める力」であると説明。「信頼できる情報から、すべての選択肢とそれぞれの長所短所を知り、自分の価値観をもとに幅広い人々とつながりながら健康について自己決定できれば、もっと幸せになるのではないか」と述べました。
講演で紹介された内容から
本人はヘルスリテラシーが低い傾向があり、合理的意思決定より直感的意思決定をする傾向がある
※HPリンクは表の下に記載
情報評価のスキル | インターネットやメディアの情報をみるときは、「どんな人が書いたのか」「他の情報と比べたか」「情報源は何か」「宣伝のためではないか」「情報はいつのものか」などを確認する |
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意思決定・行動選択のスキル | 解決すべき課題と、その解決方法の選択肢を幅広く考える。さらに各選択肢の長所短所を比較して、自分にとって何が重要かをはっきりさせる |
ティーチバック | 医療者が説明したことを、患者が自分の言葉で説明してみることにより、どう理解したかを確認する方法 |
シェアードディシジョンメイキング (協働意思決定) |
医療者と患者が医学情報のほか、価値観や生活のことなど個人的・社会的な情報についても共有したうえで治療方針を話し合い、最終決定をともに行うプロセス |
事前課題と当日の個人演習について
セミナーに先立ち、参加者には、「自分の探したい健康情報を決め、情報源の特徴に留意しながら集める。さらに情報評価のスキルを使ってその健康情報を確認する」という事前課題が提供されました。当日の演習では、事前課題で調べた健康情報について、選択肢と、それぞれの長所短所を表に記入。長所が自分にとってどのぐらい大切か、短所の問題の大きさはどれくらいかを5段階で評価し、意思決定のプロセスを体験しました。
グループ討論&発表
自らの意思決定や、団体の活動に活かせることは?
グループ討論では、自らの病気や障がい、生活と照らし合わせて、気づきや今後に活かしたいことが話し合われました。グループ発表から、その一部をご紹介します。
講演の感想、気づいたこと
● ティーチバックが印象に残った
● 自己決定とは、自分の価値観、考えを見つめ直すことだと思った
● 合理的な意思決定という言葉に重みを感じた
● インフォームドコンセントより、シェアードディシジョンメイキングが重要であることを理解できた
今後、自分の健康に関する意思決定に活かすこと
● 正しい情報を得て判断することが大事だと改めて思った
● 希少疾患で情報が少なく判断が自己流になりがちだったと反省した。情報評価や意思決定のスキルを取り入れていきたい
● 演習によって自分のことを可視化することができた
所属団体やVHO-netの活動で活かせること
● 正しい情報を正しく伝える力を養いたい。選択肢の長所短所を意識して情報提供していきたい
● 本人が自分で決めることが幸せにつながることを認識して、ピアサポートに役立てたい
● 団体の勉強会でもティーチバックを取り入れたい
● 情報評価や意思決定に関する学びを伝えていきたい
● ヘルスリテラシーという考え方を団体で共有したい
● 病気について考えることや、病気であっても健康的な生活に取り組む必要性を伝えていきたい
セミナー開催にあたって
ともに学び合い、活動や社会に役立ててほしい
森 幸子さん(VHO-net 代表理事)
VHO-netは活動をさらに広く発展させるために、今年度から一般社団法人となりました。その目的は、会員が相互に学習、協力、援助することでより良い保健医療福祉の実現や、より健康で住みやすい社会の創造を目指すことです。そのための企業や他団体との協働の第一弾が今回のセミナーです。重要なことながら学習機会の少なかった「ヘルスリテラシー」について、ともに学び合うことで、これから先の自分や団体の活動、そして社会に役立てていきましょう。
法人化によりさらに学びの場を広げたい
喜島 智香子さん(VHO-net 事務局)
「ヘルスリテラシー」や「意思決定」は、日常生活にも必要なものであり、団体のリーダーに求められるキーワードです。今日の学びをさまざまな場面で役立てていただきたいと思います。病気や障がいの垣根を越えて学び合い、話し合うことはVHO-netの原点。またグループの中で意見の集約や発表の役割を担うことで、リーダーとしてのスキルやリテラシーの向上が期待できます。VHO-netでは今後もこうした学習機会を設けていきますので、積極的に参加してください。