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難病相談支援センターを中心にネットワークを拡大
静岡県難病ケアシステム構築の試み

難病相談支援センターを中心にネットワークを拡大 静岡県難病ケアシステム構築の試み

静岡県難病相談支援センター 所長
野原 正平 さん
NPO法人静岡県難病団体連絡協議会連理事長・JPA日本疾病・難病団体協議会副代表
静岡県難病相談支援センター 保健師
深井 千恵子 さん

各都道府県への難病相談支援センターの開設・発足を契機に、さまざまな課題を抱えながらも、難病相談支援センターを中心として難病ケアのネットワークが広がり、活性化する地域が見受けられるようになってきました。そこで、患者団体主導で相談支援センターを運営するとともに地域で積極的な活動を展開し、全国的にも注目されている静岡県のケースをご紹介します。

センター構想が持ち上がる以前から、勉強会を開催

静岡県では、難病相談支援センターの構想が発表される以前から、静岡県難病団体連絡協議会が呼びかけて、地域の医療ケア関係者と「静岡県難病ケアシステム研究会」として勉強会を重ね、「静岡難病ケア市民ネットワーク」の立ち上げや、静岡県における難病ケアシステムの構築をめざしていました。ちょうど介護保険制度による課題が明らかとなっていた頃で、保健師や医療関係者など難病患者の支援に熱心な方が集まってくれました。 その後、難病相談支援センターを各都道府県に設置するという厚生労働省の方針が出され、集中勉強会やシンポジウムなどを開催し、専門家の助言を得ながら、患者団体の立場から「こんな難病相談センターがほしい」という要望をまとめて「静岡県難病センター構築に関する提言」として発表しました。おそらくこうした提言の発表は全国的にも珍しく、難病患者の立場から県当局に具体化構想の提示と、難病ケアに関わる個人・団体への提案などを目的としていました。県も私たちと協議を重ねたうえで、提言に沿った形で難病相談支援センターの設置を進め、静岡県難病団体連絡協議会が運営を受託しました。

「難病相談支援センター」の可能性を追求

今までの保健行政では難病ケアは疾病対策課や保健予防課が担当し、それぞれの保健所に難病相談が持ち込まれても、県の中央保健所のような統括機能がないため政策改善には結びついていませんでした。また、介護保険制度のもとで制度が分化され、医療・福祉・介護・教育・就労など難病患者のさまざまな困難に対して、保健師などが統括してかかわりづらくなる問題も生じました。 こうした問題を解決する可能性をもつのが「難病相談支援センター」です。患者団体が運営を受託することで、ピアカウンセリングなどを通じて信頼関係を築き、同じ患者の立場から、その人の生活全体の相談に応じることができます。さらに専門家などのネットワークを広げれば、よりさまざまなニーズに対応できるようになります。そのためには、患者団体がどうかかわるかが、運営をはじめ難病ケアシステム全体の質を左右すると思います。 私たちがめざすのは既存の制度にとらわれずに、何がどこまでできるか、「難病相談支援センター」の可能性を追求することです。この点が同じように難病ケアの問題に取り組む全国の仲間に注目されているようです。

多くの人がかかわり、支え合うのが特長

静岡県の特長は、難病患者が暮らしやすい地域づくりをめざして、センターや患者団体だけではできない支援を行っていることです。難病は相談だけではなく支援が必要であると考え、静岡難病ケア市民ネットワークと協力して筋萎縮性側索硬化症(ALS)など重篤の患者さんのお花見やサッカー観戦、患者交流会参加などへの外出支援を行っています。また、「若い頃見た西伊豆の夕日をもう一度見たい」という希望を叶えたこともあります。最近ではボウリング大会を開催しました。このような活動によって、長い間寝たきりだった方も自信を持ち、次は家族で自力で挑戦したり、生活範囲を広げたりするきっかけになるし、その患者さんや家族の喜びを支援にかかわる人たちも共有することができるのです。 難病相談や支援に協力してくれている人は、専門家から学生や一般市民まで、さまざまです。大切なのは、専門知識や経歴だけではなく困難な人たちを丸ごととらえて、何が求められているのかを見極めながら支援する「かかわり方」であると考えています。 現在、難病ケア市民ネットワークは静岡市と浜松市にできていますが、このネットワークを静岡県全体に広げ、来年春を目標に全県域的なケアシステムを構築したいと考えています。多くの人がかかわり、みんなで支え合って、みんなで動くという静岡の特長を生かして、難病相談支援センターの可能性に挑戦してみようというのが、私たちの目標であり楽しみでもあります。

NPO法人 静岡難病ケア市民ネットワーク

静岡市内の難病ケア専門家や患者当事者など約200名のメンバーを基盤に発足。医師や看護師、保健師、ケアマネージャー、研究者、看護学部学生など多彩な人材が参加し、行政や難病相談支援センターと連携して難病ケアにかかわるさまざまな活動を行っています。特に難病患者の訪問相談や外出支援など、公的なサービスの谷間を埋める、患者の立場に立った活動が注目されています。